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実は、同じ理由で、マユミも入院していた。
彼女もアタシと同じくらいに成長している。
マユミ、アタシ、マヤの三人で、ずっと話していた。
「女の子基礎知識」から、「応用テクニック」まで。
にこにこと、アタシと年が変わらないように見える笑顔を浮かべながらも、エゲツない事まで教えてくれるマヤ。
「女の子はね、綺麗事だけじゃ駄目なのよ!」
・・・ちょっと、目が恐かったりする。
「そういえば、アスカは人間希望なのよね。」
アタシには、二つの道が用意されている。
人間になるか、猫になるか。
人間になるには、猫神リツコの試験に合格しなくちゃならない。逆に、試験に不合格なら自動的に猫になる。
勿論、アタシの希望は人間だ。
「アタシは人間になりたいな。マユミはどうするの?」
アタシよりも長めの髪が、部屋の明かりに照らされて、とても綺麗だ。
ちょっとうつ向き加減に、マユミが答える。
「私も、人間がいいです。」
「なるほど。」
重々しげにうなずいくマヤ。なんとなく滑稽だ。
「じゃあ・・・」
イタズラを思い付いたちっちゃい子供みたいに、瞳をきらきらと輝かせながら、マヤが言葉を続ける。
「人間になったら、やっぱり今のパートナーと一緒に暮らすのかな?」
今、アタシとマユミは、パートナーである人間と一緒に生活している。
これは、猫神リツコが決めた事で、アタシ達が人間になる為の試練の一環らしい。
という事は、人間になった後のアタシ達には、今のパートナーと一緒に暮らす義務は無いワケだ。
つまり、もしも人間になった後も同居したければ、それはお互いの自由意志で・・・
「「・・・」」
アタシとマユミは、顔を真ッ赤に染めてしまう。
お互いの自由意志での同居!!それって、つまり・・・
「そうよ、そういう意味で聞いてるの。貴方達、パートナーの事、キライ?」
キライなハズが無い。だったら、いくら義務とは言え同居なんてしない。
最初、まだ人間になる事の意味がよく解らなかった頃は、同居しなくちゃ人間になれないと言われ、素直にそれに従っていただけだけれど、今は、アイツと一緒にいるのが楽しいし、心地良い。
「私は、その・・・したいです・・・」
蚊が鳴くような声で、マユミはそう答える。
人間になった後の同居生活を想像しているのか、マユミの目はどこか遠い所を見ているようだった。
アタシもそれに倣う。
二人で起きて、二人でご飯を食べて、二人で遊んで、二人で眠る。
今まで読んだ小説や、テレビで観たドラマのシーンなんかが、登場人物をアタシとシンジにすり変わって次々と頭の中に浮かび上がる。
背中の辺りがむず痒くなったり、胸がドキドキしたり。
でも、不快じゃない。
「うん・・・アタシも、そうしたい・・・」
この、胸にある気持ち。恋や愛とは違うのかもしれない、けれど。
「一緒に暮らしたい・・・」
それが、アタシの偽らざる想いだった。
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