Kitty on your lap


第3話

aosen


−1−

焼き魚とお漬け物、白いご飯にお味噌汁という簡単な朝食を作り、ちゃぶ台を出して並べる。

「ごっはん!ごっはん!」

僕が台所に立っている間も、人間の姿になったアスカは騒ぎ続けていた。

それを彼女の目の前に並べた途端、さらに騒がしくなる。

「たべていい?たべていいの!?」

エプロンを外し、僕はアスカに向き合う位置に座った。

ふと、夢で会った猫神様の言葉を思い出す。

『ネコとして生きるのか、それとも人として生きるのか・・・』

(人として生きるなら、『いただきます』は教えておいた方がいいよね。)

「アスカ。食事の前には、『いただきます』って言うんだよ。」

上手い具合に焼けている魚を穴の開くほど見つめているアスカに、人としての礼儀を教えてあげた。

「わかったわ。いただきます!」

よっぽどお腹が空いていたんだろう、アスカは昨日のミルクを飲み干した時と同じ勢いで食べ始めた。

どこで習ったのか、器用に箸を操り、魚を食べ易くほぐす。

「・・・箸使うの上手だね、アスカ。」

「ふふ・・・リツコにおそわったのよ!」

大概の動作は出来るのかもしれない。という事は、僕はアスカに、人としての常識みたいなモノを教えてあげればいいのかな?

「ふぅん・・・偉いね、アスカ。」

「とうぜんよ!だってアタシは、にんげんになるんだもん!」

なるほど。アスカは猫じゃなくて人間になるつもりなんだな。じゃあ、僕は彼女の願いを叶える為に精一杯の努力をしよう。

改めてアスカの事を見てみると、ネコ耳とネコしっぽが付いている以外は普通の、ハーフかクォーターの女の子だ。

この子の置かれた境遇を想うと、ちょっと涙が出てくる。

「アスカ、僕が人間の女の子になれるように、協力してあげるからね。」

「とうぜんよ、ばかシンジ!アタシがにんげんになれなかったら、アンタのせいだからね!!」

小さな女の子とは思えない眼光と台詞に、僕はちょっとたじろいでしまった。

「そ、そうだね」

「まったく。これじゃ、アタシがにんげんになるためのべんきょうをするまえに、アンタのきょういくをしなくちゃだめね。きょうからビシバシいくからね!!」

ほっぺたにご飯粒をくっつけたまま胸を張る少女の台詞に、僕はただ頷く事しか出来なかった。

僕の立場って、いったい?

さっきの決心が、ちょっとだけ揺らぎ始める。

僕は、アスカと上手くやっていけるんだろうか?


−2−

朝ご飯を終え、僕は取り敢えずアスカの洋服を買ってあげる事にした。

当然の事ながら、僕はアスカが着られるような服を持っていない。

「アスカ、今、君の服を買って来ようと思ってるんだけど・・・何かリクエストはある?」

服という単語に反応して、アスカの耳がピン!と上を向く。

「えとね、えとね・・・かわいいやつ!!」

ご飯中に叫んだ台詞からは想像がつかないほどの、可愛らしい答えがかえってきた。

「それでね、きれいで、うごきやすいのがいい!!」

なかなか無茶な注文をしてくれる。

「わかったよ。なるべくそういうのを見つけて来るよ。」

「アタシはどうしてればいいの?」

ちょっと心細そうな声を出すアスカ。

「留守番してて。チャイムが鳴っても出なくてもいいから。」

「まかせなさい!アタシのいえはアタシがまもるから!!」

本当に、アスカは表情がくるくると変わる。

不安そうにしていたのが、今はふんぞりかえって張り切っている。

まるで、猫の瞳みたいだ。

・・・って、彼女は猫でもあるんだっけ。

「じゃ、行ってくるからね。いい子にしているんだよ。」

彼女の、僕を送り出す言葉は『行ってらっしゃい!』では無くて

「こどもあつかいしないでよ、ばかシンジ!!!!」

だった。






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