−1−
伊吹マヤがコンビニの前に駆けつけた時、少女は店の前の道路でしゃがみこんでいた。
「お待たせ。・・・どうしたの、アスカ?」
彼女を立たせ、事情を聞く。
「ひっく・・・あのね」
しゃくり上げながら、アスカは事情を説明し始めた・・・
−2−
アタシが泣いていた理由。
それは、料理の仕方が解らなかったからだ。
いや、それだけじゃない。
シンジが倒れ、看病しなくちゃいけないのに、全然役に立てない。
そう思うと、自分の不甲斐なさに情けなくて涙が出てきたのだ。
そのうち、想像がどんどん悪い方に膨らんで、シンジが死んでしまってアタシが暗い路地に捨てられているシーンを想像した所で、涙が止まらなくなってしまった。
出かける時に持ってきた、携帯電話のメモリにあったマヤの番号を押した・・・というのが、事の顛末だ。
この話を聞いたマヤは、アタシをぎゅっと抱き締めて
「大丈夫よ」
と囁いた後、コンビニでテキパキと買い物をして、シンジが待っている家へと向かった。
−3−
「料理は私がやるから、アスカはシンジ君を看ていて」
マヤにそう言われ、アタシは寝ているシンジの元へ。
そんなに長い間外にいたワケでは無いけど、シンジの顔を見るとなんとなくホッとした。
「ただいま、シンジ」
誰にも聞こえないような小さい声で言う。
彼の、汗に濡れた髪に手を入れると、ちょっとくすぐったかった。
「・・・あ。おかえり、アスカ。」
閉じていたハズのシンジの目がうっすらと開き、アタシに向けられる。
「寝てなきゃダメよ、ほら」
額に乗せていたタオルを冷水で冷やし、絞る。
それを彼の額に返すと、気持ち良さそうに笑った。
「ありがとう・・・」
・・・その笑顔に、アタシの胸は罪悪感で張り裂けそうになった。
アタシ、シンジに『ありがとう』なんて言われる事なんか何もしてない。
うぅん、シンジに迷惑ばっかりかけてる。
こんなアタシでも、パートナーだって言ってくれるかな・・・?
また、涙がこぼれそうだった。
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