−1−
アスカの服を買いに、近所のブティック・・・に行けるほどの予算は
無かったから、大き目のスーパーの子供服売り場へ。
店員の『なんで高校生くらいの男がこんな所に?』という視線は、なんとか跳ね返しながら、可愛くて綺麗で動き易いそうな服を探す。
でも、そんな服はそうそうあるもんじゃない。
取り敢えずは今後の事を考えて、動き易い物を選ぶ事にした。
白いタンクトップに、カットオフジーンズ・・・と言うより、半ズボン。
さらに、薄いピンク色のトレーナーを一枚。
とりあえずは、これで良し。
後は、彼女を連れて来て選ばせよう。
子供服売り場から食品売り場に移動して、今度は昼食の材料探し。
魚は朝食べたから、他の物にしようと、色々と物色する。
パスタが安かったので(なんと、1Kg200円!)非常食として保存しておく事も考えて、2Kgほど買い置きしておく。
牛乳等の飲物も多めに買い込んで、僕はスーパーを後にした。
−2−
家に帰り玄関に入ると、見た事の無い赤いパンプスが目に入る。
(誰のだろう?)
「ただいま、アスカ。」
久しぶりに、『誰かが待っている家』に帰ったような気がする。
こういうのって、ちょっといいな。
「おそいのよ、ばかジンジ!!」
とてとてと足音を立てながら、奥の部屋からアスカが出て来た。
「ねぇ、この靴は誰の?」
赤いパンプスを指さしながら、僕は彼女に尋ねた。
「リツコのよ。シンジにおはなしがあるんだって。」
リツコ・・・たしか、猫神様の名前だ。
「お留守番、ありがとうね。」
僕の事を『お留守番してたの。偉い?偉い?』といった感じで見上げるアスカの頭を、乱暴にならないようになでてやる。
「うにゃあ!」
とても嬉しそうに、彼女が鳴いた。
アスカを連れて居間に入ると、猫神様がお茶をすすっていた。
「こんにちは、猫神様・・・いらっしゃいませ、で良いんですかね?」
夢の中でした挨拶よりも、もっとマヌケな挨拶をすると、猫神様はクスクスと笑った。
「夢の中でも現実でも、貴方ってとっても面白い人なのね。」
「・・・ありがとうございます。」
複雑な気分だ。
「そう怒らないで。今日は貴方に、色々とアドバイスしに来たのよ。」
隣では、アスカが一緒に僕を笑っている。
「まず、この子なんだけど・・・小学校五年生くらいに見えるでしょ?
その年頃の女の子が出来る事は、一通り出来るわ。」
うんうん、箸も使ってたもんな。
「この子の希望は、人間になる事みたいだから、貴方は『人としての一般常識』みたいな物をこの子に教えてあげて欲しいの。」
やっぱりね。
「後は・・・まぁ、普通に生活してちょうだい。『最後の日』に、こちらで審判を下すから。」
その言い方に、ちょっと無責任なモノを感じだけれど、さらりと流す。
「で、何か困った事があったら、ココに電話してね。」
猫神様はどこから出したのか、名刺を僕に渡した。
名刺には、赤木リツコという名前といっしょに、携帯電話の電話番号が。
神様でも携帯を使うんだなろ思うと、不意に吹き出しそうになる。
「心が読めると言ったでしょう?あんまり失礼な事を考えていると、バチを当てちゃうわよ。」
微笑みながらそういう猫神様に、かなりビビる僕。
横ではアスカが
「へんなかお〜!」
と笑っていた。
本当に僕は、上手くやっていけるんだろうか?
本気で不安になった・・・
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