kitty on your lap


第六話

aosen




−1−

「シンジ、あれなぁに?」

「シンジ、これなぁに?」

「シンジ、あのひとへんなかお!!」

変に哲学的な会話を終えてから、アスカは元気になった。

『パートナー』という言葉が気に入ったのか、ときどき僕の方を見て

「パートナ、パートナー!」

と笑いかけてくる。

それ以外は、目につく物に関する質問ばかりだ。

空に浮かんでいる飛行船を見て驚いたり、商店街の品物をいちいち欲しがってみたり。

本当に、無邪気な子供だ。

でも。

一つ、不思議に思う事がある。

たしかにアスカは小学校五年生くらいに見える。

けれども、その年にしては物事を知らなさすぎる。

「アスカ。人間の世界の事、どれくらい知ってるの?」

「あんまりしらないの。でも、うんどうとかはできるんだよ!」

基本的な常識はあるみたいだけど、どうやら教育しなくちゃいけない事はたくさんあるみたいだ。

「そっか。じゃあ、色々な事を教えてあげるよ。」

「うん、アタシもしんじにいっぱいおしえてあげるね!!」

「よろしくね、アスカ。」

「うん!!」 にぱっ!と笑うアスカ。その笑顔を見ていると、思わず抱き締めたくなってしまう。

そんな会話をしているうちに、公園へと到着した。


−2−

日曜日で、しかもこんなに天気が良いのに、公園にはあまり人影が無い。

アスカはそれを気にする事無く、ジャングルジムへと走っていった。

彼女を見守る事が出来るベンチに腰を下ろすと、僕はため息をつく。

「ふぅ・・・」

『アスカと生活をする』には、避ける事が出来ない問題が幾つかある。

それを考えると、現実は厳しい事が思い知らされる。

まず、生活費の問題。

僕もアスカも、霞を食べて生きていくワケにはいかない。

これは父さんからの仕送りや僕のバイト代でどうにかなるだろうけど、急にお金が必要になる事だってある。節約しておいた方がいいだろう。

次に、アスカがネコ少女だという事が回りにバレないようにする事。

これには、細心の注意が必要だ。

彼女がテレビで見せ物にされたり、怪しげな研究所に連れて行かれてしまう所を想像するだけで、イヤな気分になる。

最後に、アスカが病気にかかった場合。

犬猫病院で診察してもらえるのか、それとも人間の病院が良いのか。

さらには、人間やペット用の薬が、そのどちらでも無い彼女に効くのか。

この問題は、後でリツコさんに聞いてみよう。

「ねぇねぇシンジ!いっしょにのろうよ!!」

ベンチからそんなに離れていない場所にあるシーソーから、アスカが僕を呼んでいる。

「ひとりじゃつまんないよ、あそぼ!!」

両手をぶんぶん振り回しながら、彼女は遊び相手に僕を指名した。

シーソーに乗る。

当然僕は彼女よりも体重があるので、シーソーの反対側に乗っているアスカがゆっくりと持ち上がる。

「きゃははは!」

僕は地面に足をついて、今度は自力で自分を持ち上げる。

僕の方が持ち上げると、当然、アスカの座っている側は下に。

「きゃははは!」

公園にある遊具で喜んでもらえるなら、安いモンだ。

僕とアスカは、腹ぺこになるまでこの公園で遊んだ。





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