−1−
太陽が僕らの頭にさしかかった。
そろそろ、お昼だ。
「もっとあそぼうよぉ!」
とアスカは遊び足りないみたいだったけど、僕は久しぶりに体を動かしたおかげで疲れてしまった。
「今度また来ようね。家に帰って、お昼ご飯を食べなくちゃ。」
食欲と遊びたい気持ちをしばらく天秤にかけていたアスカは、食欲が勝ったらしく、僕と一緒に大人しく帰る事にしたみたいだ。
「またいつか、アタシをつれてくるのよ!!」
口調は強かったけど、とても寂しそうな瞳。
この、アンバランスで、自分の気持ちを素直に伝えられない所はちょっと可愛いと思う。
でも、言葉使いは直してあげないとなぁ・・・
そんな事を考えながら、遠回りして家へ。
またスーパーに寄って、アスカに自分の服を選んでもらう為だ。
子供服売り場に連れて行き、予算の額をアスカに教えて、自由に選んでもらう。
こういう買い物を覚えておくのも、きっと人間になるのに役立つだろう。
・・・役立つかな?役立つといいなぁ・・・
アスカが服を選び終え、試着する為に試着ボックスに入っていく。
すると、おばさん店員が
「サイズはいかがですか?」
と言いながら、アスカが使っている試着ボックスへと入った。
試着中→帽子と服を身に付けてない→耳としっぽがバレる
最悪の展開が起こるかもしれない。
おばさん店員の悲鳴が辺りに響くのを覚悟しながら、その時を待った。
・・・十秒。
・・・三十秒。
・・・一分。
おかしい、何も起こらない。いや、何も起こらない方が良いんだけど。
「あら可愛いわね。良く似合ってるわ、お嬢ちゃん。」
その時、試着ボックスのカーテンが開いてアスカと店員さんが出て来た。
「ありがとう、おばさん!これ、ください。」
・・・狐につままれた気分だ。
アスカが選んだ服の会計をして、スーパーを出ると、僕はアスカにそっと聞いてみた。
「ねぇ、耳としっぽ、バレなかった?」
「うん。おばさんがはいってきたときはびっくりしたけど、すぐかくしたから。」
あんなに目立つものを、どうやって隠すんだ?
「どうやって隠したの?」
「そんなながいじかんはむりだけど、みみとしっぽはね、けせるの。」
自分でも何で消せるのか解らないんだろう、ちょっとしどろもどろになりながら、彼女はそう答えた。
よし。これでアスカがネコ少女だって事がバレ難くなったぞ。
「なにニコニコしてるの、シンジ?」
「いや、何でも無いよ。」
僕は、明るい気分で帰り道を歩いた。
−2−
お昼ご飯が終わると、アスカはとても眠そうだ。
さっきから
「うぅ〜」
とか
「みゃあ〜」
とか言いながら、しきりに目を擦っている。
そんな様子を見た僕は、彼女の為に布団を敷いてやる。
「ほら、パジャマに着替えておいで。」
布団をじぃ〜!と見ているアスカ。
きっと、今眠ったらどんなに気持ちが良いか考えているんだろう。
僕もTシャツとジョギングパンツに着替えて、同じ布団で寝る事にした。
布団に潜り込み、空いている所をポンポンと叩いて彼女を誘う。
「うん、きがえてくる。」
さっき買ってあげたパジャマを持って、アスカはバスルームへと消えた。
きっと、脱衣所で着替えてくるんだろう。
・・・僕に着替える所を見られるのが恥ずかしいのかな?
そりゃ恥ずかしいよ、と一人ボケツッコミをして僕は笑った。
小学校五年生くらいなら、そういう羞恥心があって当然だ。
その時、アスカが戻ってきた。
水色のパジャマが、良く似合っている。
布団をめくってあげると、そこに入ってきた。
「にゃあ・・・あったかい・・・」
とろんとした、眠そうな瞳のアスカ。
「おやすみ、アスカ。」
「おやすみ、シンジ。」
こうして、僕らの穏やかな昼は過ぎていった・・・
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