北風
B Prat
その後風呂に入り、宿題をかたずけ、明日の学校の準備をすっかり終えると時計の針は十時を指していた。
ちょっと早いけど、もう寝る事にした。
暖房のスイッチを切り、目覚ましをセットして布団に潜り込む。
眠れない。
『寝よう』と努力はするものの、アスカの事を考えてしまう。
「恋、かぁ・・・」
そっと、つぶやいてみた。
・・・僕がアスカに恋をしている、という事は理解した。
しかし、問題は依然として残っている。
アスカが綺麗になった事について、だ。
母さんやケンスケは、『恋をしているからだ』と言った。
・・・もしそれが本当なら、相手は誰だろう?
昼間も同じ事を考えていた。
あの時は心にモヤモヤがあったから考えがまとまらなかったけど、今なら上手くいきそうな気がした。
まず、アスカに近いポジションにいる男性を思い浮かべた。
まず、アスカが所属する美術部の顧問、加持先生。
次に、同じく美術部の三年生、渚カヲル先輩。
最後に、アスカの幼馴染みの、僕。
とりあえず、対象をこの三人に絞って考えみる。
加持先生。
社交的な性格で、生徒達からの受けも良く、若くて格好良い。『大人の男性』という感じで、秘かに憧れている女子が多い、という話をケンスケから聞いた事がある。
アスカが『大人の男って格好良いわよねぇ』と言っていたのを思いす。
つまり、彼女が加持先生に恋をしている可能性は、高い。
渚先輩。
痩せ型で身長が高く、中性的な美形。アルビノで肌は抜ける様に白く、その頭髪は銀色に輝いている。性格は明るく、優しい。面倒見が良く、頼り甲斐のある先輩だ。
いつだったか、アスカの口から『渚先輩ってば、あそこまで格好良いのは反則よ』という台詞を聞いた事がある。
やはり、彼女が渚先輩に恋をしている可能性は、高い。
碇シンジ、つまり僕。
前述の二人のようにルックスが良いという事は無く、取り柄といえばちょっとチェロガ弾ける事と、そこら辺の男子よりも料理が上手い事。
性格は・・・よくアスカに『暗い』、『内気』、『内罰的』などと言われている。
特に他の生徒から人気があるという事も無く、友達もそんなに多くは無い。
・・・そこまで考えると、暗い気分になった。
アスカが、僕の事を好きになってくれる理由がない。
ちょっと、涙が出た。鼻の奥が、ツンとする。
「ははっ」
口から洩れる、自嘲の笑い。
目元を拭い、寝返りを打つ。
蛍光塗料でぼんやりと光る目覚ましを見ると、もうかなり遅い時間だった。
そろそろ寝ないと、明日寝坊しそうだな。
そう思って、寝る事にした。
目を閉じて眠ることに集中していると、ひゅうひゅうという風の音が耳につく。
何気なく窓に目を向けると、カーテンの隙間から外の景色がちょっとだけ見えた。
・・・深夜だというのに、ほのかに明るいような気がした。
ひょっとして・・・
僕は布団から起き上がると、カーテンをあけた。
白い。
外は、雪だった。
ひらひらと舞い落ちる雪が、街灯の明かりを反射して、明るいように見えていた。
すでにうっすらと積もりはじめていて、僕の住むマンションの前に放置されている自転車が凍えている。
「そういえば、アスカは雪が好きだったよね」
独り言。あの娘に、確認するように。
アスカが僕を起こしに来る前に、僕がアスカの家までいって彼女を起こそう。そう決心した。
雪を愛する彼女に。
僕の愛する彼女に。
一番に教えてあげよう。そう思った。
カーテンを閉めて布団に入り、目覚ましをいつもより三十分早くセットし直す。
ふと、閃いた。
加持先生や渚先輩に無くて、僕にだけあるもの。
それは、アスカへの想い。
「世界中の誰よりも、君の事を愛しているよ、アスカ。」
今日最後の独り言。
その台詞にちょっとだけ照れながら、僕は眠りについた。
はいっ、イケシメンです。
「エッヴァー」の第一話も終わってないのに、短編書いちゃいました。
LAS小説を書こうと思ったのに、何故かアスカが出てきません。・・・おっかしいなぁ〜。
でも、シンジはアスカにべたボレですね。くっくっく
お気づきになった方もいらっしゃるでしょうが、このお話は槙原敬之さんの曲『北風』をもとに作りました。
この人の作る曲はLASっぽいものが多く、かなりお勧めです。
特に『どうしようもない僕に天使が降りてきた』は、色々な方がSSのネタにするほどです。
実はこのお話、次回に続いちゃったりします。
では、次回の更新をお楽しみに。
イケシメンでしたぁ。
PS.ユイの台詞、『心のバランス云々』は、カレカノから引用しました。
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