超能力ロボハチ五郎外伝その6(ピヴィ)
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霧雲霞
女が一人座っている。 煙草盆を前に、ふーっと煙をくゆらせている。 煙管をくわえるさまは粋だが、その姿はどう見ても女子高生。 制服をぴしっと着こなし、まったく崩した様子がない。 姿勢も良く、ただ座っているだけの姿にも威厳すら感じる。 「親分、ハチの野郎が参りました」 障子越しに外廊下から声がかかる。 「おう、通しな」 親分と呼ばれた女はコーンと煙管を灰吹きにたたきつけた。 「ハチでございます。ただいま戻りやしたロボ」 丸いからだの男が障子を開けて入ってくる。 緊張のせいか、ハチは少し離れたところへ控えた。 この女親分は男をそれだけおそれさせるのだ。 霧雲一味。 女親分が仕切る一味はそう呼ばれていた。 江戸、上方でおそれられる大盗賊である。 急ぎ働きはせず、何年も使って計画を立て盗みをはたらき、 いっさいの証拠を残さずに去っていく。 いまだに一味の一人も捕まったことがない。 手下は全国に100人を超え、その時のために準備を進めている。 その一味をまとめるのがこの女、 普段は胸が小さいことを気にしている女子高生、 その正体は裏の世界に名をとどろかせる大盗賊、 霧雲霞である。 因果小僧ハチ五郎と呼ばれるこの男もその仲間である。 「霞親分、手はずは万事整いやしたロボ」 「そうか、では最後の合わせをしよう。ハチ、みんなを呼んでこい」 しばらくすると、ハチ五郎のほかに 木鼠のポチ太郎、州走りのハム四郎、七化けのおさみと呼ばれる 霞の右腕とも呼ばれる面々が現れる。 「お盗めは明日の夜だ…」 翌、夜中。 一味は皆、目立たない夜の色をした装束に身を包み、 目的の柳生屋の前に待機していた。 もうじき引き込みであるおさみが中から戸を開けてくれる手はずになっている。 耳が痛くなるような静寂。空気が張りつめていくのを感じる。 隣にいる者の心臓の音さえ聞こえてきそうである。 一同の緊張が高まっていく どっかーーーん!! 突如爆音が響き渡る。 それと同時に、柳生屋の戸が吹き飛び、正面の家の壁にめり込む。 戸口からはもくもくと煙が上がっている。 そこから、のそりと人影が現れた。 血走った目に、呼吸が荒く肩が上下している。 かなり苛ついているようで、さっきでぴりぴりしている。 手にはぎらつく刃を握っている。 よく見るとそれは銘刀「練馬高野台ぽん太」であった。 しばらく呆然とした後、ハッと霞が意識を取り戻した。 霞は柳生屋から現れた人物の方へ向かうと 「こ、こら、おさみ。 ボクの計画が台無しじゃないか!」と、叫んだ。 その声に、おさみも正気を取り戻す。 「あ、霞。ごめんごめん、どうしても戸が開かなくってつい吹っ飛ばしちゃった。テヘッ」 「いい歳こいて『テヘッ』っじゃなーい!」 「いい歳こいてとはなによ〜、ガキが調子づいてんじゃないわよ!」 「なにを〜!」 「なによ〜!」 「お頭、おさみ、そんなことしている場合じゃないロボ!!」 ハチ五郎が止めに入る。 そして殴られる。 そして踏みつけられる。 「う、うぅ、ひどいロボ…」 「お頭、火盗改めが来るぜっ!」 今度はハム四郎が止めに入る。 「なんだって、仕方ない一気に押し込むよっ!」 霞は一味を引き連れ柳生屋になだれ込む。 「金目の物は何でも良いから全部持って行きな、邪魔するやつは容赦しなくて良いよ!!」 ダダダダ、ドドドド!!!! 屋敷中を駆け回る霧雲一味。 「か、金目の物がありませんロボ!」 「なんだって、ポチ太郎の話じゃ2000両はくだらないって言ってたじゃないか! ポチ太郎、どういうことだい。ボクをだましたのかい!」 「そ、そんなことはっ…。 ここは確かに江戸で5本指にはいるって言う柳生七兵衛の屋敷じゃぁ…」 ポチ太郎はあわてて確認する。 「なにいってんだい、ここはバッファロー柳生の店だよ!」 引き込みに入っていたおさみが言う。 「なんだってっ! そりゃ金なんかあるわけがないじゃないかっ」 「こりゃいけねぇ、とんずらしようぜっ!」 「はやくしないと、火盗改めの鬼極が来るロボ」 ヒヒーン 表で馬のいななきが聞こえた。 「もう来たか」 霞はゆっくりと戸をくぐって表へ出て行った。 「盗賊の霧雲霞だな。おとなしくお縄をちょうだいせいでゴクアク。 この、鬼の極悪こと長谷川ハチ五郎セブンから逃げられると思うなでゴクアク!」 馬の上から、紙粘土で出来た小汚い人形状の物がビシッと鞭を突きつけてくる。 「ふっ、鬼極ごときに、このボク、霧雲を捕まえられるかな! やろうども、やっちまえ!!」 ちゃんちゃんばらばら、ちゃんちゃんばらばら こうして、霧雲一味のお盗めはおわっていく。 いつもこうしてぐだぐだに。 証拠なんて残さなくても、いつでもへまばかり。 霧雲一味は捕まらないが、それはいつも実力行使。 証拠なんて残さない、なくてもすぐにばれるから。 霧雲一味は捕まらないが、それは鬼極無能だから。 何年かけて計画たてても、いつもへましておじゃんだよ。 |