−桜木荘−
モラトリアム伝説編 第6話(ピヴィ)
| 佐藤くん、暇すぎて公園を散歩中。 「3月3日は佐藤くんの日」 「ヘロー、サトークン!」 ベンチに座って、ぼけっと公園の池を眺めていると、 とつぜん変なカタカナ語で声を掛けられます。 驚いて振り向くと、そこには一〇四号室の小林さん(通称ジェーン)がいました。 その後ろには、 奥さんや子供達がやや下がり気味で、 やや離れ気味で、じゃっかん他人の振りをしつつ、ぺこりと頭を下げました。 「小林さん、こんにちは。みなさんでお出かけですか?」 「オーノー、サトークン。小林サンナンテ呼バナイデ、ぷりーずこーるみージェーン」 という、頭のおかしい小林篤45歳は放って置かれて、奥さんが 「はい、娘のために、ひな人形を買いに行くんですよ」 と、状況説明をしてくれました。 こば…ジェーンには子供が四人います。 3人は三つ子で小学三年生。末の娘が今年で3歳です。 女の子は、奥さんに抱かれて顔を伏せています。 「ひな人形なんてつまんねーよーなー」 三つ子の一人が言います。 「そうだよ、そんな人形じゃなくてお面ライター買ってくれよ」 「ゴーストライターとコピーライターも買ってくれよ〜」 残りの二人も続けます。 「買ってくれよ〜!」 「買ってくれよ〜!」 「買ってくれよ〜!」 三人の波状攻撃が見事に決まっていて、佐藤くんは気圧され気味になりました。 「3月3日は女の子の日なの、うるさいこと言うと置いていくよ!」 奥さんがしかりつけますが、三つ子はぶーぶーと言うだけでちっともおとなしくなりません。 「3月3日っていったら、三つ子の日にきまってんじゃんかよ〜」 「三つ子の日〜」 「三子日〜」 そしてなぜか、三つ子は佐藤くんがしばらく与ることになりました。 「い、いや、かんべんしてくれ…」 外でうろちょろされるのも困ると思い、アパートへ帰ってきます。 アパートの前の道にさしかかると、電信柱ちゃんがこっちを見ているのに気が付きました。 「あれ、電信柱ちゃん…」 そうだ、と佐藤くんは思います。 「ねぇ、いつもあの電信柱のところにいる子のこと知ってる?」 と、電信柱ちゃんの方を差しながら三つ子に尋ねます。 「え? なに言ってんの、そんなとこに誰もいないじゃん」×3 「ほらあそこ…」 と、佐藤くんが再び電信柱の方へ目を向けると、なるほど、誰もいません。 「あれ、隠れちゃったのかな」 「えー?」×3 と、三つ子は走って電信柱の元へ近寄りますが、何も見つからなかったようです。 「誰もいないよ〜、にいちゃんも父ちゃんと一緒でちょっとおかしいんじゃなーい?」×3 バカにされてしまいました。 「お面ライターごっこやろうぜー」 「俺、お面ライター」 「俺、ルポライター」 「俺、ターボライター」 「ターボライターはお面ライターシリーズじゃないだろー (ターボライターは白円ライターシリーズである)」 「そうだった…」 佐藤くんの部屋に来た三つ子はやりたい放題しほうだい。 どったんばったんしていると、 「佐藤くん、ちょっと静かにしてくれないか、交信が聞き取りにくくって… って、うお、なんだ、佐藤くんの隠し子か! 誘拐か!?」 下の階のシマさんでした。 「ジェーンさんの所の三つ子をあずかってるんですよ」 佐藤くんは簡潔に説明します。 「とう、ライター鉛筆削りアターック!」 突然、三つ子の一人がシマさんに突撃します。そして激突しました。 「ぎゃぁぁぁぁ、やられたぁ!!」 シマさん迫真の演技で即座に状況に対応します。 そして、倒れながらポケットからメモ帳を取り出すと、さらさらと何かを書き、 それを佐藤くんの方へ『これこれ』というように、指し示します。 「ふ、ふ、ふ、これでいい気になるなよ、お面ライター! 悪の組織『プニプニほっぺ団』には怪人を巨大化させる『校正ビーム』があるのだ! 宇宙怪人シマゴンよ、巨大化して蘇るのだ〜! びびびびび〜」 と、佐藤くんは差し出されたメモに書いてあったセリフを棒読みしました。 一応、光線を出す振りはしてみます。 すると、シマさんがむくむくと立ち上がり、「がおー!」と吠えました。 「でたな宇宙怪獣シマゴン! お面ライター合体だ!!」 気が付くと日も暮れてきて、窓から西日が差し込んできます。 「いや、たのしかった」 「シマさん、元気ですねぇ」 「ちょうど、次回のお面ライターのシナリオを考えていた所なんだよ。 けっこう良いネタが出来たような気がする。 俺はこれから下でシナリオ書くから、あとよろしく!」 「あ。じゃぁ、静かにさせますね」 「いや、シナリオ書いてる時は騒がしい方がイメージも出来るし できれば、佐藤くんもう少し相手してあげてくれないかな?」 「え…オレですか……?」 外も真っ暗になった頃、ようやくジェーンさんたちが帰ってきました。 すでに遊び疲れた4人は佐藤くんの部屋ですやすやと眠っています。 「いやぁ、なんだか兄弟みたいだ。いや、ブラザーデース」 「佐藤さん寝てるみたいだから、おみやげだけおいて子供達を連れて帰りましょう」 翌朝。 「ん、んー」 佐藤くんが目を覚まします。 「えーと、なんで布団も掛けずに寝てるんだっけ?」 寝ぼけまなこにへの字口をゴシゴシとこすって、それから大きなあくびを一つします。 どたどたどた 「佐藤くーん、おっはよー(友情出演:井野やん)」 朝からハイテンションです。 「ああ、井野やんどうした?」 「なにやら、佐藤くんの部屋から甘いにおいがしたから来てしまったのさ〜」 「甘いにおい?」 二人がきょろきょろと辺りを見回すと、台所の隅に大きな袋が置かれていました。 「なんだこれ?」 「なにこれ?」 井野やんが素早い身のこなしで、ささっと袋に近づき、中身を確認します。 「おおお、こ、これは」 「なんだ、なんだ」 佐藤くんも近づきます。 がばっと、井野やんが袋を開いて見せたそこには、 大量の雛あられが入っていました。 「こ、これだけあれば、1ヶ月は食べていけそうだね…」 「ひ、雛あられでか…?」 おしまい。 |