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第14話投稿者:ピヴィ投稿日:2011/02/23(Wed)18:17No.90
しかしなにも思いつかないの巻き
「やぁ、みんな! オレ、主人公だぜ!!」
人工の砂浜に現れた男はそう言って自分の鼻に向かって親指を突き立てた。
夕日が彼を真っ赤に照らしだす。
しかし、砂浜には誰一人として姿は見えなかった。
小さな虫が一匹、彼の足下を這っていた。
「いやぁ、特訓のあとのラーメンは最高だなっ!」
青海鮫は鼻水をたらしながらラーメンをすすっている。
サンバカトリオ改めサンバカンの3人は砂浜での民間防衛隊の特訓を終え、
行きつけのラーメン屋に来ていた。
寿司屋じゃないのかと後藤には怒られそうであるが、
学生に寿司をバカバカと食うような資金はない。
ラーメンですらたまにしか食べられない。
いや、そんな物が食べられるだけ贅沢だ!
そんなことを話していると、
バーン!
ラーメン屋のガラス戸が激しく震え大きな音がした。
サンバカンがそちらを振り向くと、若い男がドアに体当たりをしていた。
ガラスの存在がわからないんだろうかと思うような
やや間抜けな当たり方だ。
「なんだあいつ?」と、鮫ちゃん。
「普通じゃないな……」若い男の表情を察した鷲雄がつぶやく。
「ああ、普通ではないな」鮫ちゃんの合いの手。
「いや、そう言う意味ではなく、なにかおかしい」
鷲雄は鮫ちゃんに意味が通じていないだろうことを悟る。
「ああ、おかしすぎるだろ」やっぱり通じてない鮫ちゃん。
「……」
バリーーン!
そんな漫才をしている間に、若い男はラーメン屋のドアを破り、
血だらけになって店内へ侵入してきた。
「うぁうぁぁぁぁ」
声にならない音を発しながら、男は店内に乱入する。
数人いた客はあわてて逃げ出し、店員が制止しようと駆け寄るが
若い男が軽く手を振ると店員ははじき飛ばされてしまった。
ついでにそれにぶつかって年老いた店長も退場する。
さらに、客達はこれに乗じてお金を払わずに店から逃げ出した。
店内には都合良くサンバカンと男だけになる。
「人の力ではないな。なにかに操られているようだ」
鷲雄が男の前に立ちふさがる。
「お、おい」あまりの光景に立ちすくむ鮫ちゃん。
そして、厨房でラーメンのお代わりを作る豹介。
向かい合った鷲雄は
若い男の手に血に染まりつつある紙が握られているのに気が付く。
そこには「民間防衛隊に任命する」と書かれているのが見て取れた。
「どうやらお仲間のようだな」
「なんだって?」
「とりあえず、これは民間防衛隊としての初仕事って事になるんじゃないか?」
「お、おう。そうか、それじゃ手柄を立てないとな」
鮫ちゃんも意気を取り戻し鷲雄の横へ並ぶと、男と対峙した。
体中から血を垂れ流した男にわざわざ立ち向かう必要も無いかもしれないが、
ただならぬ雰囲気に息を呑んだ。
「お、おれは主人公なんだぁ〜!!!!」
若い男が叫び声を上げて2人へ駆け寄ってきた。
あまり強力では無さそうな一撃が2人へ振り下ろされるが
その攻撃で巻き起こる風圧だけで鮫ちゃんは吹き飛び、
鷲雄は辛うじて避けるも、その威力に冷や汗をたらした。
「これは…倒せるんだろうか」
つづく。
解説が必要でしょうか、察してくれますよね。
ええ、お願いします。
第15話1/4投稿者:ベガ投稿日:2011/04/10(Sun)00:51No.92
衝撃は波動となってプリピャチを襲った。
思わずブリッジのクルー全員が首をすくめる。
激しい振動が『船』を揺さぶり、ブリッジ壁面に並ぶディスプレイのひとつが、
火花を散らして吹き飛んだ。
「左舷エンジンに被弾! 身動きできません!」
操舵手の悲鳴がこだます。
「敵、さらに前進! 近づいて来ます!」
デッキ前方に据え付けられたメインスクリーンには、
巨大な艦の姿がはっきりと映し出されていた。
黒い光沢を放つノコギリ状の双頭が、さながらクワガタムシのように生え伸びている。
「敵艦、砲撃準備!」
「全パワー前方シールドに集中!」
ボーマン船長の怒声が響く。
「掴まれ!」
その瞬間、メインスクリーンに映るクワガタ船の双頭から、閃光が放たれた。
漆黒の宇宙に浮かぶ戦艦プリピャチ。
その機影は岩から削り出したかのように武骨なものだった。
その前面に控えたクワガタ船から黄色い閃光が迫る。
瞬間、プリピャチの船体に張られた透明の膜が火花を散らし、閃光を押し返す。
だがそれも一瞬のことだった。
閃光はプリピャチのシールドを容易く突き破り、もぎ取るかのように右舷側面を貫いた。
その衝撃がプリピャチの船体をひっくり返し、吹き飛ばし、回転させる。
右舷にぼっかりと開いた巨大な穴からは、船内構造が丸見えになっていた。
と、クワガタ船の双頭から、放射状に緑色のビームが照射された。
ビームがプリピャチを捕らえる。
途端、プリピャチはその動きをぴたりと止めた。
ぐいぐいとクワガタ船に引き寄せられていく。
「報告!」
無理やりに身を起こしたボーマンは、船長席に手を付き、叫んだ。
デッキ内には煙が充満し、あちこちから呻き声が聞こえる。
「被害報告!」
「…う、右舷エンジン消失!」
ディスプレイに突っ伏したクルーを押しのけ、コーネフは叫んだ。
「1番、2番、3番……全居住区に被害! せ、生命維持装置停止!」
「ケスラー魚雷はどうなっている!」
船長の声に、コーネフが震える指先で血まみれのディスプレイを操作する。
戦術システムにアクセスすると、二本の魚雷管パネルが点滅していた。
「ぎょ、魚雷管装填済み!」
「…よし、いいぞ」
不気味なほど静かに響いたその言葉に、コーネフは船長席を振り返った。
深々と椅子に座ったボーマンは、微笑みさえ浮かべ、
鬼気迫る表情でメインスクリーンを睨み付けている。
「…ギリギリまで近づいたところで、お見舞いしてやる…」
その言葉にコーネフは思わず金切り声をあげた。
「せ、船長!」
「まだ撃つな! 命令を待て!」
「し、しかし! 既に船体構造を維持するのもままならない状態です!」
「それがどうした!」
思わずコーネフが口ごもる。
「だ、脱出すべきです!」
「…脱出、だと?」
その時、初めてボーマンはコーネフを見た。充血した目がコーネフをじろりと見る。
「…貴様、『モノリス』の意志を、『赤き森』の目的を忘れたか?」
「な、なにを…」
「断じて地球を虫どもの巣になどさせん!」
血走る目を剥き、ボーマンは叫んだ。
「なんとしてもここで奴らを食い止めるのだ!」
その時、青白いスポットライトがデッキ内に投射された。
その光はプリピャチのシールドを無視し、装甲を素通りし、隔壁を透過し、
船外から照射されていた。
デッキ内を這い回り、死者・負傷者の区別なくその身体を照らし出す。
「なんだこれは…?」
自らの身体を這う光を見下ろし、ボーマンが言った。
コーネフは即座にディスプレイに向き直り、センサーシステムにアクセスする。
だがそこには、「オフライン」の文字しかなかった。
「わ、わかりません! 機能が遮断されています!」
「ええい構わん! ケスラー魚雷発射用意!」
慌ててコーネフは戦術システムを呼び戻す。
既に脱出の機会は逸している。もはや船長の判断に賭けるしかなかった。
コーネフは兵器アレイを呼び出し、魚雷の発射スイッチに指を掛けた。
メインスクリーンには、間近に迫るクワガタ船の姿が映し出されている。
その船影を目に焼き付けながら、コーネフは命令を待った。
だがいくら待っても船長の命令は下されなかった。
まさか聞き漏らしたかと不安になったコーネフが、船長を振り返る。
そこには、席から立ち上がり、今まさに腕を振り下ろさんとする船長の姿があった。
縦に大きく開かれた口からは、今にも発射命令が発せられるかに見える。
だが。
その顎が、ボロり、と崩れた。
崩れ、もぎ取れた顎が、黒い砂となって床に落ちる。
落ちた途端、黒い砂は床に広がり、ざっと走り出した。
それは大量の黒い甲虫だった。
はっとしたコーネフが船長を振り仰ぐ。
その目の前で、ボーマンの身体が、まるで塩柱が倒れるかのように、ぐらりと傾く。
床に叩き付けられ、砕け散り、黒い染みが広がるかのように、
虫の群れとなって一斉に走り出す。
恐怖に凍り付いたコーネフは、ぎこちなく首を巡らせた。
先ほどスポットライトに照らされたクルーの身体が、次々と崩れ、
虫の大群となって床に広がっていく。
その光景が、はっきりと目に入る。
と、視界の隅に、青白い光が映り込んだ。
スポットライトはデッキ内を這い回り、
ゆっくりと、だが確実に、コーネフに忍び寄りつつあった。
ごくり、と唾を飲み込んだコーネフは、指示を仰ごうとするかのように、
崩れ去ったボーマン船長の亡骸を見た。
砕けた顔面が、ボロボロと崩れながら、虫へと変化していく。
だがわずかに残ったその眼球は、しっかりと前方を見据えていた。
その視線をコーネフが追う。
メインスクリーンを振り返った。
禍々しいまでに黒く光沢を放つクワガタ船を見つめる。
「…行かせはしない…」
呟いた。
「…おまえたちを…このまま地球になど行かせはしない!」
そう叫び、コーネフは拳を振り上げた。
音を立て、魚雷の発射スイッチに叩き込む。
この距離で魚雷が爆発すれば、確実にプリピャチもろとも吹き飛ぶ。
いかに強力な『船』であっても、無傷ではいられない。
コーネフはそう確信していた。
吸い込まれるようにクワガタ船に向かっていく二基の魚雷がメインスクリーンに映る。
自らの命を、死を、母たる星に捧げる。その陶酔感に、コーネフは酔った。
だが。
「…な…」
コーネフの見つめる目の前で、魚雷はクワガタ船の遥か手前で、
ぽふと煙を出し、呆気もなく、粉微塵と消えた。強固なシールドに、あっさりと阻まれた。
それは、あまりにも、あまりにも絶望的な光景だった。
その威力、そして後々にまで被害を及ぼすその影響から、
国際法において厳格に使用を禁止されている魚雷である。
人類史上、およそ考え得る限りの兵器の中で、最強最悪の部類に属する魚雷。
それを二基。
二基使ってさえ、かすり傷どころか、何ら影響を与えられなかった。
ただ消し炭と化して消え去るのみだった。
その光景は、さながら地球の未来を暗示しているかのようにさえ映った。
コーネフは身動きもできず、メインスクリーンを見つめたまま、固まっていた。
その顔を、青白く光るスポットライトが、照らし出す。
「うわああっぁぁぁぁあああっぁぁぁっぁぁぁあああぁぁあ!」
第15話2/4ベガ-2011/04/10(Sun)00:53No.93
人は笑う。
楽しい時、嬉しい時、快感を感じた時。
人は笑う。
別段嬉しくなくとも人は笑う。
こびへつらう時、無理に緊張を和らげようとする時、
見え透いた安心感を与えようとする時。
人は笑う。
人は泣く。
悲しい時、あまりに辛い時、強い苦痛を感じた時。
人は泣く。
別段悲しくなくとも人は泣く。
過剰に感情移入した時、自分を哀れみたい時、
赤子のように誰かに頼りたい時。
人は泣く。
人は怒る。
不快感を覚えた時、身内が酷い侮辱を受けた時、
あからさまな差別を受けた時。
人は怒る。
別段侮辱されなくとも人は怒る。
恫喝する時、自らの詭弁を隠そうとする時、
自尊心を保とうとする時。
人は怒る。
人類とは、なんと感情豊かな生物なのだろう。
そして、なんと原始的な生物なのだろう。
彼らは時折り自分たちが何のために、何をしているのか、
それさえも忘れ、騒ぎ、暴れ、笑い、泣く。
互いに対立し、けなし合い、殺し合う。
かと思えば、慰め合い、助け合い、愛し合う。
例外なく悩みを抱え、不安と焦燥に駆られ、
何ら問題が解決していないにも関わらず、一時の安心にすがりつこうとさえする。
その感情の変移は激しく、まさに混沌の極みだ。赤ん坊となんら大差がない。
故に彼らが赤ん坊に対し、抗うこともできず、
全幅の慈愛を寄せてしまうのも無理はない。
同時に、昼夜を問わず、全身全霊をもって泣き叫ぶ赤ん坊に耐え切れず、
怒りを爆発させてしまうのも、理解できる。
なぜなら、赤ん坊とは彼ら自身に他ならないからだ。
地球人類とは、なんと未熟で幼い存在なのだろう。
宇宙デビューを果たしばかりの彼らは、
いまだその広大さも、過酷さも、残酷さも知らない。
「スミレ、なにしてんだ?」
不意に聴こえた声に、スミレは顔を上げた。
ラウンジの丸テーブルのひとつに腰掛けたスミレの目の前に、
ラムズフェルドはひとり立っていた。
珍しく赤ジャージではない。
オレンジのタンクトップに迷彩色のカーゴパンツ姿、愛用の竹刀も持っていなかった。
ということは仕事を終えた帰りなのだろう。
「艦長に言われたことを考えていたのです」
ラムズフェルドを見上げ、スミレは言った。
「ほう、なにを言われた?」
スミレの隣の席を無造作に引き寄せ、ラムズフェルドはどっかと座った。
ラウンジには同じような白いテーブルがいくつも並び、
学校帰りの学生や休憩中の買い物客などで賑わっている。
テーブルの合間には酸素供給も兼ねた観葉植物が植えられていた。
天井には宇宙空間を映す巨大モニターがスクリーン状にはめ込まれ、
さながら天窓のようになっている。
夕暮れに似せた照明がさんさんと照らす中、
モニターには広大な星空が映し出されていた。
その星空の下、すぐさまウェイターが現れ、ラムズフェルドに注文を聞く。
「なに飲んでんだ?」
スミレの前に置かれた透明なグラスな指し、ラムズフェルドは言った。
「水です」
「ふむ」
ひとつ頷き、ラムズフェルドはウェイターに振り向いた。
「じゃあ、生ビール、中ジョッキで」
何が『じゃあ』なのかはわからないが、
ラムズフェルドの言葉にウェイターは頷き、下がろうとした。
「待て」
それをラムズフェルドが呼び止めた。
「言っとくが気の抜けた発泡酒なんか持ってくんなよ」
その言葉に、ウェイターは怪訝な表情でラムズフェルドを見つめる。
「本物の生ビールだ」
一瞬驚いた表情でウェイターがラムズフェルドを見た。
「私にとっちゃ、ビールは生きる糧、『水』みたいなもんだからな。
混ぜ物は受け付けないんだ」
ニヤリと笑い、ラムズフェルドは言った。
その微笑みに気付くと、ウェイターは苦笑し、
「かしこまりました」とだけ答え、下がっていった。
「なるほど」
スミレがこくりと頷いた。
「今のは冗談ですね?」
へ? という表情でラムズフェルドがスミレを見る。
「ウミヤマに『本物の生ビール』も『本物の発泡酒』もありません。
あるのは味を似せた合成酒だけです。
先生はそれを知っていてわざと意地悪を言った。
相手の方もそれを理解した。つまり、冗談が成立したわけです」
「…あ、あ〜、まあ〜…そう、かな?」
「加えて私が飲んでいた『水』と、先生にとっての『ビール』を、
生きる糧として扱うことで、『掛けた』わけですね」
「ま、まあ、ね…」
「つまり、注文ひとつに幾重もの意味を持たせた高等ジョークです」
「……」
わけのわからない気恥ずかしさに襲われ、ラムズフェルドは知らず頬を染めた。
居心地悪そうに身をくねらせ、うつむく。
「面白い冗談です」
「そ、そうか?」
「ええ。面白かったので笑おうと思います」
真顔で言った。
「…笑うって、おまえが?」
「はい。構いませんか?」
「……ま、まあ、お好きに…」
「はい、では」
スミレはひとつ息を吸うと、真正面を向き、虚空を見つめた。
そして、いきなり言った。
「ハ、ハ、ハ」
ぎょっとしてラムズフェルドがスミレを見つめる。
「ハ、ハ、ハ」
「……」
「ハ、ハ、ハ」
「……」
「ハ、ハ、ハァー」
最後にヨガの呼吸法のごとく息を吐き出したスミレは、
不意にラムズフェルドを見つめた。
「どうですか?」
まったくの無表情で尋ねる。
「え? いや、え? なにが?」
「私の『笑い』です」
「笑いです、たって…息を吐き出してたようにしか…」
「…どうやら修練が必要なようですね」
「そ、そうだな…」
まったくしょげた風もなくしょげたような台詞を言うスミレに戸惑いながら、
ラムズフェルドは話題を戻した。
「…いったい艦長になにを言われたんだ?」
「人間のような感情が必要だと言われました」
「感情?」
「はい」
「…ああ、それでか」
ラムズフェルドはラウンジを見回し、頷いた。
「ここで人間を観察してたわけか」
「はい。ここには人がよく集まります」
「で、早速試してみたわけだ、その……『感情』らしきものを」
「はい」
「…ふーん。でもなんでまた、おまえに感情が必要なんだ?」
「変わるべきだからです」
「変わる?」
「はい。我々の種族が全滅した以上、変わる必要があると。
そのために感情を学べと言われました」
「ふむ」
言ってラムズフェルドは首を傾げた。
「だけど、全滅したのは捕食者たちが原因なんだろ?」
「先生」
「ん?」
「どこでその情報を? 捕食者に関する情報は極秘扱いです」
「ああ、まあね…いろいろ方法はあるさ」
ウェイターが現れ、ラムズフェルドは手を振ってその話題を避けた。
泡立つ合成酒をテーブルに置くと、ウェイターは無言で去っていった。
「それより連中が原因なら、別におまえが変わる必要はないだろ?」
喉を鳴らし、合成酒を一飲みする。
「それに、おまえが種族最後のひとりであることを考えると、
なおのこと変わるのはまずいんじゃないか?
種族の文化を壊すことにもなりかねない」
口に泡を付けたままラムズフェルドは言った。
「はい。しかし我々の種族は、なによりも見識の高さを尊ぶのです。
地球人風に言うならば、学び修得し、より高みに至ること。それが生きる目的です」
「生きる目的、ねえ…」
「地球人は母たる惑星を出たばかりの赤ん坊です。
いまだ首すらすわっていません。
しかしだからこそ、地球人から学ぶことも多いのです」
「ほう、例えば?」
「私は先程テレパシーを使わずに、
『戸惑い』の感情を先生から引き出すことに成功しました」
「戸惑い?」
「はい。怒ればいいのか、笑えばいいのか、わからない感情です。
結果的に、
慈愛にも似た『慰め』の感情を得ることができました。これは驚くべきことです」
「…まさか心を読んだのか?」
顔をしかめ、ラムズフェルドが言った。
「いいえ。顔面の変化を観察していればわかります」
事も無げにスミレは答えた。
「先生は戸惑いを覚えた際、咄嗟に話題を変えました。
それは、戸惑う自分を教え子に見せたくないという職業意識と、
必死に感情を学ぼうとする私への」
「わかったわかった!」
手を振ってラムズフェルドはスミレの言葉を遮った。
「…まったく参ったな。おまえはもっと人の感情を学ぶ必要があるぞ」
そう言って、ぐいと合成酒を煽る。
「先生」
「なんだ」
「顔が赤いです。『水』で酔われたのですか?」
「こいつ…」
殺気立ったラムズフェルドの視線がスミレを射抜く。
だがスミレは、ごく自然に、そして可憐に、にこりと微笑んで見せた。
「ふ、ふふん」
思わずラムズフェルドは鼻を鳴らした。
「なんだ、やればできるじゃないか?」
「はい、顔面の変化は随分修練を積みました。毎晩練習したのです」
一瞬、鏡の前で必死に微笑むスミレの姿が、ラムズフェルドの脳裏に浮かんだ。
直後スミレは、地球人を笑わせることに初めて成功した。
その笑顔は泡まみれではあったが、慈愛のこもったものだった。
同時に、赤子のようにあどけなくスミレには映った。
第15話3/4ベガ-2011/04/10(Sun)00:54No.94
「赤ん坊のようによく寝ていたぞ」
「そう見えたのなら、あんたの目は節穴だ」
言いながらコーネフは、棺のようなカプセルから身を起こした。
見下ろす髭面の男を無視し、カプセルから抜け出す。
そこは狭い部屋の中だった。
薄暗く、照明もほとんどなく、壁も床も黒く錆びついた合金だった。
さながら独房のようにさえ見える。おまけに淀んだ空気はカビ臭かった。
「ふふん、どうやらご機嫌斜めのようだな。悪夢でも見たか?」
髭面の男が言った。油に汚れたツナギにくたびれたキャップを被っている。
「夢は見ない」
男から真新しい服を受け取ったコーネフは、地球連合宇宙軍の制服を脱ぎ捨てた。
「そのわりにはうなされていたようだが?」
「当然だ。何日この中にいたと思う?」
無地のTシャツに腕を通しながら、コーネフは答えた。
「汚物用の廃棄カプセルを使うとは考えたな」
「転送班の発案だ」
「おかげでまんまとウミヤマから脱出できたわけだ」
顎鬚を撫でながら、男は言った。
そのキャップには、
かつて亡国の諜報機関が象徴としていたコウモリの図案があしらわれている。
「それで? 連中は?」
「散り散りに逃げた。追って集結する」
「…信用できるのか?」
「プール、あんたはこれまで誰かを信用したことがあるか?」
ぴったりとした無地のTシャツにカーキ色のカーゴパンツ、
それに厚手のブーツに履き替えたコーネフは、手櫛で金髪のクルーカットを整える。
プールと呼ばれた髭面の男は腕を組み、コーネフの後ろ姿を見つめていた。
「……おまえはさっき、夢は見ないと言ったな」
コーネフの質問には答えず、プールが言った。
「そうだ」
「…俺は今でも見る」
プールは髭面をうつむかせた。目深に被ったキャップが影になる。
「プリピャチの悪夢をな…」
「過去は学ぶものだ。すがるためのものではない」
「…おまえのように忘れることはできんな」
ツナギの袖をまくり、プールは合金製の腕を剥き出した。
「この腕が泣くんだ。時々な」
「また被害自慢を始めるつもりか? やめておけ、むなしいだけだ」
そう言うとコーネフは、プールの脇を通り、壁のパネルに触れた。
シュッと音を立て、目の前にドアが開く。
「待て」
プールが言った。
立ち止まったコーネフは、だが振り返らなかった。
「確かにあんたはかつて俺の上官で、プリピャチの副長だった」
振り返らないまま、コーネフが言う。
「だが過去の話だ。ボーマン船長は死に、プリピャチは『沈んだ』」
「…だがその『遺志』は生きている」
「その通りだ。しかしその『意志』を継ぐのに過去が邪魔をするのなら」
コーネフがプールを振り返った。
「排除するまでだ」
目と目が合った。
コーネフの凍てつくような視線が、プールを見つめていた。
「…どういう意味だ」
その視線を下から睨み上げ、唸るようにプールは呟いた。
「あんたは、いや、『あんたら』は、怖じ気づいている。尻込みしている」
微動だにしない視線を向けたまま、コーネフが言う。
「かつてのエリート部隊が嘆かわしいものだな。『モノリス』の意志さえ忘れ、
虫どもと交渉しようと言うのだから」
「…その情報、どこから仕入れた?」
プールの目に殺気が篭る。
「『モノリス』の意志だよ、プール。忘れるな」
「…裏切るつもりか?」
尻ポケットに手を回し、プールは低く呟いた。
それは『殺すぞ?』と言っているのと同義だった。
「裏切っているのは果たしてどっちだ?」
動じた風もなく、コーネフがプールを見つめる。
「……」
プールも黙ってコーネフを見つめる。
「…ふん」
不意にドアに振り向き、コーネフは言った。
「安心しろ、そのつもりはない。エージェントも既に送り込んである」
「…そいつの名は?」
「シャーマン。副長候補だ」
第15話4/4ベガ-2011/04/10(Sun)00:55No.95
「副長を舐めるんじゃねえッ!」
いきなりミソラの胴間声が校庭に響き渡った。
一瞬にして、
海山高校の校庭いっぱいにずらりと集まった副長候補たちが震え上がる。
その半数は軍人だったが、もう半数は民間人だった。
性別も年齢も経歴もまったくばらばらだったが、
そのいずれもがウミヤマの副長になろうという人間ばかりである。
肝の太さでは引けを取らない。
それがミソラの一声に震え上がった。それだけの迫力があった。
「知力! 体力! 勇気! その全てを兼ね備えてなけりゃ副長は務まらない!」
朝礼台に立ったミソラが言う。
その下には報道官の豊島と市長、そして大塚が並んで立っていた。
中でも豊島はこの半月ほど、寝る間もなく副長選挙開催の準備に大忙しだったが、
ミソラの声に、その眠気を根こそぎ吹き飛ばされていた。
そのびっくりどっきりの表情を、
地元放送局のウミヤマテレビ、略称Uテレが舐めるように撮影する。
「最高にして最優秀のクルー、それが副長だ!
昔っからファーストオフィサーと言われる由縁さ!」
ミソラが言った。
「だけどね、それだけじゃ副長にはなれない。副長にとって最も重要な資質、
それが何か、あんたらにわかるかい?」
一瞬、水を打ったように校庭が静まり返る。
と、副長候補のひとりが、素早く手を上げた。
「簡単ですわ!」
つみれだった。
体操服姿のつみれは、叫ぶやいなや、
目の前にいた妙にがたいのいい半裸男の背中を、
ダッシュで駆け上がった。
「な、なんや! なんばしよる!」
いきなり背中をよじ登られた半裸の男が、思わず叫ぶ。
その肌は鮮やかなまでに褐色であり、異常なまでに発達した筋肉が隆起している。
見事に剃りあげられたスキンヘッドとその全身には、
いたるところに禍々しい刺青が入っていた。
おまけにその鷲鼻にはいくつもの鼻ピアスが光っている。
どう見ても尋常の者ではない。
だが、そんなことはまったくお構いなしにつみれは叫んだ。
「美貌ですわ! このわたくしのような美しさに決まっていますわ!」
「ほう、その理由は?」
至極冷静にミソラが問う。
「副長たる者、皆の手本でなければなりませんもの!
常に皆の視線を浴び、皆の憧れでなければなりませんの!」
捕まえようとする半裸男の手を巧みにかわし、
今や肩にまでよじ登ったつみれは、声高に叫んだ。
その姿をUテレのカメラが追う。
「ですからさっさとわたしくを副長にすればよいのですわ! おーほっほっほっ!」
「なるほど」
ひとつ頷き、ミソラは言った。
「他にはないかい?」
そう言ってミソラが副長候補たちを見渡す。
その声に、一斉に手が挙がった。
「ほう…」
ミソラはその中から目ざとくスミレを見つけた。
彼女は静かに、だが凛として手を挙げていた。
「スミレ、副長にとって最も大事な資質がなにか、言ってみな」
一瞬スミレは、ちらりと横目につみれを見た。
「な、なんですの! そのチラ見はどういう意味ですの!」
もはや肩車状態のつみれが叫ぶ。
捕まえるのを諦めた半裸男は、つみれを振り下ろそうと右へ左へ身を揺すっていた。
だが、完全に足をロックしたつみれは、テコでも動かない。
むしろ半裸男のスキンヘッドをぺちぺち叩き、スミレに向かってわめき散らしていた。
だがスミレはそんなつみれには構わず、ミソラに視線を戻した。
「副長にとって最も重要な資質は、管理能力です」
「…ふむ、その理由は?」
「副長は艦長の補佐役であり、その命令を実行する代弁者です。
しかし人間に艦の業務すべてを行うことは不可能です。
故に適材適所、クルーを配置し、管理することが重要となります」
「なるほど」
頷いたミソラが皆を見回す。
皆が皆、手を挙げている。
だが、そうでない者もいた。
「ユキ、あんたはどう思う?」
校庭の隅を見つめたミソラが言った。
その声に、端っこにひっそりと立っていた牧野がびくりと肩を震わせる。
「……」
その姿をUテレのカメラクルーがアップで迫った。
思わず牧野が、うつむいたまま固まる。
「いいから、言ってみな」
見かねたミソラが言った。
「は、はい…」
ごくりと唾を飲み込んだ牧野は、意を決したように顔を上げた。
「きょ、協調性、だと、思います…」
消え入りそうな声が漏れる。
「その理由は?」
「スミレ代理少尉も仰ったように、副長は艦長の補佐です…が…
その、あの、クルー全員の代表者でもあると思います…」
「ふむ、それで?」
「ですから…あの…クルーたちの意見を聞き、まとめるのが仕事ではないかと…」
「ブラボー! 素晴らしい答えでっす!」
「あんたは黙ってなッ!」
突如、盛大に拍手し始めた豊島に、ぴしゃりとミソラが言う。
その迫力に、思わず豊島は仰け反り、後ろに転げた。
Uテレクルーが素早くカメラを振り、その姿を捉える。
年末特番ではそんな豊島の姿が、
陽気な音楽と共に何度もリプレイされるのだ。
だがそんなこととは一切関係なく、ミソラは瞑想するかのように目を閉じていた。
「……」
再び水を打ったように副長候補たちがしんと静まり返る。
その中には真剣な面持ちのハーニャや自信満々のドクターの姿、
そしてご当地キャラである「ひもののひもくん」や「いのししぼたんちゃん」の姿もあった。
と、カッと目を見開いたミソラの声が、校庭の隅々にまで響き渡った。
「だったらまずはおまえたちの協調性と管理能力を試させてもらおうじゃないか!
豊島! 発表しな!」
「は、はいーッ!」
ミソラの声に震え上がりながら立ち上がった豊島が、
頭上に高々とひとつなぎの鎖を掲げた。
「ふ、副長選挙、第一次試験は、『チェーンデスマッチ宝探し』でっす!」
つづく
【半裸の男】
ウィリアム・フォレスト・シャーマン
という偽名を使い、ウミヤマに潜入した謎の巨漢。
なぜか半裸。博多弁を流暢に話す。
全身には禍々しいまでの刺青が施されており、鼻ピアスもチャーミング。
その正体は、対テレパシー種族用に強化された改造人間。
思考の読み取りを限定的な範囲で遮断できる他、偽の情報を流すこともできる。
ただしテレパシー能力そのものを感知できるわけではない。
また本人によれば、出身はモザンビーク、
本名はアルボ・ミア・ソテロ・ホンワナ、だという。
が、つみれからは「やぁーすけ」と呼称される。
【ひもののひもくん】
アジのひらきを大胆に着ぐるみ化したマスコットキャラクター。
地元の干物店所属。
若干ぐってりとしており、そのビジュアルと相まって、キモイ。怖い。
視界が非常に悪いため、あらぬ方向にふらふらと歩くことがある。
貢がせて働かない男のことではない。
【いのししぼたんちゃん】
猪をかわいらしい女の子に擬人化しようとした着ぐるみ。
地元の精肉店所属。
かつてプラモデルの箱絵やカストリ誌の挿絵で一世風靡した地元の絵物語作家、
海山川茂がデザインを担当。
そのため、ソリッドでワイルド、かつスパイシーな劇画風の仕上がりとなっている。
全然かわいくはない。むしろ変に色気が濃い。
最大の特徴は、頭部のみを残して着ぐるみを脱ぎ、
機動性に長けたキャラクター「いのししちょちょちゃん」に変身可能であること。
ちょちょとは、「猪々」の意であり、チョーチョー人のことではない。
ちなみに、ちょちょちゃんとぼたんちゃんは親友という無理のある設定。
ウミヤマデータバンクベガ-2011/04/10(Sun)00:56No.96
【戦艦プリピャチ】
かつて地球連合宇宙軍に所属した戦艦。
探査用に改造され、当時、最強最速、そして最高のクルーを乗せ、就航。
人類未踏の深宇宙探査に向かった。
しかし、出発から6ヵ月後、謎のメッセージを残し、突如失踪。
大規模な捜索が行われるも、発見されることはなく、消息不明となった。
最後に地球に送信されたメッセージは、「我々は虫どもを見つけた」。
そのメッセージが様々な憶測を呼び、
現在では宇宙怪談の定番のひとつとなっている。
【赤き森】
反地球勢力の中でも極端に強固な地球中心主義勢力。
なんぴとも深宇宙に出ることを許さず、
絶対的な統治の下で地球勢力圏を支配すべしとし、
現地球連合の解体と、宇宙進出の全面禁止を訴え、
長年に渡って画策を繰り返している。
その発祥は古く、人類の宇宙進出以前にさかのぼる。
一説には、地球外生物の脅威を訴える集団「モノリス」がその母体だという。
当初、単なる学生の同好会だった「モノリス」は、
宇宙進出が本格化するに至って急激にカルト化。
過激派として活動するようになり、
やがて混沌とした当時の社会情勢と重なって肥大化、多くの派閥を生んだ。
その中のひとつが、「赤き森」だったという。
しかし、テロリスト集団として問題視されるようになった「モノリス」は、
一斉検挙を受け、瓦解。
人類の宇宙進出と共に、完全に駆逐された。
穏健派として検挙をまぬがれた「赤き森」はその後、
「モノリス」の遺志を継ぐ一派として、その主張を貫いていくこととなる。
しかし、「モノリス」の残した影響力はいまだ大きく、
地球連合情報部のエリート集団として、影で暗躍している、
とまで噂される伝説的な集団となっている。
【チェーンデスマッチ宝探し】
いかに屈強な軍人でさえも震え上がる過酷極まるサバイバル訓練のひとつ。
そのあまりの過酷さから、地球連合軍では20年も前に廃止された訓練である。
その内容は、鎖によって腕を繋がれた二人一組が、
ヒントを元にフィールド内に隠された『宝』を探し出すというもの。
フィールドは主に人里離れた広大な密林や、野生動物豊富な場所に設定される。
『宝』は、水、食料、医療品、サバイバルグッズ、武器やガラクタなどだが、
それぞれにポイントが定められており、
制限時間まで確保していた『宝』の累計ポイントにより、勝者が決定される。
出発は3分おきに一組づつ行われ、
一組につき、ヒントの書かれたメモが一枚渡される。
ヒントは『宝』の場所を示した謎掛けになっている。
つまり、パートナーとの協調性に加え、ヒントを解く知性、『宝』の管理能力、
さらには見つけた『宝』を奪い、奪われまいとする戦闘及び交渉能力、
そしてフィールド内で生きのびるサバイバル能力が試される。
鎖を切る以外の禁止事項は一切なしのデスマッチ、
それがチェーンデスマッチ宝探しである。
ちなみに、鎖の切断は例外なく即時失格となる。
元々は、復活祭の日に、隠された卵を子供たちが探すイースターエッグが発祥。
そこになぜか「網走番外地」が混ざっている。
第16話投稿者:うじてる投稿日:2011/07/08(Fri)23:04No.97
現在、ウミヤマは副長選挙のため遺棄された人工島に駐留している。
このかつての軍事基地の跡を『チェーンデスマッチ宝探し』の舞台とした。
そしてその第一試練が始まろうとしているとき、
ウミヤマ艦内では別の事件が起きていた。
「ウルゥアァッ!!」
奇声を上げ、主人公を名乗る男が暴れる。
既に店の中はテーブルやら食器やらが砕き割れ散乱している。
サンバカたちはともかく店から飛び出す。
「おいおいおい! なんなんだよアイツはッ!」
「だから、俺たちのお仲間みたいだと……」
「いやいやいや! 少なくとも今は違うでしょッ!」
とりあえず、主人公男はまだ店の中に居る。
豹介が今のうちとウミヤマ軍警に通報した。
「で、俺たちはどうするよ?」
鮫が鷲雄に向かって言う。
どうしても、こういうときは彼を頼りにしてしまう。
もちろん、鮫としてはとっとと逃げ出したいところではある。
三人で居るため、まだこの場に留まっているだけなのだ。
豹介もよもや取り押さえようとは思っていないが、
『防衛隊』としての使命感がまだあった。
「一体彼は何が目的なんだろう?」
豹介が疑問を口にする。
「そりゃあ、おめえ、主人公になりたいんだろう!?」
「それと暴れることのどう関係がある?」
「そんなこと知るかーい!」
そんな問答の間に、軍警の車両が駆け付けた。
二名の兵士がハンドガンを手に車両から降り、サンバカたちに向かって来る。
「君たちか、通報者は!?」
「ああ、そうです! そこのラーメン屋でなんか変な奴が暴れてて……」
ラーメン屋の異変にはすぐに気づいたらしく、
返事もそこそこに兵士たちはラーメン屋『万馬軒』に入っていく。
主人公男は兵士たちに気が付くと、じりっと数歩後ずさり距離を取る。
「我々はウミヤマ軍警の者だ!」
「おい、貴様! 大人しくしろ!」
言葉とともに銃を主人公男に向ける。
「ウガァッ!」
しかし、彼はその言葉を無視し、兵士に向かって皿や瓶を投げつけてくる。
とっさに物陰に隠れそれを避けた兵士たちはすぐさま威嚇射撃を開始する。
兵士が次の警告を発しようとしたが、機先を制して主人公男が動いた。
鋭く跳躍し、兵士たちとの距離を一気に詰めてくる。
言葉を飲み込んだ兵士は慌てて銃を向けようとするが、間に合わない。
とても追いつくような速度ではなかったのだ。
次の瞬間にはまず、一人の兵士の首が宙に舞っていた。
隣の兵士が驚愕の表情を浮かべる。
彼にできたのはそこまでだった。
目にもとまらぬ速さの第二撃が彼の額を貫く。
主人公男はゆっくりと手を引き抜くと、二つの死体を満足そうに眺める。
「……ふふふ、敵を倒した」
一方、サンバカたちは離れたところから
豹介のオペラグラスをとっかえひっかえして中の様子を見ていた。
「うおーい! あ、あいつムチャクチャだぞ!!」
青ざめた顔で鮫が叫ぶ。
「うむ、あいつが外に出てくるとまずいな」
相変わらずの無表情で鷲雄が答える。
「こ、甲兵隊に連絡しよう。あの兵士たちの車に無線があるはず……!」
あたふたと豹介が駆けていき、防衛隊の名で連絡を取る。
つづく
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