わくわく! 大迷宮クエスト

 


第1話
投稿者/氏照
投稿日/2007年3月25日(日)17:39
 
はるか古代、天地魔界が三界に分かれたとき、地上界に二つのものが現れた。
一つは天へとつながる巨大な塔。
『果てしなき塔』『天空への階段』とも呼ばれるそれは、地上最高の聖地とされた。
もう一つは魔界へと堕ちる広大な洞窟。
無限の深さを持つといわれる『終わりなき大迷宮』。
あらゆる魔が集い、幾多の侵入者を退けた世界最凶の魔窟である。

この物語は、大迷宮の光と闇の伝説を記したものである。

《わくわく!大迷宮クエスト》
第1話

ココは大迷宮、世界一深く、世界一複雑な超巨大ダンジョン。
幾千、幾万のモンスターがココで働いている。
どんな仕事かって?
探索にやってきた冒険者どもを蹴散らし、追い返すことだ!
大迷宮に眠るお宝や、恐れ多くも大魔王様の命を狙って
勇者だのトレジャーハンターだのが潜って来やがる訳だ。
ナニ? お前はだれかって?
オレはゴブリンのゴブ彦。
地下1階B地区第16分隊長だ。
ココでは5年のキャリアだからまあ中堅ってトコロだ。
おっと、これから出勤なんだ。
同僚の分隊長と共同戦線で行くことになっている。
そんなこと言ってうちにホラ、そいつがやって来たぜ。
「ウィーッス。ゴブ彦君おはよう」
ヤツはジャイアントラットのクリモト君。
B地区第38分隊長で、オレとは同期だ。
「いやあ、この間は大変だったね、ゴブ彦君の部隊全滅したんだって?」
「イヤイヤ、オレが生きてるんだから戦略的後退でしょ」
「補充要員は来たの?」
「申請は出してるんだけどさあ、サッパリよ」
「そーだろーねー。
このあいだの魔王軍財政改革会議で危険手当と治療保障削られてるからねー」
「そーなんだよ、新任モンスターが入ってこねーんだよ。
地方ダンジョンからの移籍組はソコソコ来るけどあいつらレベル高いっしょ。
ほとんど下の階に行っちゃうからなー」
「そだね、ボクらもレベル上げて下に行きたいよねー」
「だっからさー、
今日来るってウワサの大型ルーキーに一発かましてやろうってわけじゃん?
某伝説の勇者の末裔って話だぜ」
「エー、最近そんなヤツ多いよー。ガセネタじゃないの?」
「情報屋のジョバンニから買ったんだぜ?
ヤツは冒険者ギルドの登録官だし間違いねェッて!」
「ホントにそーだとして伝説の勇者の末裔に勝てる見込みがあるの?」
「これがさァ、そいついまんトコロ仲間がいないんで一人で来るらしいんよ。
オレとクリモト君の部隊で袋叩きにできるっしょ!」
「一人なの〜? もしかしてレベル高いんじゃ……」
「所詮はルーキー、いいトコレベル2か3だって!」
「いやあ、そーならいーけど……」
「心配ないって! かるーくお仕事してボーナスで飲みにいけるってば!」

そんなこんなで伝説の勇者の末裔を待ち受けるゴブ彦君とクリモト君。
2人の明日はどっちだ!?

つづく
 
 
第2話
投稿者/ピヴィ
投稿日/2007年3月26日(月)10:54
 
入口にぱっと明かりが点った。
揺らめく炎に照らされて、まだ若い男の顔…少年といっても良い…が浮かび上がる。
不安げな顔をしているが、左手には松明を、右手にはしっかりと鈍く輝く剣を握りしめている。
まだ刃こぼれひとつ無いことからも、買ったばかりであることが見て取れた。
重い鎧は身につけず、固い皮で作られた胸当てだけが、彼の体を守っている。
初心者用装備だ。
変わった物といえば、少年が首から提げている派手な飾りの宝石である。
「あれが…」
炎に照らされるのを避けるように、2つの目が少年を見ていた。
少年がもう少し用心深く目を凝らしていたら気が付くことが出来たかも知れない。
第38分隊の偵察であるラットのフクモト君であった。
フクモト君は少年の姿を確認すると、音も立てずに奥へ去っていった。
「親分、クリモトの親分。来ましたぜ、あれが伝説の勇者の末裔に違いありませんぜ」
入口からやや離れたBの部屋にB地区の作戦会議室が設置されていた。
巨大なネズミの前に、たったいま戻ってきた小さなネズミがかしずく。
「よーし、フクモト君よくやったぞ。」
B地区は洞窟の入口近くを守る部隊である。A地区は地下2階への階段付近、
C地区は隠し扉の奥となっている。
地下1階の入口を守るB地区の部隊は最も重要な任務であるが、
この洞窟で最弱のモンスターが配置されていた。配置されていたと言うよりは、
怖くて奥にはいけない…という事情もある。
第38分隊はGラット×3、ラット×5という構成になっている。
基本的にはかみつく、ひっかくことしかできない。
作戦会議室は大部屋で、38分隊〜40分隊が待機していた。
@ABの部屋を守る面々である。基本的に独立していて、お互いに協力することは少ない。
隣の部屋で闘っていても、気が付かないなんてことがざらにある。
ここでも、第38分隊が息巻いている横で第39分隊のジャイアントバットたちや、
第40分隊のジャイアントスパイダーのタケダ君(40分隊は彼一人である)は
のんびりと与えられた餌を頬張っていた。
「よし、@の部屋で待ち伏せだ!
我々が時間稼ぎをしている間にゴブ彦君の第16分隊が
とっておきのトラップの用意をしてくれる手筈になっている」
いくぜ!
の号令とともに8匹は@の部屋へと向かっていった。

つづけばいいなぁ
 
 
第3話
投稿者/ベガ
投稿日/2007年4月8日(日)12:29
 
「ここが入口みたいだよ? おばさん」
広大なダンジョンへと続く石段を振り返り、不安げな表情で少年は言った。
ずしり
巨大な岩を落としたかのような地響きが、ダンジョン入り口に響いた。
ずしり
また地響き。
少年は固唾を飲んで、石段を見つめた。
巨大な何かが、ダンジョンへと降りてくるのがわかる。緊張が走った。
ずしり
また地響き。
石段の陰から、ぬっと人影が現れた。
でかい。
7フィート、いや、8フィートはあろうかという巨躯である。
首が太い。
腕が太い。
胴が太い。
脚が太い。
全身が巨大な丸太をつなぎ合わせたようなつくりだった。
みっちりぎっしりぐっちりだった。
ダンジョンの通路一杯に広がる巨大さであり、野太さだった。
「だれがおばさんだって?」
そして声までが太かった。
少年はその声にギクリと固まった。
「あたいはねえ、これでもまだ19なんだ。今度そんなくちをきいたら」
太い拳が振り上げられた。
それだけで少年の顔を、風圧が撫でた。
ビチビチと腕に血管が浮く。
ぶん
と風を切る。
ばん
と少年の背後の壁を叩く。
「ひっ」
初年の悲鳴があがった。
手首までめっこりと壁にめり込んでいた。
尋常ならざる膂力だった。
「殺す」
野太い声が言った。
少年の股間から滲み出るものがあった。
ほっかほかだった。
そして、このぶっとい巨大な女が、19才だとはとても思えなかった。
レベルなら頷ける話だった。
「す、すいません蛮子さま! どうかどうか殺さないで! 僕には幼い妹と弟が」
感極まって少年はじょんじょろ漏らしながら叫んだ。
「蛮子さまか……いいね、嫌いじゃないよ、その呼び名」
ニタリ、と笑って女は答えた。
「よし、今後は蛮子さまで行こう。いいね、坊や」
「は、はい! 蛮子さま!」
少年は恭順を示すべく、再び漏らした。

蛮子さまがこの大陸にやって来たのは、しばらく前のことだった。
別の大陸で、元々12あった国々を、
その恵まれすぎにも程があんだろうと言わんばかりの信じがたい筋力にものを言わせ、
すべて統治したあとのことである。
帝国の支配などというひどくつまらない仕事に飽きた蛮子は、
散々っぱら好き勝手した挙げ句に出奔。
さらなる高みを目指してこの大陸へとやって来たのだった。
その名はすぐに知れ渡ることとなったが、その名声を一躍高めたのは、
30の部族からなるトロールの大部隊を相手に、ひとり大立ち回りを演じ、
最終的にはトロール全員をビンタで叩きのめすという事件というか騒乱というか、
大戦争の中核を担ってからである。

無論、その名はすぐさまモンスター業界にも知れ渡ることとなり、
別名「歩くティルトウェイト百連発」、通称「レベル50の女」、または「旧支配者」、
あるいは「エピックレベルの向こう側」などと呼ばれ親しまれている。

ところで、彼女が何故、ハイエンシェント・ドラゴンに首相撲で勝るほどになったのかと言えば、
モテたかったからである。
彼女の幼少期はあまり幸福だったと言えず、行く先々で、
「戦慄の膝小僧」、「霊長類ヒト科最強」、「北の最終兵器」、「男塾塾長」などと呼ばれ、
忌み嫌われていた。
やがて思春期を迎えた彼女はイイ男をとっ捕まえては味見をしていたが、
自分に見合うだけの男がいないと気付くと、各地を放浪。
行く先々で荒事に首を突っ込んで、というか自ら引き起こしていたため、
半端なくレベルが上がってしまったのだった。

そんな悲しい生い立ちの彼女であるが、この大陸、そ
してこの広大なダンジョンへとやって来たのは、ひとつの目的があったからである。
すなわち、ダンジョンの最深部にあるとされる伝説の
「何でも願い事を叶えてくれるマッシーン」を奪取するためである。
無論、彼女の願い事は、ただひとつ。自分に見合うお婿さんである。

そんな冒険者を前に、果たしてゴブリン部隊の面々はどう出るのか!?
こうごきたーい
 
 
第4話
投稿者/氏照
投稿日/2007年4月8日(日)12:30
 
ともかくも大迷宮へと潜入した2人。
蛮子の巨体は完全に通路いっぱいであり、身動きもままならない。
地下1階は巨大なモンスターが少ないため、通路はあまり広くない。
階層を下がるとドラゴンなどの大型モンスターがいるので広くなるのだ。
先に進むのは伝説の勇者の末裔であるところの少年。
名を、サダオ・ショージという。
伝説の勇者の末裔といっても、まったくの傍系であり、
中央冒険者協会の勇者登録においてもすでに抹消された系統である。
実家は小作農で、9人兄弟の5番目、口減らしのため放り出されたのであった。
装備は冒険者協会から支給された短剣と革鎧のみ。
それと、旅立ちのときに幼い弟妹から渡された緑の宝石。
一体ドコから持ってきたものなのか、淡い光を放っている。

一方の蛮子。
西方の大陸の荒地の民であり、生粋の戦士。
荒地の民は略奪を生業とする荒ぶる民族である。
その中でもその巨躯は異質であり、
その力を恐れた族長らの手によって幼いころに部族から追放されている。
そこは『腐敗せし荒れ野』と呼ばれる呪われた地、わずか8歳のときである。
だがその環境がさらに彼女を鍛え、更なる力を与えた。
12歳で部族の元へ帰り、族長とその三族を皆殺しにして自ら新たな族長となった。
その後部族を率いて西方の大陸を荒らしまわることとなるが、
魔界より落ち延びてきたトロールの部族と戦争になる。
辛くもトロールたちを殲滅させるが、荒地の民も彼女を残して全滅してしまう。
結局、西方大陸連合軍によりこの中央大陸へと追われ、
この地で子孫を増やし部族の復興を目指すこととなったのである。
蛮子の装備は熊の毛皮をつなぎ合わせた衣服のみ。
武器は持たず、その腕力のみで戦う。
この2人がどのようにして出会ったかは別の機会に譲る。

待ち受けるゴブ彦君たちはサダオが蛮子を連れていることは知らない。
このまま行けば瞬殺間違いなーしなのだが、
幸運なことに彼女の体に変調が訪れていた。
今日は満月の夜。
ある病に冒されたものたちはこの夜、文字通り“変身”する。
『魔獣憑き』、ライカンスロピーである。
通路の途中でうずくまる蛮子。
奇怪な呻き声を上げ、胸をかきむしる。
「ウグアアアァッ! ホワイトカラーエグゼンプショーンッ!」
急激な蛮子の異常にうろたえるサダオ。
彼の目の前でみるみるうちに蛮子の姿が変わっていく。
やがてぐったりとなると、そこには別人が横たわっていた。

「す、すいません。驚かせてしまいましたね。わたくしこーゆー者です」
その“男”はヨロヨロと立ち上がると一枚の紙をサダオに差し出す。
紙にはこう書かれていた。
『自民商事株式会社 営業部係長 シンタロー・アベ』
クッタクタの背広にバーコードな頭。
疲れきったその眼は死んだ魚のようである。
「42歳、独身。趣味は録画した時代劇の再放送を見ることです……」
そう、蛮子は『係長』憑きに冒されているのであった!

つづく
 
 
第5話
投稿者/ピヴィ
投稿日/2007年4月8日(日)13:04
 
クリモト君たちがその場にたどり着いたのは、事が終わってからだった。
そこにいたのはひ弱そうな少年と、貧弱なサラリーマン。
サラリーマンは懐に手を入れて何かを取り出そうとしていた。
武器か!
一瞬走る警戒心。ラットたちの目が怪しく光る。
標的まであと5m「いけっ」栗本君の号令で一斉に飛びかかる。
サラリーマンの手が一瞬早く現れた。
「わたくしこーゆー者です」懐から名刺を取り出した。
ズザザザーーーン!
新喜劇ばりに豪快にこけるラットたち。
「なんでファンタジーで名刺やねーん!」
バシーン
クリモト君の激しいつっこみ。
シンタローは10のダメージを受けた。
シンタローは死んでしまった。

「ふっふっふ、勇者の末裔よ。仲間は死んでしまったぞ。
おまえもおとなしく俺の昇進の踏み台と成れ!」
ビシッと決めるクリモト君。

勇者の末裔は逃げ出した。



しかし回り込まれてしまった。

「へっへっへ、こっちは通さないぜ」
裏から回り込んでいたゴブ彦君が現れた。
「ナイスだゴブ彦君!」
クリモト君が親指を立てて片目を瞑る。
「任せろクリモト君」
ゴブ彦君も同じ格好で返した。

サダハル→たたかう→ゴブ彦君

サダハルはゴブ彦君を攻撃した。
ゴブ彦君に7ダメージを与えた。
ゴブ彦君は痛そうに顔をしかめた。

ゴブ彦君の攻撃。
サダハルは5ダメージを受けた。
クリモト君の攻撃。
サダハルは3ダメージを受けた。
ゴブリン軍団の攻撃。
サダハルは12ダメージを受けた。
ラット軍団の攻撃。
サダハルは3ダメージを受けた。
サダハルは死んでしまった。

「おお、死んでしまうとは情けない。
サダハルはあと29点の経験点でレベルが上がる。
無理はする出ないぞ」王様のありがたいお言葉を受けた。
サダハルは生き返った。
が、それはまた別のお話…。

死んだと思った瞬間、すっと消えるようにサダハルの姿が消えてしまった。
「このゲームは死に放題だな…」
ゴブ彦君とクリモト君はサダハルの居たあたりをまさぐった。
そこには25ゴールドが落ちていた。
「ちぇっ、しけてんなぁ」
そんなことをしていると、ダンジョンの奥から見知らぬ魔導師があらわれた。
「死霊術師のタカヤマさんじゃないですか。こんなところに何をしに…」
深くフードをかぶり、首からはいくつもの髑髏の首飾りを下げているこの怪しいモンスターは
地下5階に住む死霊術師のタカヤマさんである。
地下5階のボス的存在であるタカヤマさんは
1〜5階にいるすべてのアンデッドを創造しているすごい魔法使いなのであった。
「ふむ、おもしろい死体があると聞いてきたんでな…」
そういって、タカヤマさんはシンタローの死体に近寄っていった。
「こいつはただのよわっちいサラリーマンですぜ」
「そうそう、おいらの一撃で死んじまった」
「ふむ」
二人の言葉には興味なさそうに返事をかえし、
死体に手を当てると、なにやら呪文をつぶやきはじめた。

数分後。
シンタローはゾンビとして生まれ変わった。
以後、このダンジョン史上最悪と称される
「蛮子憑き」のゾンビがここに誕生してしまったのであった。

次回に続け。