わくわく! 大迷宮クエスト その5 



第11話
投稿者/ピヴィ
 
第1層パート6、21階。
このフロアは天井までの高さが20mもある。
なぜならば、この階には多くのジャイアントが生息しているからである。
平均身長が10m、最大の物で18mほどもある。
もちろんガン○ムとも戦える。
小さい者は3mほどか、
たまに踏み殺されているのを見ることが出来る。
人間から見たら想像できない話だ。
中には体調1mほどのゴブリン族などもいるが、
それはもう、ネズミのような扱いだった。

そんな21階の通路のすみに、小さな穴が開いていた。
ここは21階ゴブリン愛護組合組合会議室である。
「では議長、この21階でゴブリン族が平和に暮らすためには
あの、凶悪なるヘルハウンドどもをなんとしても駆逐するという
ことでよろしいですかな」
円卓を囲む一匹のゴブリンが議長に確認する。
西地区族長のダゴブである。
ダゴブのいうヘルハウンドとは体長が5mもある
ジャイアントたちのペットである。
ジャイアントたちはゴブリンのことを何とも思ってはいないのだが、
そのペットであるヘルハウンドは
楽しみとおやつのためにゴブリンを食べるのだ。
そのため、ゴブリンたちはおちおちと食料集めにいそしむことが出来ないし
道の真ん中を歩くことも出来ない。
「うむ。もうそれしかあるまい。
しかし、人数で攻めても犠牲が増えるばかりじゃ。
なれば、各部族より勇者を選び出しこれに当たらせる。
これをもって今会議の決定としてよろしいか?」
議長とよばれたゴブリンが皆に同意を求めた。
議長アゴブを中心に右から西地区族長ダゴブ、
南地区族長サーゴブ、東地区族長エズゴブ、北地区族長ノルゴブ
が並ぶ。
全員がそろって首を縦に振った。
「では、それぞれの居住区に戻って勇者の選別に当たってくれ」
その一言で、会議は解散した。

翌日、同会議室に4匹の勇者ゴブリンが集結した。
「よくぞ集った、若者たちよ。
お主たちには命をすててこの任務に当たってもらいたい。
我らの目的はヘルハウンドの掃討であるが、
このフロアにはあまたのヘルハウンドがおる。
さらに、ただのヘルハウンドを退治たとしても
巨人族のうすのろどもは再びペットを買い付けてくるだろう。
なればじゃ、
きゃつらのボスとも言うべき存在
最強の巨人族、21階のボス、
クラウドジャイアントのチヨコ・コロネがペット
かの強敵、史上最悪のヘルハウンド
『恐るるべき』マジナイを倒し、
ヘルハウンドどもにこのゴブリンの力を
思い知らせてやるほかに道はないのじゃ!
さぁゆけ、勇者たちよ
ゴブリンの明日はおまえたちにかかっておるのじゃ!!」

というわけで、続くのか?
 


第12話 1/3
投稿者/ベガ

 
冬の森。
周囲は明け方の霧に呑まれ、葉が落ちねじくれた木々は幽鬼のごとく不気味に影を落とす。
その中を死者の行列さながらに、疲れ切った一団が重い足をひきずりながら歩き続けていた。
強行軍だ。
昨夜から一睡もせず歩き続けている。
いや、仮に休息したところで、眠れる者などいなかったろう。
歩き続けるよりないのだ。
ガーンズバックは重い足をひきずり、重武装を外すこともなく、ただ黙々と一団を率いていた。
吐く息が白い。
剃髪した頭には汗が滲み、泥と炭と血に汚れた顔を伝う。
かつてそのずっしりとした頑強な短躯に映えていた白銀の鎧は、
ほころび、ひしゃげ、乾いた血がへばり付いている。
ガーンズバックが護る北方の城砦都市ミュンヒハウゼンは、一夜にして陥落した。
それは文字通り、一夜のことだった。

ヘルゲート。

地獄のかまど。
城の地下深くに埋もれていたその門が、突如としてその口を開いたのだ。
一斉に溢れ出た異形の軍勢は、北方の要と謳われた都市を蝕み、
侵し尽くし、一夜にして飲み込んだ。
人とも獣ともつかぬ異形の化け物たちは、異人種でも異種族でもなく、まったく別の何かだった。
十フィート近い女の体を持ち、その背中から何百という男根を生やしたモノ。
巨大な犬のような形をし、体毛はなく、全身にびっしりと口が生えたモノ。
かと思えば、不気味な血管が浮き出した丸い肉塊にイソギンチャクのごとき肉の花が咲いたモノなど、
その姿は地獄の住人そのものだった。
だが真に悪魔的なのは、その姿ではない。
それは戦ではなかった。
それは闘いではなかった。
それは一方的な殺戮だった。
彼らには剣も槍も弓も魔法も効果がない。
その頑強な表皮には傷ひとつ付けることができない。
そしてその怪力は容易く人間の手足をもぎ取る。
手足をもぎ取り動けなくなかった人間を、彼らは、侵し、冒し、犯し、弄び、そして貪り喰らう。
老いも若いも、男も女も、すべてを犯し尽くし、喰らい尽くす。
生命活動としてではない。
それが楽しいからだ。
歓喜しているわけでもない。
単なる手遊びだ。
戯れているだけなのだ。
厳格だったミュンヒハウゼン王が、顎を砕かれ、喉を引き裂かれながら、
妃の生首を飲み込まされ発狂したとき、北方最大にして最強の城砦都市は陥落した。
生き残ったのは、ガーンズバックとその手勢七名、そして十八人の住民だけだった。
そのわずかに残った者たちも、いまや疲れ切っていた。
 
 

第12話 2/3
投稿者/ベガ

 
命からがら町を捨て逃げ出したガーンズバックたちは、恐怖と憔悴で疲弊し切っていた。
だが立ち止まることはできない。
勝算皆無とみるやすぐさま退去を命じたガーンズバックだったが、その耳に、
狂乱し呪詛を口走る国王の断末魔がこびりついている。その声が彼を責め立てる。
だが生きなければならない。
この脅威を周囲に知らせなければならない。
そして生き残った者たちを守らなければならない。
そのガーンズバックの強固な意志だけが、彼を絶望への淵に留めていた。
と、
「将軍!」
一団の後方を守っていた手勢の者が、鋭い警告を発した。
皆が一斉にびくりと立ち止まり、武器を構える。
住民たちを中心に、その周りをガーンズバックとその手勢が守る。
「…………」
跳ね上がった恐怖が息遣いを荒くする。
手に滲んだ汗が不用意に武器を滑らせる。
血走った目が辺りを見渡す。
だが、動くものは何ひとつない。
霧が濃い。
木々の合間が不気味に静まり返っている。
「将軍!」
再び警告の声。
その声に、わっと住民たちが走り出した。
「待て!」
その動きを抑えようと手を上げた瞬間、
「ぐが!」
首筋に衝撃が走り、目の前が白く飛んだ。
次の瞬間、怒号と絶叫が入り混じり、何物かが殺到してくる気配と足音が響き、
土くれが舞い、ガーンズバックは自分が地面に伏していることをようやく理解した。
朦朧とする意識の中、両腕を踏ん張り、身を起こす。
そこには、絶望が広がっていた。
それは絶望という名の光景だった。
音が消えた。
目前の光景がゆっくりと流れて見えた。
十フィートはあろうかという巨大な蛸のような生物が、
無数の触手で住民たちを吊るし上げ、手足をもいでいた。
絶叫し、地面を転がる部下たちにはピンク色のなめくじのような生物が無数にへばりつき、
緑色の体液を噴出していた。
そしてガーンズバックの目の前には、巨大な女の体をした牛頭の化け物が立ちはだかっていた。
その顔には笑みらしきものがへばり付いている。
戦おうという意思はなかった。
そんなものは最初からなかった。
自分たちが囮になる。
その隙に住民たちがひとりでも多く逃げ延びてくれればいい。
そう考えていた。
そういった隊列を予め組んでいた。
だが、問題はそれ以前の話だった。隊列が機能する士気は一瞬にして失われていた。
希望は費えた。
残されたのは、絶望と殺戮だけだった。
ガーンズバックは表情を失った顔で、笑みを浮かべる異形の存在を見つめた。
そのとき、
「ぎゃあぁああぁぁああッあああぁあッッ!」
まだ幼い子供が、泣きながらガーンズバックに向かって走ってくるのが見えた。
牛頭もそちらを見た。
一瞬、その口元にいくつもの舌が伸び、よだれを滴らせた。
怖気が走った。
恐怖が跳ね上がった。
凄惨な光景が脳裏をよぎり、目の前を歪ませた。
声もなく飛び出したガーンズバックは、子供を抱え込み、その場に伏した。
「ああッあああぁあッッ!」
子供はガーンズバックの腹の下で、絶叫するように泣いた。
こんなことをしても何にもならない。
もはや逃げ場もない。
だがそれでもガーンズバックは何かせずにはいられなかったのだ。
例え希望がなくとも。
ずしりとすぐ傍らに化け物の足音が響いた。
ずちゅりぷちゅりとよだれの滴る音が聞こえる。
「呪われよ!」
ガーンズバックは呪詛を口走った。
「滅せよ!」
ガーンズバックは子を抱え込んだまま、ねめつけるように牛頭を見た。
「邪悪な者どもめ!」
にっ、と牛頭が笑ったように見えた。
その巨大な腕が、ガーンズバックに伸びる。
「ぎゃあぁああぁぁああッあああぁあッッ!」
子供の泣き声が一層激しく高く響き渡る。
と、その瞬間。
一条の。
一条の光明が。
その頭上にきらめいた。
ザン!
大木のごとき牛頭の腕が地に落ちた。
「GuGAAAaaaaaaaAAAAAAAaa!」
咆哮が響いた。
 
 

第12話 3/3
投稿者/ベガ
 
 
それは耳をつんざき、大地を振るわせる咆哮だった。
牛頭の腕は二の腕から先を失い、切り口から緑色の体液がびじゃぶじゃと溢れ出していた。
地面に落ちた腕は、這い出したミミズのごとき激しさで、のたくっている。
その傍らに、男が立っていた。
落ち武者のごとき振り乱れた黒髪が、水中を漂うごとく逆立っている。
両手にはそれぞれ大剣が握られていた。
半裸の裸身には整然と文字が刻み込まれ、這うように全身を隈なく覆っている。
それが燃えるような黄金色に輝いてた。
「そ、その文字は!」
ハッとしたガーンズバックは、思わず抱えていた子供の目を手で伏せた。
「見るな! 禁呪だ! 穢されるぞ!」
「GAAAaaaaaaaAAAAAAAaa!」
その言葉に反応したかのように、男の背後に立つ牛頭が吼えた。
腕の傷口からどっと体液が溢れ出しかと思うと、ずしゅりと新たな腕が飛び出した。
その体液まみれの腕が振り上げられ、渾身の勢いで振り下ろされる。
男は俯いたまま、その場に呆然と立っているだけだった。
「危ない!」
瞬間。
ゆらりと男の身体が流れ、怪物の一撃を紙一重でかわしていた。
地響きが辺りを揺らす。
すっと男が跳躍し、軽々と怪物の頭上を越えた。
背中に振りかぶられた二対の大剣が輝く。
全身の文字から黄金色の光が溢れ出す。
「ぬああぁああ嗚呼あああぁぁっぁぁあ嗚呼あぁああッ!!」
それは断末魔のごとき叫び。
限界まで振りかぶられた大剣が、一挙に振り下ろされる。
「あぁあぁああああああぁぁあああああああああッ!!」
怪物は苦もなく両腕をかざし、防いだ。
いや、防ごうとした。
振り下ろされた大剣は、その巨大な腕を切り裂いた。
肉の繊維をぶちぶちと切り裂きながら、怪物の両肩を砕いた。
骨をえぐるようにばきばきと粉砕しながら、鎖骨をへし折った。
次々と胸骨を斬り割り、遂には腰骨を割り、股関節を貫いた。
牛頭の怪物は三枚におろされ、どっと崩れ落ちた。
「ああぁっぁぁああ嗚呼嗚呼あぁぁあぁぁ嗚呼嗚呼嗚呼あッ!」
大剣は地面を切り付け、それでもなお止まらず、男は再び跳躍した。
螺旋を描くようにしゅるしゅると上空を舞い、そして今度は蛸の化け物へと襲い掛かった。
何が起こったのか、ガーンズバックにもわからなかった。
だが、これが千載一遇のチャンスであることだけはわかった。
「走れッ! 全員こっちに向かって走れッ!」
我に返ったガーンズバックは立ち上がると、生き残った者たちに檄を飛ばし、
すぐさま退去させ始めた。
「GuGAAAaaaaaaaAAAAAAAaa!」
再び咆哮が響き渡る。
ガーンズバックが目をやると、晴れ始めた霧の中で黄金色の光が見えた。
男は落ち武者のごときざんばら髪を振り乱し、巨大な二対の大剣を手に、
異形の怪物たちと互角以上に渡り合っていた。
速い。
その動きは尋常ではない速さだった。
怪物たちの攻撃を易々とかわし、信じがたい跳躍で上空に舞い、
化け物の頭上から二対の剣を打ち下ろす。
ぱっくりと怪物の頭が四つに割られ、緑色の体液を噴出させる。
また一体。
また一体。
次々と怪物たちが倒されていく。
その姿を見て、怯え切っていた住民たちからどっと歓喜の叫びが放たれた。
怪物たちが一斉に引き上げていく。
助かった…。
助かったのだ……。
ガーンズバックは呆然とその事実を見つめた。
信じがたいことだった。
あれほどの絶望が、あれほどの凄惨な殺戮が、たったのひとりの男の登場で、
すべて覆ったのだ。
いっそすべてが悪夢のような出来事だった。
その悪夢のあとに残ったのは、半裸の男ひとりだった。
禁呪から溢れていた光は徐々に消え、それにともなって禁呪自体もその姿を消していた。
そのせいか、殺気に満ちた男の精悍さは影を潜め、そこには頭頂部は薄く、
目は落ち窪み、腹がぽっこりと膨れた中年の男が立っていた。
決して見栄えのいい男ではない。
だが、その男によって、ガーンズバックたちが救われてたのは事実だった。
思わず駆け寄ったガーンズバックは、その前にひざまずき、言った。
「私はミュンヒハウゼンの将軍、ガーンズバック・バウンド。
あなた様のお陰で助けられました。ぜひお名前を窺わせて下さい」
「………」
男は黙りこくったまま、呆然と立っている。
目は淀み、口の端からは泡が吹いていた。
禁呪の影響に違いない。
魔を駆逐するため、より強大な魔となったか…。
それを思うと、ガーンズバックの心中は複雑だった。
「……ターザン…」
「…なんと?」
「……オレ、ターザン……ひゃ! ひゃひゃひゃ!」
そう言いながら、男は踵を返し、いずこともなく去っていった。
「ターザン……ありがとう…」
ガーンズバックはひとり呟いた。

「…そうして我がバウンド王国が建設された」
「ってターザンかよッ!」
ムーア将軍の話に思わず叫ぶサダハルだったのだった。

 


第13話
投稿者/氏照

 
ここは第1階層パート6の21階。
ゴブリン火の玉中隊所属のゴブ造・ゴブ吉・ゴブ郎・ゴブ衛門は
今日も訓練をサボってなじみの喫茶店でだべっていた。
彼らの最近の話題といえばもっぱら『アイドル勇者』についてである。
アイドル勇者というのはいわゆる美少女、美少年の冒険者たちのことだ。
冒険者として活動もするのだが、基本的には芸能活動に従事している。
昨今の冒険ブームの中、人間界側からも魔界側からも大きく注目を浴びている。
火の玉中隊所属のこの4人のゴブリン達も今度行われるライブイベント、
すなわちアイドル勇者ユニット『スマイル+3』のチケットをどうするかの相談をしているのであった。
「やっぱりあの話、受けるしかないか……」
「とゆーと、ゴブ造氏、あの族長たちが行っていたあの依頼でござるか」
「イヤイヤ、ゴブ吉氏、あの話は無謀すぎやしないでござるか?」
「ゴブ衛門氏、こんなチャンス二度とないかもしれないでござるよ?」
「確かに。ゴブ郎氏もそう思うでござろう?」
「やはりそれしかないでござるな」
そう、族長たちの依頼とは悪夢のヘルハウンド『マジナイ』の討伐。
そして得られる報酬は『スマイル+3 サマーライブ』のSS席チケット。
極上のプラチナチケットである。
「もはや我らに選択肢はないでござるな、おのおのがた覚悟されよ」
こうして、4人のゴブリンの戦いが始まったのであった。

つづく

 

第14話
投稿者/ピヴィ

 
さて、やっと再開だな…


「まずは、船にのらなぁなるめぇよ。皆の衆」
ゴブ造はやや高い台の上にのって始める。
「なぜ船なのだい? ゴブ造氏」
「そう、なぜなのだい?」
「いや、そのまえに、なぜゴブ造氏が仕切っているのだい?」
ゴブ吉、ゴブ郎、ゴブ衛門が続く。

「それはだな、冒険とはロマンなのだよ。諸君」
ゴブ造はそれを受けて続けた。
「ロマンは大事なんだな」
「そう、ロマンは大事だな」
「だが、リーダーも大事でござる」
ゴブ吉、ゴブ郎、ゴブ衛門はさらに続けた。

「そう、ではまず船を探そう。
それから4人殴り合ってリーダーを決めようではないか。同士よ」
ゴブ造はなおも続けた。
「それがいいですな」
「そう、それがいい」
「やはり、リーダーは殴り合いで決めるべきでござるな」
ゴブ吉、ゴブ郎、ゴブ衛門は納得した。

次回、そういうことになったのでよろしく!の巻。
つづけ!

 

第15話
投稿者/ベガ

 
「だったらあたいも混ぜなよ小僧ども」
そこへぬっと現れたのは、ヒルジャイアント級ヒロイン、蛮子さまだった。
「き、貴様! なんでござるか!」
「船に女子を乗せるわけにはいかないという掟が昔からあるのを知らな」
「ハァッ!」
蛮子の巨岩のごときげんこつがゴブ造を粉砕し、地面にべっこりと穴をあけた。
「ひ、ひぃ!」
慌てて逃げ惑うゴブリンたち。
その首根っこを掴み、吊り上げる。
「さてもうひとり潰しとくかね」
にたり蛮子が笑う。
「ま、待つでござる!」
「何故このような狼藉を!?」
「決まってるじゃあないか。あたいらも、そのアイドルとやらを拝みに行くの、さ!」
「げぼぉお!」
捕まえ切れなかったゴブ郎をカカトで踏み潰し、蛮子が言った。
「坊や! 船を用意しな」
「は、はい…」
岩陰で小さくなっていた勇者の少年が、震える声で答える。
「今夜はいい月夜だ…派手に行くぜ!」
蛮子の咆哮が響いた。

なんとゾンビになってしまった係長に憑いていた蛮子は、
満月のときだけ元の姿に戻ることができるのだった!

次回「アイドル@スター蛮子 スタア誕生」の巻!
お楽しみに!
 

 

 第16話
投稿者/氏照

 
満月になると係長になるのであって
  それ以外のときは蛮子(アンデッド)なんだよ≠フ巻

相変わらず蛮子の従者と化しているサダオがゆっくりと船を出す。
ここは広大な地下湖につながる地下の河川の一つ。
カンテラがぼんやりと船を照らすが先は全く見えない。
とは言え、ゴブリン達は暗視があるから航行に支障はない。
すでにゴブ造とゴブ彦を失った彼らはおとなしく蛮子に従うしかなかった。
「いやーサダオ氏、お若いのに大変でござるなぁ」
「全くでござる。あのような化け物女に仕えているとは。
主人はよく選ぶものでござるよ?」
「はあ、そうですね……」
四人を乗せた船は暗闇の中を静かに進んでいく。
そして、それを見つめるものが水中にいた。
河マーマンの辰夫である。
辰夫はマジナイの私兵で、偵察水隊の隊長の一人だ。
ゴブリン達の動きを察知したマジナイ派によって派遣されていたのである。
辰夫は念話無線機を用い、司令部へと蛮子たちの動きを知らせる。
司令部の副官、ダークエルフの須藤はその報を受け、すぐに指令を出す。
「マーマン水雷部隊はこの3か所に機雷を設置、第3水偵隊はそのまま目標を追尾せよ!」
やがて蛮子とサダオ達の行く手に機雷原が待ち受けるのであった。

つづく
 

 

第17話
投稿者/ピヴィ

 
ズドガーン!

轟音と閃光、そして炎がサダオたちを乗せた船を包んだ。
「な、なんでござるますか!」
「うわぁなんだな!」
あわてるゴブ吉とゴブ衛門。
「わぁ〜た、たすけてくれぇ」
激しく船が揺れ、船縁にサダオがしがみついている。
船首には、大地をしっかと踏みしめ微動だにしない蛮子が仁王立ちをしていた。
「ふん、この程度の機雷でこの蛮子様が沈むと思うな」
そういうと、船首から身を乗り出し口を水面に近づける。
ずずずずずずず…
すごい勢いで蛮子は川の水を飲み始めた。
それとともに川面に浮かぶ機雷が蛮子に口に飲み込まれていく。
ゾンビだからといって、蛮子の体から水があふれ出すことはない。
はたして、その体型に変化はなく水はどこへ行ったのか。
その強烈な筋力によって押し固められ微小な物へと圧縮されたのか。
辺りの水を全て飲み干す蛮子。
ピチピチと干上がった川底に河マーマンの辰夫率いるマーマン部隊が
地面に放り出された金魚のようにのたうっていた。
「な、なんだあの化け物は」
「あんなヒロイン見たこと無いぞ!!」
「しかもブサイ…」クシャッ!
おびえるマーマンたち。
蛮子は船首に背を向けて立ち上がる。
そのまま体をかがめると「ふんっ!」
一息気張る。
その瞬間、圧縮されたガス…もとい、水と、機雷の爆破エネルギーが
蛮子の尻から一気に放出される。
その威力は、川底を吹き飛ばし辰夫たちを吹き飛ばし
さらには一行を乗せた船をも吹き飛ばした。

どこかで見たような光景の空飛ぶ船と化した一行は
一体どこへ向かうのか、それは蛮子のお尻しか知らないのであった。


つづく。
 
 
第18話
投稿者/超適当ベガ
投稿日/2007年12月8日(土)02:44
 
いや違う。アンデットになったのはあくまで係長で、
そのときライカンスロープの特性が反転し「蛮子憑き」になった係長が満月の晩、
蛮子へと変身するのだッ!≠フ巻


一方そのころ、アイドル勇者ユニット『スマイル+3』は今宵もライブハウスで絶賛活動中であった。
ハコは小規模だが満員御礼。熱気に満ちたファンたちによってライブハウスは大盛り上がりである。
まだまだ全国区では知名度に劣るスマイル+3だが、
デビューシングル「人生KICK OUT」の売り上げも上々であり、
いよいよ明日はデビュー以来の悲願だった「真冬のサマーライブ」が行われる。
今宵のライブはその前夜祭として、コアファンたちとの決起集会の様相を呈しているのであった。
「みんなー! 盛り上がってるー!」
女勇者兼リーダーの「ああああ」が観客にマイクを向ける。
一斉にファンたちのボルテージが上がる。
それに呼応するように、女戦士兼ベース担当の「だだだだ」が汗に濡れた髪を振り乱し、
愛用のツインベースオブブレイドをかきむしる。
さらにどっと沸く観客たち。
バンドのマスコット兼ケルベロス犬の「ゲルゲル」もわんわん吠える。
まさにライブハウスは熱気と興奮のるつぼと化していた。
と、そのときだった。
凄まじい轟音と共にライブハウスの天井が潰れ、大量の土砂と砂煙を舞い散らしながら、
船が突っ込んできたのは。
その船首には、これ以上はないほどに凛々しく引き締まった臀部が、
これほどまでの威風堂々たるさまは他にはなかろうと言わんばかりの英傑ぜんとした態度で、
でんと鎮座しているのだった。

つづく