| 愛しい君が生まれた日 |
| …強く在りなさい、江流。自分も他人をも信じきれるほど強く… 「!」 ハッとして目覚めると、そこには古惚けた天井があった。 「ちっ」 久しぶりに見た夢のせいで眠気が消えてしまった三蔵は、煙草を取り出し 火をつける。そして煙を吐き出しながら、今見た夢を思い出していた。 『雨も降ってないのに何故…』 そんな事を取りとめもなく考える。原因はなんとなく解っている。 多分…昼間のたわいのない出来事。 煙草を切らしてしまった三蔵は仕方なく買いに行こうと部屋をでた。 廊下を歩いて食堂に行くと八戒、悟浄、悟空の三人が集まっていた。 三人は、三蔵の顔を見た途端、悪戯を見つかった子供のように顔を見合わせ そして直ぐ視線を逸らせた。 「何やってんだ。何かやましい事のありそうな態度だな」 そう言いながら一人ずつ順番に顔を見ていく。 やはり、こう言う時真っ先に顔に出るのは悟空だ。じっと見つめるとすぐに 目が泳ぎだし、そわそわと落ち着かなくなった。 「悟空。何隠してるんだ?」 「えっ!あ、あのー、その…」 悟空の脳みそでは、とっさの言い訳も思い付かないのかしどろもどろになる。 更に畳みかけようとした、その時に横から割って入る人物がいた。 「そんなに、悟空を責めちゃ可哀想ですよ」 八戒である。三蔵はこの男を仲間内で一番信頼してる反面、苦手でもあった。 いつも物柔らかな笑顔を湛えているが、捉えどころのないクセ者だから。 「何隠してるのか聞いてるだけだ」 三蔵のキツい視線をものともせず、相変わらずにこやかに答える。 「やだなあ。別に隠し事なんてないですよ。三蔵の噂してたら、本人が現れたんで ビックリしただけですよ。」 「俺の噂?」 「そう。三蔵が凄い美人だって。ね?悟浄♪」 笑顔でさらっととんでもない事を言う。振られた悟浄も一瞬面食らった表情をしたが すぐに調子をあわせて、相槌を打つ。 「そうそう♪三蔵、超美人だもんな〜。一度お願いした…」 スパーンッ! この手の冗談が大嫌いな三蔵のハリセンが悟浄の頭にクリーンヒットする。 「いってー、冗談じゃんか!」 「やかましいっ」 「三蔵に何かしたら、俺がゆるさねえぞ!このエロ河童!!」 「何ぃ〜。やるか、このバカ猿!!」 と、結局最後にはいつもの馬鹿二匹の大騒ぎになってしまい、 話はうやむやに終わった のだった。 それでも、三人は何か隠している。それだけは間違いなかった。 『ふんっ。あんな馬鹿どものやる事なんか俺が知るか』 そう割りきったつもりでも、何故か心が苛立つのを押さえることが出来なかった。 自分は一人でも強く在る。そう師匠に誓ってその通りに生きてきた筈だ。 それでも、決して長くはない時間を過ごして来た彼らにいつのまにか心を許していた のだろうか。自問自答を繰り返しているうちに外は白々と空けていった。 コンッコンッ。 少しうつらうつらと眠ってしまったのだろうか、ドアをノックする音で、三蔵は目を 覚ました。 「三蔵。起きてますか?」 八戒だった。昨夜取りとめなく考えていた事を知られるわけでもないのに、気まずさが 一瞬三蔵の頭をよぎり、それを苦々しく思いながら三蔵は返事を返した。 「朝、早くからすみません。ちょっと三蔵に一緒に来て頂きたいんです」 「?何処へだ?」 不機嫌な顔を隠そうともせず三蔵が問い返す。その様子を見て苦笑しながら、 八戒は更に促す。 「まあまあ、付いて来たら解りますよ♪」 八戒の口車に乗せられた様で、不愉快だが仕方がない。舌打ちしつつ三蔵は付いて行く 事にした。 八戒が案内したのは、昨日の食堂であった。 中ヘと促されて入って行くと、そこには 悟浄と、半分眠った様な悟空が居た。 「人を呼び出して何の集まりだ?」 テーブルに所狭しと並べられた料理の数々を見回しながら、不機嫌を隠そうともせず 三蔵が言い放つ。 「何って…オマエまだ気ぃ付いてねえの?」 あきれた様に悟浄に言われ、ムッとした三蔵は矛先を悟浄に向ける。 「だから、何がだっ!」 今までのイライラをぶつけるかの様に更に三蔵が言葉を発しようとしたその時、 「今日、三蔵の誕生日じゃん…」 眠っていたかの様だった悟空がポツリとそう言った。 「あ…」 きれいさっぱり忘れていた。それじゃあ、この料理は… バレない様に準備するのに苦労したと笑う彼らの顔を三蔵は見る事が出来なかった。 自分の一人相撲だったのだ。腹を立てたり、イライラしたり。 『強い人間と言うのはね、自分も他人をも信じ続ける事が出来る人の事を言うんですよ』 だから、強い人間になれ──そう師匠は言った。 自分はまだまだ弱いのかも知れない。それでも─── 強くなれる。こいつらと居れば。きっと… 「三蔵!何してんだよ。腹へったから早く喰おうぜっ」 「…やかましいっこのバカ猿!待てが覚えられんのか!!」 だから、今はこいつらを信じてみてもいいか── そう口には出さず思いながら、三蔵は彼らの方へ一歩踏み出した。 ──誕生日おめでとう、愛しい君。どうか君に幸在れ── END |
| 何となく三蔵の誕生日の風景を書いてみたかっただけ・・・ でも、支離滅裂になっちゃった(T_T)三蔵弱々しいし・・・ まあ、たまにはこんなのがあってもいいですよね。 |