| 『Slight Fever』 by榊原紫織さま |
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手塚が熱を出した、理由は簡単 雨の中、傘もささずにいたからだ。 余りにも、アイツが切羽詰まったような瞳をしてて…。 +++++ +++++ +++++ +++++ +++++ 「すまない、タオルを…」 帰って来て第一声、少しばかり焦ったような口調で海之が言った。 何故なら、今は皆出掛けていて 店には蓮しかいないからだ。 「お前…傘くらい持って行け」 蓮は呆れたような溜息をつきながらも、少しばかり大きめのタオルを手渡した。 しかし、身体を拭く為に渡したタオルで在ろう事か海之は子猫を包み込んだ。 しかも 心底安心したように、ホッと吐息を吐きながらだ。 「おい、自分を拭け、自分を!」 てっきり、自分の身体を拭く為にタオルを要求したのだと思っていた蓮は焦る。 キョトンッとしたような瞳を向けられて、驚いたのは蓮の方だった。 「あ…」 意表をついた海之の表情に固まってしまっている蓮に、海之の声が届いた。 ----- が。 「秋山、温かい…いや、ぬるめのミルクが欲しいんだが…」 そう言った海之の言葉に、蓮が脱力してしまったのは言うまでも無い。 大事そうに子猫を抱えている海之に、縋るような視線を向けられて溜息をつく。 それ程までに、ギャップが大き過ぎた…今の海之は。 「判った…判ったから、早く風呂に入って来い!」 ガシガシと頭をかき、苦虫を噛み潰したような表情をしながらも蓮が言った。 「すまない…」 そんな蓮の言葉に、迷惑かけた事に気を悪くしたのだと思い小さな声で謝る。 「気にするな、風邪をひくから早く行け」 海之の腕の中から、タオルに包まれた子猫を受取り 蓮は深い溜息をつく。 それでも、チラチラと蓮を振り返りながら 海之は風呂場へと姿を消した。 「…………ったく、しょうがない奴だ」 その背中を見送りながら、小さな声で呟いて蓮が苦笑いを浮かべる。 「お前も、そう思うか?」 余りにタイミング良く聞こえた鳴き声に、ククッと小さく笑って蓮が呟いた。 火にかけた鍋を気にしながら、机の上の子猫の姿を伺う。 どうやら、自分が着ていたジャケットで海之がガードしていたらしい。 「何を考えてるんだか…アイツは」 温めにしたミルクを皿にいれ出してやると、子猫は美味しそうにペロペロと舐めていた。 どうして、自分の事を後回しにしてしまうのだろうか…。 「何時も そうだな…そういえば」 まるで自分の事などは、どうでもいい…そんな風に思えて、蓮は溜息混じりに呟く。 拒絶してるにも関わらず、海之は蓮の後をついてくる。 最初は嫌で嫌で仕方が無かった、海之の何もかも見透かすような あの黒曜石の瞳。 自分の中の変化に、戸惑う反面……何処か、心が満たされたような気がする。 「ちょっと…悔しいしな」 一心不乱にミルクを飲んでいる子猫の頭を、優しく撫でながら そう呟く。 「何が、悔しいんだ?」 不意に聞こえた そんな声に、蓮は 激しく驚いて振り返る。 蓮の動揺が、手に取るように判る。 「ど、どうしたんだ?秋山………」 明らかに変な蓮の態度に、訝しげな表情を浮かべながら海之が問いかけた。 白い頬が紅潮している所を見ると、風呂から上がって来たばかりらしい。 「何でも無い」 ジッと何かを探るような視線を向けられて、蓮が憮然と答えを返す。 「そうは、見えないんだが…」 現に、その言葉を向けられた相手である海之は 訝しげな表情を浮かべたまま。 「そんな事より、ちゃんと温まって来たんだろうな」 鈍感な海之に感謝しながら、サラリと話を変えるように蓮が言った。 そして、机の上で未だミルクを飲んでいる子猫に近付き その姿を見つめた。 風呂上がりの温かい海之の手に、気持ち良さそうに身体を擦り寄せる。 ジーッと子猫がミルクを飲むのを見つめている海之の前に、カップが置かれた。 「飲め」 不思議そうな表情で、カップを見つめている海之に頭の上から声が降る。 「すまない」 自分の為に用意されたカップを両手で包み込みながら、礼を言う。 そして、そんな些細な海之の表情が 蓮の心を満たしていく。 椅子に座って子猫を見つめながら、蓮が煎れたカフェオレを口に運ぶ。 「お前、慌てて出て来ただろう…」 気の無いフリをしながら、海之の背中を見つめていた蓮が不機嫌そうに呟いた。 「え…?」 そんな蓮の咎めるような口調に、ギクッとしたような声を海之があげる。 「っっっ!あ、秋山っ!?何をっ…」 自分の真後ろに蓮の気配を感じた瞬間に、目の前が真っ暗になって驚く。 「ちょっ…じ、自分で出来るからっ…よせっ!」 手に持っていたカップを置き、慌てたような声で言いながら海之が身を捩る。 「五月蝿い、ジッとしてろ」 暴れようとする海之に、蓮は 何時もの低い口調のままで言った。 何を言っても無駄だと感じたのか、暫くすると海之は大人しくなった。 後ろからで表情は見えないが、海之が照れているのは判った。 「終わったぞ」 そう短く言って、海之の頭を覆っていたタオルを取り払う。 蓮の顔を見る事無く呟かれたのは、未だ照れているのであろう。 まさか、首まで赤くなっているとは想像もしてない海之だった。 「何を、照れてるんだ?」 そんな海之を背中から抱き締めながら、蓮が耳元に囁くように言う。 どうやら、蓮は 海之を揶揄って遊ぶ事を決めたようだ。 「べ、別に…て、照れてなんか…」 そんな蓮の心のウチなどに気付いて無い海之は、少しばかり焦ったような声で答える。 本人は、全く気付いては いなかった。 「ほぅ、そうか…」 蓮は海之の濡れた髪に 耳に 首筋に…と、口付けを降らせてゆく。 「っ!」 海之は思わず出そうになった声を噛み殺し、身体を震わせた。 「何だ?」 ムッとしたような表情で睨んでいる海之に、面白そうな目で見つめ言う。 「………」 蓮の言葉に眉間に皺を刻み、暫く海之だったが 不意に笑みを浮かべた。 それは、近くにいる筈の蓮ですら、見落としてしまう程の笑みだった。 「…手塚?」 少し揶揄い過ぎたかと思った蓮は、覗き込むように海之を見る。 そして、クルリと椅子を回転させ蓮を正面から ジッと見つめる。 ゆっくりと自分の頬に伸ばされる白い腕が、まるでスローモーションに見えた。 「手塚……」 その表情に思いのほかドキリとさせられて、ゴクリと喉を鳴らしていた。 「秋山…」 うっとりとた声で蓮を呼びながら、海之は その唇に触れる程に彼を引き寄せる。 それが合図であるかのように、蓮が口付けようとした途端。 「たっだいまーーー♪」 チリリンッと扉が開く音と同時に、真司の心底明るい声が店に響き渡る。 「あれ?何やってんだよ…蓮」 独り取り残されてしまったのは、蓮…真司の訝しげな言葉に軽く睨みをきかせる。 もうすぐ真司が帰って来るのを知っていて、海之が仕掛けた悪戯だと気付いたのだ。 「後で、覚えておけよ……」 机の上の子猫を抱き上げて、歓声をあげている真司を見ている海之に呟く。 「…多分、秋山の思う通りにはならないぞ」 ジッと蓮の不満そうな瞳を見つめながら、クスリと笑みを浮かべ海之が言った。 理由はと言えば…風邪をひいた海之が、個室に移り隔離されてしまったからだった。 |
| 榊原紫織さんの海之ちゃんサイト『機械∞堕天』でキリリクGETした蓮海vv 紫織さんの書かれる海之ちゃんと蓮の大ファンなワタクシもう狂喜乱舞でございました。 このお話をUPしたいがために海之部屋を作ったと言っても過言ではありません!(きっぱり) その素敵なお話の中の一転のシミみたいなヘボい絵…(汗) あああッ紫織さんファンの皆様、石投げないでくださいッ(>_<)すんまそんすんまそん。 つ、ついお話読んで描きたくなっちゃったもんで。 紫織さん素敵な蓮海のお礼がこんなヘボい絵でごめんなさい…。でもホントにアリガトーございました。 |