| SPECIAL MISSION SS - 04 アージ
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疾風機士団領の機士寮に併設する食堂。ここは領内の飲食店とは違い、機士ならばほぼ無料に近い値段で定食などの結構なものが食べられる所として、機士からは重宝がられていた。その食堂の片隅でアージは鯖味噌煮定食に箸をつけていた。同僚に和食の中でもっともポピュラーなものとして紹介されて以来、和食といったらこれくらいしかない。というか、正確なところはこの食堂の鯖味噌煮は味に癖がありすぎて何時も残ってるので競争しなくて良いから選んでいるのが事実である。 アージにとって食事ほど平和なときは無い。軍人たるもの、それが例えフリーランスが原則の機士といえど常時有事。そこにおいて唯一の休息が食事なのだ。 ただ、今のアージの目の前にはその平和をかき乱す、いわば侵略者とも言える存在が領内のファーストフード店から購入してきたシシカバブを薄いパンで挟んだ物を食べながら一方的に喋っていた。 「だからよ、俺は考えるわけよ。世にはすべからしくして存在するべきものがあるって」 「へぇ」 アージは聞き流す。例え相手が上官だろうが、食事中は別だ。 「つまりだ、それを世の真理とするならば、これ、必然的だとは思わないか」 と先から意味不明なことを口走りながらロバートはパンを口に運んだ。 「思いません」 「何故?」 「ワンセンテンスで答えられます」 「よし、答えてみろ。無理なら懲罰だ」 アージはそこで湯飲みのお茶を一気に飲んだ。お茶は熱い奴を一気に飲むに限る。 「ナンセンスです」 「たぁ、センスが無いとまで言うかぁ」 アージは食事を続けながら喋る。物を食べながらもどもることなく喋ることができるのは密かなアージの特技だ。 「当然です。最近、機士団内に精神論者とか沸いてますけど、隊長もそのクチなんですか?」 「ま、さ、か」 大げさに言うロバートを尻目に鯖を食べる。 「まぁ、あれだよ俺達にぴったりなバイトがあるってことさ」 アージはその言葉の一部に引っかかり箸を止めた。 「俺達?」 「おう。お前、最近金が無いつってたじゃないか。ここらで一発ガツンと稼ごうぜ?」 「それは上官命令ですか?」 「いんや。こえはまだ機士団向けのサイトに出てないもんだから、知ってるのは個人機士連中ぐらいさ」 「じゃぁ、機士団のサポートは無し?」 「当然。だけどそんなへヴィーなミッションじゃないって。とりあえず、やるなら今日中に連絡くれよな」 ロバートはそう言うと、定食の沢庵を小皿ごと奪い取り、ざっと口に流し込むと小皿を盆に帰しながら席を立った。アージは小皿を名残惜しそうに見つめながらロバートに声をかけた。 「なんで俺をご指名に?」 「決まってるだろ」 ロバートは振り向きもせず、片手を振って答えた。 「暇そうだからさ」 「間も無く企業連公安部実行隊が現地入りしてるって話だ。もともと兵力の無い施設に強襲だから容易に制圧はできるだろうが、問題はその後だな。敵の救援部隊が来たとき用の露払いが要るって訳さ」 「つまり、脱出援護ですね」 アージは無線で別の揚陸船に乗っているロバートに伝えた。 アージは何時もの機体に若干の索敵システムを付加させていた。防衛戦となると、ここの索敵能力も必要となりこれはかなり戦局を左右するものになる。 「10カウントで接岸。脱出支援隊が出撃するから、彼らが戻るまで本船の警護を頼む」 「了解」 船長から通信が入る。 まもなく接岸する西日本領海上にある孤島では国機連の秘密研究所があり、企業連はその施設制圧に部隊を出したのだ。本来なら厳重な警備に守られているはずなのだが、ちょっと前にあった大規模な戦闘の影響で兵力が著しく低下した国機連は各研究所を次々に閉鎖し件の施設はその閉鎖準備中だったために警備が手薄だったのだ。企業連はこの施設から国機連本部の位置を割り出そうと考えているらしい。 強い振動が伝わると正面のゲートが開き、次々に戦闘車両が島に乗り込んでいった。アージはその後からついて行く。島はそんなに広くは無いのだが、施設は地下へ伸びているのだそうだ。そこで小型BSで施設を攻略することになり、車両は全てその支援だ。 「レッド、ブルーチームは施設に向かえ!イエローは港湾部だ!」 部隊指令を兼ねている船長が指示を下す。 「ブラボー接岸。ミッションを開始する」 もう一隻の揚陸艦が反対側から接岸したようだ。帰りはこの二隻に小型BSと施設から押収した資料が山ほど積載するはずだ。 「戦闘はあらかた終わったようだな」 ロバートの通信でアージは気がついた。銃声が一つもしない。この手のミッションにつき物の爆音等も一切しない。あえて上げるなら、耳鳴りくらいか。波が船体に当たってはじける音にまぎれ、かすかに耳の奥でジーンと音がする。 「ロバートさん」 「ん?」 「なんか耳鳴りのようなものしませんか?」 「奇遇だな。俺もだ。どうせモニターがやばいんだろ。叩きゃなおるって」 そんな馬鹿なといいつつ、とりあえずモニターの横を叩いてみるアージ。しかし耳鳴りはやまない。確かに古いモニター等は耳鳴りなどの現象みたいなのを引き起こすが、あれは単純にモニターが発する音だ。耳鳴りなどではない。 ざっと回りを確認するが丘の上にある施設ぐらいしか目に付くものは無い。センサーを使い調べてみるが、これといった特殊な反応は無くあえて言うなら振動石を発電させた時に微量に発生するある種の放射能が検出できたぐらいだ。放射能といってもかなり微弱なもので、これが人体に影響を及ぼすことは未だに確認されていない。 「ちょっと気になるな」 アージの疑問は尤もである。その放射能は元々微弱な上に、振動石のユニットの遮断装置によって外部へ漏れることはまず無い。残りの可能性としては、振動石の鉱山の存在だがこんな小島に有るはずが無い。振動石は地球古来のもではなく、隕石によって宇宙よりもたらされた物というのが定説である。すると近辺にクレーターなどの存在が確認されないといけないのだがそんなものは無い。 「船長、船の警備戦力は俺だけか?」 「いや、歩兵戦力が若干だが・・・おい、如何する気だ?」 「ちょっと施設の様子を見てくる」 おれはゆっくりと目を開けた。強い光が目を刺激する。だが目が慣れてくると、それは安心感を十分すぎるくらいにもった太陽の光だとわかった。 背中の芝生が実に気持ちよく俺はもう一度眠りたくなった。 「おーい!・・・!」 俺は名を呼ばれたので体を起こす。向こうから走ってくるのは俺の後輩だ。 「何やってんですか?」 「見て判るだろ。昼寝だ」 後輩は苦笑いを浮かべ、俺の隣に座った。 「いいんですか?こんなトコでさぼってって」 「サボる?とんでもない。これも職務のうちさ」 その言葉に後輩は首をかしげる。 「BSの操縦系はわりかし大雑把そうに見えて、その実は精密作業の連続だ。戦車に比べFCSの類が完全オートマチックになってるといえ、それでもあまるほどの煩雑な操縦系。そこでミスを起こさないためには十分な休息が必要なのだ」 「そんなもんですかぁ?」 「モノは言いようだ。実のところ、サボってるだけなんだ」 俺の言葉に後輩は笑い、俺もそれにつられて笑い出した。軍隊で、しかも一応は有事なのに平和すぎるこの日常。俺はその継続を望んでいた。 おれはゆっくりと目を開けた。正面のモニターには俺のBSの手が写っていた。その手は真っ赤に濡れていて血でも被った様だった。いや、そんな馬鹿なことは無い。これは人工筋肉の保存液だ。保存液は酸化すると赤くなる性質がある。きっとそれだ。 俺の意識がだんだんはっきりしてくる。すると何か嫌な予感が俺の中に広がってくる。その赤い手を振り払い、地面を見る。そこには無残に胸部が破壊され、そこから赤い液体が漏れていた。そしてその肩には見慣れた部隊マークと、個人票が付いていた。 俺は絶叫した。 おれはものすごい勢いで体を起こした。とんでもない悪夢だ。体は汗ばみ、髪も汗にまみれものすごく不快だ。 周りを見渡すと見慣れたパイプベットが四つ。すでにここに駐屯してから一週間以上になる。ここはその間の宿舎だ。 上層部から新型機体のトライアルにテストパイロットとして加わるように辞令が下り、俺を含めたった四人の部隊はさる企業の極秘施設に来たのだ。施設は市街地のど真ん中にあり、その地下が試験場だ。市街地に設置することにより他企業などが工作しにくくしているのだ。 ドアが開く音がして、俺がそっちをみると後輩が立っていた。 「寝坊ですよ、・・・先輩」 「ん、ああ」 なんだ後輩の顔に違和感を感じる。 「みんな先に行っちゃいましたよ」 おかしい。なんだこの違和感は。 「大丈夫ですか?すごい汗ですよ」 「やめろ!」 心配し俺の肩に手を置こうとした後輩の手を俺は振り払った。手を叩かれ、後輩はその手を庇うように佇むと俺を睨んだ。 「そうやって、また僕を拒絶するんですね」 「おい、何をいって・・・」 俺は後輩の異変に気がついた。泣いているのだ。 「僕は先輩に憧れていました。先輩も気がついていたはずです」 その涙が赤くなった。血の涙だ。 「なのに・・・なのに・・・」 後輩は肩を震わし、血の涙はとめどなく床に滴り落ちた。俺は大声で助けを呼ぼうとしたが、声が出ず身動きすらも取れなかった。金縛り?馬鹿な。 「どうして僕を殺したんですか!?」 その言葉をきっかけに俺の頭に猛烈な勢いで記憶が蘇り、フラッシュバックする。 暴走するBS。エレベーターを使い市街地へ逃げようとする暴走BS。とめようとして次々に破壊される同僚のBS。俺の抜き手。暴走BSの胸部に突き刺さる右腕。噴出す保存液。そして赤い雫。 俺は絶叫した。 俺はもの凄い勢いで体を起こした。いや、覚醒した。辺りは暗く、おれは宙に浮いているような感覚を感じていた。 裸の俺は妙な寒気を感じていた。寒さに身震いすると正面に光が広がった。俺がその光を凝視すると、そこから一人の男が現れた。 「・・・」 俺は後輩の名を呼んだ。後輩の目元には赤い筋が通っていた。 「痛かったんですよ。モニターに胸を潰されて、フットペダルが脚を潰して。でもね一番辛いの痛みじゃなかったんだ」 後輩は自分の胸に爪を立てたのか、胸からも血が滴る。 「仲間を次々に自分の手で殺し、最後は先輩に殺された。辛いのは運命なんですよ」 「ふざけんじゃない!」 俺の言葉に後輩は驚いた顔をした。本当のところ、俺も驚いた。 「ふざけては居ませんよ。こんな最悪の事態を引き起こして・・・僕は何のために部隊に入ったんですか?味方を殺し、挙句の果てには味方に殺されるためなんですか?」 これは夢だ!こんな現実があっていい筈がない! 「優しかった皆を殺し!憧れていた人に殺される!こんな不条理を運命といわずしてなんと言うんですか!!」 これは夢なんだ!! 俺はコクピットの中で目覚めた。服は汗をたらふく吸い込んで汗ばんでいた。だが、不思議と不快感はなかった。 「・・・ふぅ、なんて夢だ」 額の汗をぬぐうと重い息をつく。確かにあいつを殺すのは仕方がないことだった。実験機はダメージが加算されても戦闘能力を失わないように中枢を全て胴部に集中させていたのだ。それに暴走の原因が人工筋肉へのパルス接続の失敗。つまりコンピューター異常であるから中枢を破壊しなくてはいけない。これ以上ないくらいのどうしようもない状況。どつぼって奴だ。 最悪は重なるもので、実験は試験用のパルスレーザー砲を装備していた。短波レーザーをマシンガンのように連射する兵器だ。射程が短い上に、連射可能時間が短いのが欠点だが弾数はほぼ無限。つまり、装備機体を破壊せねば兵装の無力化も出来ない最悪の状況だった。 俺はずたぼろになりながらも、右腕を潰す勢いで必殺の抜き手を実験機の胸部に叩き込んだ。右腕はおしゃかになってしまったが、実験機の胸部は完全に破壊できた。無論、中のパイロットがあれでは無事で済む筈がなかった。 「忘れたはずなんだがな」 操縦レバーから手を離し額をおさえる。ん・・・なんだこの違和感は。 俺はゆっくりと周りを見回した。見慣れたコクピット内の風景に疲れきった俺。 「なんだ、こいつぁ」 正面のモニターにメッセージが流れる。音声通信が何かの事情で規制されている時に使用するチャットウィンドウにメッセージが流れ出したのだが、それは俺の頭をがつんと揺さぶった。 [僕は機体を止めようとがんばったんです。でもだめで・・・・] [助けてもらおうと通信しても誰も応答してくれず・・・] [先輩がボロボロになりながらも僕のところへ来たときは助かるんだと思いました・・・] [でも僕は殺されました] [あなたに僕の絶望が判りますか?] [あなたに僕の絶望が判りますか?] [あなたに僕の絶望が判りますか?] ・ ・ ・ 最後の行は只管のエンドレス。 「や・・・やめろぉぉぉぉぉぉぉ!!」 俺は震える声で叫んだ。 俺は激痛で目覚めた。自分でも抑えきれないほどの力で身をよじったせいでシートに固定してある左腕の肩の間接が外れたらしい。 「くそったれ」 毒づきながらもう一度激しく身をよじり間接を戻す。その際に激痛がまた走ったが、おかげで意識が一段とクリアになる。すると海岸で聞こえた耳鳴りが一段と大きく聞こえることに気が付いた。 「・・・そういう事か」 俺は無線を企業連の公共ラジオの周波数にあわせると機体の脚を進めた。 俺は施設の屋上にあるスピーカーを見つけると叩き壊した。これが「悪夢」の原因だったんだ。ラジオのボリュームを下げ、耳鳴りがなくなったのを確認すると俺はコクピットの中に置いているブルドックを引っつかみ機体から出て施設の扉をくぐった。 中は地獄絵図だった。企業連兵士と国機連の警備兵や研究員だろうか、無数の人間が苦悶に満ちた顔で床に爪を立て絶命していた。多くは自分の首を絞め、銃で自分の頭を打ち抜いていた。 俺はショットガンを担ぎ、一番奥の扉を蹴破った。中には一人の白衣の男がヘッドフォンを被り、俺の乱入に気が付かずに一心不乱に計器を操作していた。 「無駄だぜ」 俺がそう言いながらブルドックを天井に向かって発砲した。ショットガンの轟音はヘッドフォンをしてても聞こえたようで、白衣の男は慌てて俺の方を見た。 「なっ、何故だ!?何故!?」 「上のスピーカーなら俺が壊したぜ」 その言葉に白衣の男はヘッドフォンを地面に叩きつけた。 「原理は知らねぇが、音で人を操ってんだろ。ちょっと訳ありで気が付いたんだがな」 「っく、その通りだ。ここはな、我が偉大なる国際機密連合の音響兵器開発機関の一つだ」 「音響兵器?」 俺がよほど変な調子で聞いてしまったのだろう。白衣の男は思い切り馬鹿にした表情で俺に言った。 「貴様らの兵器にビーストハウリングというのがあるだろう。我が機関ではそれの発展系の『ナイトメア』の開発に着手していたのだ」 こう言う輩は喋らしておくと勝手にべらべらを秘密を喋ってくれたりするものだ。俺は黙っておくことにした。 「ナイトメアはある種の催眠兵器の上級型と言えよう。ある種の低周波が人に催眠効果をもたらすのは周知の事実!」 知らねぇよ。 「それに余剰効果として、人は睡眠状態に陥るとリラックスした際にα波を発するところに着目した我らは人が尤も不快感を示すという周波帯の低周波を複合させることにより人を催眠させると共に、その人との潜在意識のトラウマを利用した悪夢を見せることが可能というわけだ」 「で、そのスピーカーを俺は壊した」 俺の言葉に白衣の男は懐から拳銃を取り出した。22口径の護身用のモノだろうか。 「そうだ!なんて事をしたんだ。最後の最後に絶好のデータ取りができると思ったのに!」 「手前ぇは鬼か?味方も殺しやがって」 「違う!あれは予想以上の効果だったんだ!人のトラウマは数有れど、潜在意識に追いやられし記憶は尤も人にとって忘れたいもの!つまりはタブーその扉を開けてみれば、そこに有るのは狂気!希望なんてありはしない!」 白衣の男はそう言って自分の眉間に22口径の銃を突きつけた。 「僕にだって予想外だったんだ。何故僕が一人だけここに居ると思う?逃げてきたんだ。ナイトメアで発狂した同僚達からね。研究主任がボタンを押したとき、僕はトイレでサボってたんだ。このウォークマンを利きながら漫画を読みながらね」 「主任はどうした?」 「死んだよ。発狂した仲間にね殺されたんだ。ナイトメアは人を人で無くすんだ。君は助かったようだけどね、一番弄られたくない傷を抉られた人間はどうなるか知ってるかい?人間性を無くすんだ。目覚めても解けぬ悪夢。これがナイトメアとつけられた所以さ」 白衣の男は一筋の涙を流した。と、その瞬間俺は背後から気配を感じて横へ飛びのいた。直後に銃声。白衣の男が崩れ落ちる。 「・・・ははは・・・あははは」 暗闇から笑い声が聞こえてきた。俺は呼吸を整える。ブルドックのグリップを強く握ると通路に飛び出し、一発。笑い声はやんだ。 俺は施設の周りの軍車両などからありったけの爆薬を集めてきた。兵の多くはやはり死んでいるか、発狂しているかだった。その傾向は施設に近づくほど顕著に表れていた。 施設にその爆薬をしかけ爆破した俺は施設のあった丘を下ることにした。途中で発狂した兵達と幾度なくすれ違ったが、彼らはいずれも無心に燃え盛る施設に向かい歩いていて俺にはまったくの無関心だった。 人は発狂し、人でなくなっても何処へ行くというのだろうか・・・ 「すまん!」 帰りの輸送船の上でロバートが両手を合わせて俺に詫びた。なんと、ロバートは異変に気づくどころか待機地点で寝ていたというのだ。起きたのはなんと、俺が施設を爆破した時の轟音で起きたのだそうである。 「しかし、爆破したのは正解だ。依頼内容とちびっと違うけどよ、あんなもんは存在しないほうが世の為だ」 まったくその通りだ。人には触れてはいけない傷や、触れては欲しくないものが絶対ある。それを抉り出す兵器なんてモノは核よりも、どんな生物兵器よりも忌むべきものだ。 あと個人的に俺の過去を穿り出したアレは許せない。奴は死ぬ間際、コンピューターに止めてくれてありがとうと短い文を残していた。どんな事があろうとも、奴が残してくれた思いを俺は不意にしたくはない。 「とりあえずよ、詫びにしばらくは昼飯の面倒見るから。な、許せよ」 ロバートがさらに上半身を前に倒して言う。上官にここまで言われるのも悪くはないものだ。俺はその条件で飲むことにした。するとロバートは笑みを浮かべ、船の縁に腰をかけ背を伸ばした。 「いやぁ、こんなヤバイ山だったとはなぁ、報酬の値上げ交渉をしなきゃな」 「当然です」 俺の言葉にロバートは苦笑いを浮かべた。と、何かに思い当たったのか俺に話し掛けた。 「そういや、俺も悪い夢見たんだけど」 おいおいおい。 SPECIAL MISSION SS - 04 アージ
2002/06/14 掲載 |