ADDITIONAL SS - "METAL SAVERS"(01)

 私の機体の頭部の目が素早く左右に動き、敵を探す。しかし敵は見つからない。さすがに市街地戦闘では目に見えるところにいるような素人はいないって事か。
 素早くカメラを赤外線に切り替え、モーターの出力を上げる。するとカメラが一点の赤い点を見つけた。私は素早く機体を横に滑らせ、赤い点の位置へ誘導ミサイルを打ち込む。案の定、さっきまで私がいたところに砲弾が着弾した。甘い甘い、無誘導兵器で私を仕留めようなんて4万パーセクほど早いんだから。
 私のモニターではミサイルは順調に赤い点・・・相手の射撃のときの火点めがけて飛んでいた。相手は慌てて回避行動をとるが遅い。ミサイルが赤い点に重なり、赤い点が一際大きい点になった。

 ブシュと油圧式の扉が開くと私の目を明かりが刺激した。今まで暗いルーム内でモニターの光だけを見ていたのだから無理もない。にしても・・・
 「あぁ、やっぱ気持ちいいわぁ。圧勝だと♪」
 私が背伸びすると、隣のブースの扉が開いた。
 「・・・機嫌いいわねぇ」
 長い金髪を白子のように真っ白な手でかきあげながら一人の女の子が出てきた。その子は淡いグリーン色の瞳で私をジト目で見た。ふふん、勝った私は余裕だよ。
 「そりゃぁ、そうじゃない。これで23戦22勝一分け。さぁ、次は何をおごってもらおうかなぁ♪」
 「あぁぁぁ!もう、判ったよ。好きなものおごるよ」
 その子は投げやりにそう言うと、ブースの外側に取り付けてあるモニターで今までのゲームを分析し始めた。そう、今までの戦闘は全てゲームなのだ。
 バトル・リング。今でも実際に戦争とかで使われているバトル・シュリンプと呼ばれる大型戦闘兵器の体感型ゲームなのだ。家のゲーム機で育てた機体を使えたり、このゲーセンとかにあるブースを使えば実際に座席がゆれたりとかなり楽しめる。
 「ねぇ、さっきのさどうして判ったの?」
 その言葉に私は同じモニターを覗き込んで答えてあげた。
 「美也ってさ、出力下げて完全に「待ち」だったでしょ?だったらこっちから場所知らせたら攻撃してくるかなって思ったの」
 「でもさ、それだけだったら避けられないじゃない?」
 「こっちは出力をガンガンに上げてたんだよ、弾道兵器くらいだったら射出後にも避けられるよ」
 「・・・そんなもんかなぁ」
 「まぁ、後はパイロットの腕ね」
 金髪の子がまたしても私を睨む。もちろん、私はそ知らぬ顔で分析を続けた。
 「でもなぁ、弾道兵器はやっぱ使えないね。熱溜まるからミサイルを避けきれなかったし」
 「そだね、あれがなかったらかなり不毛な闘いになっていたと思うよ」
 実際に色んな本で読んだところによると市街地戦闘でのゲリラ戦はBSのような大型兵器でも不毛な闘いに陥ることが良く有るそうだ。例えば、弾道兵器やミサイルのような長距離攻撃が出来るものがなければ白兵戦に限定されるわけで、となれば相手にいかにばれずに接近するかが味噌になるわけで、となるとお互いに完全に「待ち」になってしまう。
 「美也はやっぱ攻めの方がいいんじゃない? 動いてるほうがぜんぜんデータいいよ」
 私がモニターに表示されている数字を指差すと美也は唸り出した。
 「むぅぅぅぅん」
 「とりあえず、ジャンボパフェ奢りね」
 「だぁぁぁぁぁ!!」

 私立パラブレム学園。私達の住んでいる穂波市の中心にあり、マスターズ・コーポレーション社という巨大コングロマリッドの出資の元で成り立っている巨大学園だ。幼稚園から大学まで全て内包している。もっとも穂波市唯一の教育施設なのだから無理もないといったら無理もないのだけど。
 私は南川葵。この学園の高等部の二年生だ。んで・・・
 「美也は食べないのパフェ?」
 「・・・うっさい」
 と、ぶっきらぼうにレモンスカッシュをストローで飲みながら言った金髪の子は私の同級生。武月美也。ドイツからの帰国子女で、今はわけあって私の住んでいる商店街にある楽器屋さんに一人で下宿している。
 「もぉ、機嫌なおしなよ。ここは割り勘でいいからさぁ」
 「駄目。それじゃ勝負の意味が無くなるじゃない」
 私は苦笑し、目の前の巨大なパフェのクリームをスプーンですくうと美也の前に差し出した。
 「何のつもりだ?」
 「あげる」
 「施しは受けない」
 「友達からのおすそ分けだよ」
 と私がにんまりして言うと横目で美也はじっとスプーンを見ると、やがて手をスプーンに伸ばした。
 「しょうがないな。友としてだったら断るのも失礼だし」
 まったく、この子は素直じゃないんだから。私は近くを通りかかったウェイトレスのお姉さんにもう一つのスプーンを頼んだ。正直、この巨大なパフェは一人で食べるには辛いのだ。

 こんな風に美也と街をふらつくのが私の休日の潰し方だ。他に友達がいないわけではないが、なにかと家が近いと付き合いも増えそれに割かし夜遅くまで遊んでいても大丈夫なのだ。実際にあるコンサートにいって終電で家に帰っても美也と一緒にいたというだけで家の人は安心するのだ。まぁ、もっとも私の家はおじいちゃんだけだからそうなのかもしれないけど。
 美也もそうなのだそうだ。彼女の場合は下宿の楽器屋の店主がまぁ、若い頃は不良でブイブイ言わせていたらしいからそのあたりは寛大なのだそうだ。もっとも、彼女に限ってもしもということはないのだけど。
 私達は町に出てもあんまり買い物はしない。まぁ、たまに気になった漫画とか音楽メディアとかは買うけど服とかはかなり無頓着だ。おしゃれはしたいけど、なんとなく最近の流行の服は似合わない気がするのだ。美也の場合は完全に興味がないらしい。一度、彼女のおしゃれというのを見たことが有るけど、そのときは私はお腹を抱えて大笑いしたものだ。
 今日も一枚のCDと美也は楽譜を買って家に帰ることにした。環状モノレールは私達の持ってる学生手帳だとロハでのれるから交通には不便しない。するとしたら、モノレールの駅から私達の住んでいる商店街までの距離だ。歩いて20分もかかるのだ。昔はバスが通っていたらしいのだけど、今ではなくなった。そのときはモノレールがなかったからしい。
 「・・・あ!」
 夜の道を美也と歩いていると私はとんでもないことを思い出した。
 「どうした?」
 美也がばっと周りを見回しながら構えた。
 「あぅ、今夜のバトラー24見そこねたぁ」
 バトラー24とはバトルシュリンプを施設の中で戦わせる闘技を生放送する番組だ。穂波市ローカルの番組なのだが、視聴率はダントツの一位。そして私は毎週この番組を楽しみにしていた。だけど、この時間では今が山場で家に帰った頃には提供に入っているだろう。今夜のエキシビジョンマッチは中東から来た伝説の機士団の元団員と今の穂波スタジアムのチャンプとのベルト争奪戦だったのだ。
 「あうあう、今夜のバトルを見逃すなんて一生の不覚だ」
 と私は肩を落とした。私は三度のご飯よりも、そうなによりもシュリンプが好きなのだ。特にBSが。あの重量感、そして無骨さ。よく他人には変だといわれるが私はあれが大好きなのだ。
 「ふぅ、しょうがない」
 美也が構えをといて、とっさに地面に落としてしまった楽譜の入った紙袋を取り上げるとため息をついた。
 「こっちでも録画してるから、後で貸してあげるよ」
 「えっ、マジ!?」
 「嘘ついてもしょうがないでしょ」
 「わぁい、美也ちゃん大好き!」
 と、私は美也に飛びついた。
 「ええい!ちゃん付けするな!気色悪い!!」
 美也は力いっぱい私を放り投げた。力は強いのだ。戦略は駄目駄目だけど。

 「ただいまぁ」
 「おおぅ、飯できとるぞい」
 私の家は商店街の一番奥にある。というか、一番奥でないと商売できないのだ。私の家は「南屋」というジャンクショップを経営している。ここはおじいちゃんがどういうルートで仕入れてくるのか判らないけど、怪しげな軍用品とかを良く仕入れていて闘技のファイターもよく訪れる名店だ。休日に遊びに行かないときは大抵はお店を手伝っている。
 私の声に答えてくれたのは鉄宗おじいちゃん。お父さんたちがゼビウスへ招待研究員として招かれてから、ずっと東日本連邦に残った私の面倒を見てくれている。ジャンクショップをやってるだけに機械に詳しく、手先も器用で中学の入学祝いに作ってくれたSD化されたBSの目覚まし時計は私の大の宝物だ。私の大好きな人でもある。
 「今日の晩ご飯は?」
 「おじい様お手製ポークカレーじゃい」
 台所に入ると、背の小さいおじいちゃんが台所で鍋をかき混ぜていた。このおじいちゃんは室内でも古ぼけた飛行帽をかぶっており、これのゴーグルをかけて鍋をかき混ぜている姿は可笑しかった。それにしても、ゴーグルなんかしてて湯気は大丈夫なんだろうか。
 「えぇ、この前もカレーだったじゃない」
 「ではこの次はハヤシライスにするか?」
 「・・・ほとんど一緒じゃない」
 おじいちゃんはそうかのぅと言いながらゴーグルをはずしニヤリと私に笑った。さっきはそう言ったものおじいちゃんのカレーは大好きだ。美也もこのカレーは大好きらしく、食事に呼んだら表向きは嫌々ながらも喜んで来て人一倍食べて帰るだろう。
 その時、台所に置いているテレビの上に置いてある招き猫の置物から警報がなった。まったく、もう直ぐご飯だって言うのに・・・
 「おじいちゃん!」
 「おう、晩飯はとっといてやる」
 「ありがと。んじゃ、行って来る!」
 私は荷物を放り投げると、玄関へ駆け出した。その背中においじちゃんの威勢のいい声が降りかかった。
 「頑張って正義の味方やってこいよ!!」
 急いで靴を履き、玄関を出たらそこには美也が待っていた。美也もさっき分かれた時と同じ姿で、すこし顔が不機嫌なところを見ると晩御飯にありつく前に呼び出しがかかったのだろう。
 「行くよ、葵」
 私はその言葉に頷くと美也と一緒に走り出した。
 私達は真っ直ぐにモノレール駅まで走ると駅員に生徒手帳を見せるとそのまま構内に走りこんだ。そして構内にたどり着くと、停車していた車両にはのらずに近くにあった公衆電話にかぶりつく。そして生徒手帳から私の写真入の生徒証を取り出すと、普通ならテレホンカードを差し込む所にそれを挿入し7桁の番号をダイヤルする。
 そうすると間も置かずにぷわぁんと言う音共に高速で赤色の一両のモノレールが乗り込んできた。普通のモノレールは白地に広告が入っていたりして、6両編成なのだがこの車両は特別なのだ。私達がその車両に乗り込むと車両は入ってきたときと同じく高速で駅を出発し、途中で通常の路線を離れ真っ直ぐに穂波市の中心部へ向かっていった。

 車両は何時の間にかトンネルの中に入った。そして真っ暗になった後、車両が急速に減速し完全に止まると扉が開いた。すると、そこは駅ではなく一つの広大な部屋だった。正面の壁は丸ごとモニターで穂波市全てをモニターしていた。何か有れば、これで察知できるというわけだ。そのモニターの下には一つのマカボニー製の机があり、そこには一人の女性が居た。
 「南川葵、武月美也両名ただいま到着しました!」
 私が言うと、美也は背筋を伸ばして到着しましたと私の言葉を追いかけた。その言葉を聞くと、その女性はゆっくりと立ち上がり口を開いた。
 「先ほど穂波銀行第三支店から異常警報を受信した。一応、警察が出動したが苦戦しているようだ。至急現場に急行、事件を解決するように」
 凛とした声で女性がそう言うと、私達ははいと大きな声で返事すると部屋の右手にある扉の中へ駆け込んだ。
 

 「はぁっはっはっはっは!諸君!もろいです!もろすぎるですます!!」
 その男、タキシード姿に黒マント、更に黒のシルクハットとという着るのも恥ずかしければ見るのも恥ずかしい格好をしたその男は高笑いをしていた。その男は一台のBSの肩に乗っており、そのBSの足元には炎上したパトカーが数台転がっていた。
 「ええぇい!またしても、こいつか!」
 建物の影で数人の警官が毒づいていた。拳銃を発砲して応戦するが、BSが手を伸ばしてそれを盾のように銃弾から男を守っていた。
 「ふははははは!無駄無駄無駄!我輩を捕まえるならもっと軽やかに、そう美しく!ビューチフルにやってくれないかね!」
 その男、ぱっとみには美形・・・そう確かに美形なのだ。美也も結構美形だと私は思うのだが、その美也にも引けを取らないくらいの美形だと私は思う。だけど・・・恥ずかしい、言動の何から何まで恥ずかしい。
 「しかぁし!この穂波市警!いつまでもやられる訳にはいかんぞ!特殊機動隊の皆さん!カモン!」
 一人の警官が絶叫しながらピストルを空に向けて撃った。それは弾丸が信号弾だったらしく、そらに眩いばかりの光が広がった。すると、聞きなれたパトカーのサイレンと共にビルの影から三台の警察仕様のBSが現れた。・・・呼ばれるまで待ってたのか、あんたら。
 「御用だ!怪盗ミスターナルシス!!」
 古臭い台詞と共にマスターズ・コーポレーション製の零式・強警が両腕のシールドの裏側に収納してあるスタンスティックを抜くと両手で構えた。ふぅむ、こういうシチュエーションもなかなかかっこいいなぁ。
 「はぁっはっはっはっ!甘いです!どれだけ甘いかと言うとメープルシロップにスティックシュガーをまぶしたくらいにあまいです!!」
 ミスターナルシスはそう言いながら片手を強警の方へ向けると、ミスター7のBSも右腕をあげた。そして・・・ロケットパンチ。いいなぁ、ああいうギミック。
 「だぁぁぁぁ!!」
 警察もそれは予想外だったらしくロケットパンチをモロにくらうと、仰向けに倒れこんでしまった。しかも、それを最初に将棋倒しのように他の二台を巻き込み、さらに倒れようとした機体がとっさに手を伸ばし周りの建物に被害を与えながら豪快に倒れこんだ。あんたら、使えないぞ。
 「おおっっと!そこのあなた!」
 ミスターナルシスがいきなりそう言ったので、私は一瞬びくっとしてしまったが幸運(?)にも彼が指差したのは建物の陰で呆然としている警官達だった。ご丁寧にBSも指差している。どうやら、ロケットパンチは一回きりのようだ。
 「さっきのシッロプのくだり!くどいと思いましたね!?」
 いきなりの話で警官は呆然としたまま逮捕すべき犯罪者をみていた。その警官に向かい、彼はさっきまでの奇天烈な声とはうって変わり、美形相応というか静かな常識人ぶった口調で信じられない言葉を発した。
 「我輩もくどいとおもいます」
 「わからんわ!貴様!!」
 警官がどうやら切れたようだ。
 「はぁ、警察も質が落ちたものね」
 横から美也の声が聞こえた。私は肩をすくめて、おもしろいからいいんじゃないと言うと、
 「あのねぇ、見なさいよ。ミスターなんたらが襲ったのは銀行だけ、なのに警察のは・・・」
 美也が指差すほうを見ると、半壊したビルが二棟に、んぅ全壊しかかってるビルが一つ。
 「壊したねぇ」
 「壊したねぇ・・・じゃないでしょ!いくよ!」
 
 「ちょっぉぉぉぉっとまったぁ!」
 美也が大声で叫んだ。音楽をやってるから肺活量はたいしたもんなんだろうが、それを差し引いてもこの大声は対したもんだと思う。実際にミスターなんたらも、警官も目を点にして私達を見ている。
 「あなた達!」
 ビルの屋上に居る私達にミスターなんたらがびしっと指差して正面から見た。美也は最初はそれを正面から受け取っていたが、直に目をそらした。やはり正面きって見るには恥ずかしい奴なのだ。
 「あなた達は・・・・」
 ミスターなんたらは声を震わして言った。その手も心なしか震えていて、BSの手もご丁寧に微妙に震えている。私達も有名になったもんだ。
 「あなた達は・・・私より目立とうと考えてますね!」
 「違う!!」
 ミスターなんたらのとんでもない台詞に美也は力の限り否定した。私も否定したかったのだが、なんというか、力が完全に抜けてしまった。
 「何をいうのですか!その恥ずかしい格好!」
 まぁ、恥ずかしいゆうたら恥ずかしい格好ではあるけど・・・
 「ああぁ、彼女達は!!」
 警官がやっと正気をとりもどし、私達を指差した。
 「彼女達はメタルセイヴァーズ!」
 「そう!それ!」
 と、美也がそう言った警官を指差した。美也、それじゃぁあのミスターなんたらと同じだよ。警官もびびってるじゃない。
 私達が今見につけているのは洋服とかではない。シュリンプに使われる人工筋肉とそのジェネレーターである振動石ユニットを各所に装備した超高性能強化外骨格。背中には翼のような大型バーニアが二機装備されていて高機動性が確保されており、あたしのスーツも美也のスーツも基本設計は同じながらまったく別の特徴を備えている世界に一着しかない特別製なのだ。
 そう、私達は表向きは高校生なのだが裏で正義の味方をやっているのだ。
 「まったく、名前まで恥ずかしい」
 「お前の方が恥ずかしいだろ!」
 両手を広げ、あきれたように言うミスターなんたらに美也が向きになおって言う。美也がついむきになって両手を振り下ろした瞬間、きらりとミスターなんたらの目が光ったような気がした。
 「チャァァンス!」
 ミスターなんたらはまた腕を振り上げ、美也にむかってロケットパンチを撃ってきた。私は慌ててバーニアをふかし隣のビルの屋上まで逃げる。後ろでドカンと大きい音が聞こえた。ああ、我ながら無意識的に薄情だぞ私。
 「うぉりゃぁぁぁぁ!!」
 後ろを見ると美也がロケットパンチを抱えるように受け止めていた。手首の所から猛烈な勢いで、噴射を続けているロケットを正面から受け取る。忘れていたけど、このスーツはそれくらいの力は出せたのだ。それにしてもこのロケットパンチって、本当にロケット燃料を使ってるみたいだ。
 「ちょっと葵!見てないで手伝いなさいよ!」
 と、美也はなんとロケットパンチを私の方へ向けて投げ飛ばしてきた。
 「うわぁぁ、ちょっとタンマ!」
 といいつつそれを受け止める私。やるじゃん。
 「そこの恥ずかしい女の子達!我輩のロケットパンチで遊ぶんじゃないです!」
 「うっさいわね!好きで遊んでるんじゃないよ!」
 ああ、しまった言い返してしまった。こういう奴に言い返してしまうと同類に成り下がってしまうって、なんかの本で読んだことがあったっけ。にしても・・・これって結構持ちこたえるのがキツイんですけど。
 「そのままで動かないでよ!葵!」
 美也の鋭い声がした。私の脳裏にいやな予感がひしひしと伝わる。
 「ちょっと!何するの!」
 「こうするの!!」
 一閃。そう正に一閃。一閃の後にはロケットパンチが輪切りに、そう見事に6っつに輪切りにされたのだ。私は慌ててバーニアで逃げる。直ぐにロケットパンチは燃料に引火して爆発した。爆風で私は飛ばされそうになったけど、なんとか姿勢を整えると最初のビルの屋上に戻った。
 「危ないじゃない!」
 「でも怪我しなかったじゃない」
 私の避難にバーニアで宙に浮いたままの美也は涼しげに言った。その左手には美也のスーツ専用の高周波ブレードを携えていた。それにしても、さっき私だけが逃げたことを根に持ってたんだな。絶対。
 「そこの恥ずかしい人たち!我輩を無視するんじゃありません!」
 「うるさい!!」
 私と美也の声が見事にハモり、二人同時にミスターなんたらを睨みつけた。いかに温厚な私といえど、こうなんどもなんども恥ずかしい恥ずかしいと言われたら我慢の限界を迎えるというものだ。とうに美也なんかは大分前にキレていただろう。私は・・・今、十分に我慢の限界を超えた。

 
 「ふなぁ、おはよ」
 私はパジャマのまま台所へ行った。すると、おじいちゃんが昨日のカレーの残りを暖めておいてくれた。
 「おう、おはよう。ほれ、お前のことニュースにでてるぞい」
 と、先に朝食を食べている途中のおじいちゃんがお箸でテレビを指差した。テレビには昨夜の銀行の前が中継で映されていた。
 「昨夜の事件から一夜明けた銀行前は昨夜の捕り物の激しさを物語っています・・・」
 この朝のニュース番組の名物女性アナが半壊したビルを指差しながら言った。そう言えば、結局あのミスターなんたらは銀行に被害を与えずに警官相手に暴れただけだった。それにあの壊れたビルだって、警察の自滅で壊れたようなものだ。
 「それでは、昨夜の事件を担当された特殊機動隊の一号車パイロット、岸和田巡査部長にお話を聞きたいってきゃぁ!?」
 カメラが急にぶれ、一人のむさくるしい男のアップが写った。どうやらこの男がカメラを強引に自分に向けた。さらにマイクを持ってるから、女子アナから強奪したんだろう。
 「くぉら!見てるか!ミスターナルシス!今回は手痛い敗北を喫したが、次は絶対に負けんぞぉ!」
 「・・・恥ずかしい奴じゃのぅ」
 何故かおじいちゃんのつぶやきが私の胸を貫いた。にしても、あのミスターなんたらはあの状況から逃げたのか。まぁ、私も美也もBSを解体するのに夢中になっていたらしょうがないけど。乙女を恥ずかしい呼ばわりした罰も与えられずに逃しちゃうなんて悔しいぞ。ものすごく。
 「それにな!あの恥ずかしい小娘二人組!感謝はせんぞ!俺達の手柄を掻っ攫いやがって!」
 何故か私の心の内でこの警官は・・・いや、この警官も敵だと告げるものがあった。



 次回予告

 私の学級に新しい新しい子が入ってきた。闘技の本場、リンドバーク島から来日したその子はとっても無口な子。部活の顧問にいわれてその子をスカウトすることになったんだけど・・・

 次回「新入部員争奪戦!!」
 



ADDITIONAL SS - "METAL SAVERS"(01)
2002/07/13 掲載