| DM | 全身から血を噴き出し、半狂乱になった獣は、呆然となっているビーストマスターに襲い掛かり、がぶっと一口で男の上半身を飲み込んだ。 |
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| 一同 | げぇっ? |
| DM | 頑丈なあごが体を上下にかみちぎり、床に男の下半身がぼとりと落ちる。と、獣の体は見る見るうちに溶け出して、床に溢れた血と交じりあい、魔法陣の上に広がっていきます。 |
| 紫 | 残酷ぅ。 |
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凄惨な敵の最期に圧倒されつつも、PCたちは術で体力を回復させ、問題の戸棚のほうへ向かった。 | |
| DM | まず、見つかるのは蠍鞭。そして、奥のほうには、ブラックパールもある。 |
| まりあ | あったか…… |
| 紫 | これで、比呂ちゃんが。(涙) |
| 真藤 | ほかになにかめぼしいものは? |
| DM | ない。 |
| まりあ | もう、帰りたい。信明寺に帰ろう。 |
| 神崎 | そうだよな。みんな、傷つきすぎてるし……いや、ブラックパールを届けるのが先か。仲魔たちはマグネタイトで回復させて、コンピューターに戻しておこう。 |
| DM | 探女は見届けたいって、お願いして来るけど? |
| 神崎 | 「わかったよ。もう少し、いなさい」 |
| 探女 | 『ありがとう、リューイチ様』 |
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ぼろぼろになったPCたちは、小振りになった雨の中、南雲の待つ事務所へ帰還した。 | |
| DM | 『倉庫』には、既に『薬』をほぼ完成させた南雲と、杖を持ったセンリがいますね。明智くんが持っていたものとよく似ているけど、先端についている、多面体のクリスタルのなかで光っている色が違う。 |
| センリ | 「この子ね、コイツのなかに閉じ込められてるんだよ」 |
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横たわっている比呂に向けられている、センリのまなざしは、ホテルで出会ったときの無愛想さからは想像出来ないほど柔らかかった。 | |
| 紫 | この杖に? |
| センリ | 「探すの、結構苦労したよ。でも、解放するためには、ちゃんとした魔導師の術をほどこす必要があるってさ」 |
| DM | 『封印解除』だ。 |
| 立花 | 来ると思った。(笑) MP少ないのに……集中を4回して、94以下だ。 |
| 紫 | 竜ちゃんに、もたれて寝ている。 |
| 立花 | この術って、本当は封印されている悪魔を解放するものなんだけど……(ころ)ふぅ、おっけー。 |
| 紫 | 威力は? |
| DM | 大丈夫です。元々、立花の魔道のレベルは高いし。術をかけた瞬間、立花は杖そのものが自分に力を貸してくれたように感じた。呪文を唱え終わると、一瞬だけれど、かげろうのようなものが、センリのもつ『杖』から立ちのぼった。 |
| 南雲 | 「いまです!」 |
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ブラックパールの粉末を混ぜこんだ『薬』が、横たえられている少女の体に振り撒かれる。青白い粉はベールのように比呂を包み、皮膚に触れた途端、アスファルトに落ちた淡雪のごとく溶け消えていった。 沈黙に包まれた『倉庫』の中に、時がゆっくり降り積もって行く。 一瞬、わずかに瞼が動いたように見えた。 そして、それを錯覚だったのかもしれない、と思うような間を置き、薄く開かれた唇から吐息が漏れる。 闇よりも、なお黒い、切れ長の目がゆっくりと見開かれた。 一同、安堵の息をつく。 夜の海のように潤いを取り戻した瞳が、涙目でとりすがっている探女に向けられ、それから、その傍らに立っているアームターミナルを装着した男の姿に向けられると、映した像をとじこめようとするかのごとく、しずかに瞼をとじた。 | |
| 比呂 | 「信じていて、良かった」 |
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熱い、声にならない吐息とともに、青ざめたほおを一粒の涙が滑り落ちた。 | |
| DM | 比呂ちゃんは、そのまま寝ちゃう。ぐうぐう。(笑) |
| 立花 | まてぃ。寝る前に教えてくれい。 |
| 南雲 | 「ちょっと、このまま動かすのは危険だわ。ここまで拘わってしまった以上、私も最後まで面倒をみたいの。この子はここでしばらく預からせてもらいます」 |
| 紫 | だいぶ魂を消耗しているんでしょう。しばらく眠り続けて起きないと思う。 |
| DM | で、気が付くと、センリがいません。 |
| 立花 | あらぁ? |
| 紫 | 寝てるから、知らない。 |
| 南雲 | 「そういえば、あの子が言っていたわね。新宿は決していいことなんかないのにって……あなたたち、あの街へ行くつもりなの?」 |
| 立花 | あたしじゃないんだけど、ね。 |
| 南雲 | 「本気なら、ウチの車を貸してあげないこともないわよ。そのかわり、ちょっと、お願いすることがあるかもしれないけれど」 |
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南雲は、笑みを含んだ視線を一同に投げかけた。 窓の外では、いつしか、雨が止んでいた。 | |