DM 屋上はがらんとした駐車場だね。頭上には、ドームの天井のように白い蜘蛛の巣が覆っている。
神崎 きょろきょろあたりを見回して、女の人がいるかどうか確認する。
DM すると、君の見たビジョンどおりに、女性がいる。
神崎 どこいったんだー、鳥羽は!?
紫 明美ちゃんは?
DM いませんねぇ。(笑)
紫 成り行き上、女に近づいて行く。
DM すると、その人が夢の中に出てきた女性だと分かるね。
和服の女性 「間に合ってよかった。あなたたちを待っていました」
神崎 待たれていたのか。
和服の女性 「この結界を維持できるのは、今日かぎり。結界が破られる前に、これをあなたがたに渡しておきたかったのです」
そう言って女性がさしだしたのは、古い銅鏡だった。上の部分にひもがついていて、首からかけるようになっている。
夢の中でそうしたように紫が受け取ると、女性は静かに語り出した。
和服の女性 「これは、この地を守り続けていた鏡。やがて、時が到れば、大いなる力を呼び起こす鍵となるでしょう。わたしは、鏡をねらう外なる悪魔たちから、この鏡を護るため、この地に留まり続けていました。ですが、悪魔たちはこの建物を本拠として、大量に邪気を発生させ、鏡を奪おうとしました。この邪気が外にもれれば、必ず人の世に災いをもたらします。すでに、この建物の中には、大災害を引き起こすまでの邪気が蓄積されていて、わたしの結界では、押えきることができません」
女性は、紫をふりかえった。
女性 「この鏡の本当の力を持ってすれば、ここの邪気を浄化することもわけはありません。しかし、私ではこの鏡の封印を解放することが出来ない。それができるのは、鏡が選んだ、あなたたちだけなのです」
紫 いつのまにか、選ばれてたのね。
女性 「あなたたちが見た夢‥‥あれも、私が見せたのではなく、鏡の力によるものです。この鏡には『邪気』の浄化以外にも、なにかしら別の力が宿っています。悪魔たちのねらいは、きっとその力なのでしょう。あなたがたは、鏡が選んだ後継者です。この力をどのように使おうと、それも、あなたがたの自由です。ただ‥‥願わくば、この地の愛の中に生きてくれるように‥‥」
女性の姿が一瞬ゆらいで、そのむこうに大きな蜘蛛のシルエットが浮かび上がった。
神崎 クモ!?(神崎のプレイヤーは実はクモぎらい)
DM そして、完全に女性の姿は消える。と、君達の頭上の蜘蛛の巣に裂け目が入り、ドームの天井が割れるように、するすると開いて行く。
紫 蜘蛛の巣が、なくなるの?
DM そう。結界がなくなる、と。
神崎 なんだか、すごく‥‥むちゃくちゃ、イヤな予感がするんだけど。(笑)
DM 建物全体から、邪気がぶおぉっっと吹き出しますねぇ。(笑)んで、空の上では暗雲が不気味にぐるぐる渦巻いている。
紫 ところで、鏡ってあたしが持ってるんだよねぇ?
一同 うん。
DM すると、君達の背後でくすくすという笑い声がする。覚えてるかなぁ。一番始め君達がこのデパートに集まったときに出会った、ロングヘアーの若い美人のお姉さん。
紫 あの、みんなをバタバタ倒していったお姉さんか。
DM その後ろには、もう二人ほど、別の女性がいる。で、彼女は笑顔を浮かべたまま、「さあ、それを渡してちょうだい。どうせあなた達には必要のないものでしょう?」そういって、紫の方に手を差し出してくる。紫は、魔法回避チェック!
紫 あたしぃ? (ころころっ)27! オッケイ!!
DM じゃあ、一瞬ふらふらっと行きかけたけど、なんとか持ちこたえた。
謎の女性 「なかなか強い意志を持っているのね」
紫 「いや、べつに」(淡々と)
謎の女性 「ならば、実力行使にうつすまで!」
一同 いやーん!
DM (いやーん、て言われても)美人のお姉さんと、その後ろの二人の女性が、戦闘体勢に入るね。ちなみに、後ろの二人は、みょうに動きがぎこちない。じゃあ、イニシアチブだ。
PC全員 1がでた!
謎の女性 「くっ、やるわね」
紫 1ターン集中しよう。あ、ここって屋上なんだよねぇ、テレキネシスで人を浮かして、落とすってこと、できる?
DM (なんちゅーことを)可能だけど、威力×1kgの質量しか、持ち上げられないよ。
紫 それはムリかぁ。(笑)
DM 迷ってるなら、こっちからいくが。(笑)
神崎 わぁっ、待て待て。とりあえず、アナライズします。前の女には効かないだろうから、後ろのぎこちない方の片割れを。アナライズシステム起動成功。威力は‥‥6が出たから、振り足しでトータル8!!
DM 楽に分かる。こいつらは、クグツ・マネキンだね。
黄 マネキンAを攻撃、成功。11点。
DM 避けられない。防御点が4点だから、7点くらった、と。
紫 あたしは、集中。ウィスプちゃんの信頼度が2だから。6面ダイスが2個振れる。出た目は‥‥2と6。行動は、『揺れ動く』か、『ジオ』。よし、『ジオ』をつかってちょうだいな。仲魔の魔法は自動成功よね。えーと、マネキンAに、ダメージ5点。
DM 魔法防御が5点あるから、はじいた。が、ジオの魔法は命中しただけでも、耐久力チェックに成功しないとしびれちゃうんだよなぁ。(ころりん)成功。こっちの攻撃か。マネキンAは‥‥バーサーク。
紫 何が起こるの?
DM バーサークしたら、ランダムで攻撃の対象を決定する。格闘成功値プラス20%と、ダメージが2倍になり、回避がマイナス20%される。えーと、マネキンBは‥‥こいつもバーサークした。
一同 おいおいおい。(焦る)
DM じゃあ、ランダム攻撃だ。ウィスプも含めて、全部で8体か。8面ダイスをふって決定‥‥(ころりん)3。
神崎 やめてくれー(悲鳴)
DM 攻撃は、プラス20%‥‥だけどファンブった。チャートでは『武器を落とす』だけど、武器はないもんなぁ(笑)。どっちかの腕がとれたのかな?もう一体のほうは‥‥まりあだ。命中判定成功。
まりあ ひえー、‥‥59、回避失敗。
DM えっと、3足す、攻撃力の10で、13。2倍して26ですが。
まりあ 命運使ってダメージ打ち消す。
神崎 そんな恐ろしい攻撃力だったら、ひとたまりもないよな。
DM で、こっちのお姉さんは、と。誰にしようかなぁ、やっぱ、男性だよな‥‥黄さんに、意味ありげな視線を送ってきます。魔法回避してください。
黄 16なんだけど‥‥成功! 「きかぬ、きかぬわっ!」(笑)
DM じゃあ、なんともない。イニシアチブはこっちから。バーサーク二人組は、まず回復出来るかな? Aが回復。‥‥でも、またバーサークした。(笑)まずAが、黄に攻撃するが、失敗。Bは神崎にいくが‥‥またファンブった。
一同 またかよ〜。
DM ファンブル表の結果は‥‥『反撃が1回出来る』
神崎 おっ、ラッキー。アタックナイフで反撃。ぎりぎり成功。6が出て、ふりたしか。20て〜ん。
紫 一撃で粉砕とか。
神崎 (データを見て)いや、まだだな。
DM でも、けっこう壊れてる。つぎは、お姉さんの行動‥‥突然、腰を振って踊り出す。(笑)というわけで、全員、魔法回避チェック!
紫 ユカちゃん、失敗。
まりあ 19で回避。
神崎 ぐっ、ファンブル‥‥
黄 成功。
神崎 黄さんは、女性に強いなぁ。(たしかに神崎は弱いな)
DM ファンブル表は、『あまりの失敗に混乱してしまう』
神崎 またか! 混乱チャートは、30。
DM 『味方にだきついて、離れない』(一同爆笑) 誰にだきつく?
神崎 ランダムに決定‥‥ユカちゃんだ。(再度爆笑)
DM 普通に失敗した人は、おねえさんが『こっちにいらっしゃ〜い』と誘うのに、素直に従ってしまう。が、ユカちゃんは、神崎に抱きつかれているから、動き辛いだろうね。(笑)
紫 おーもーいー(笑)
黄 ひきつづき、Aに攻撃、成功。ダメージは14発。
DM 半壊しとる。イニシアチブは、こっち。バーサークマネキンAは、まりあに攻撃して、成功。
まりあ 19で回避した。
DM Bの攻撃も、また、まりあだ。命中して、26点。
まりあ 失敗〜。臨死体験で覚醒チェックしてみる。‥‥いきなり、失敗。命運が、5点増えた。
DM お姉さんは、黄さんにむかって『もっと、力がほしくない? こんな人達と一緒にいちゃ、あなたの本当の力は出し切れないわ』
神崎 すごく、説得力がある。(笑)
謎の女性 『あたしなら、あなたをもっと強くしてあげられる』
黄 魔法回避、失敗。「力‥‥欲しい」
DM じゃあ、シンクロした。ダークとロウを1D6ずつ増やしてね。で、ぼーっとしている。(本当は、シンクロしたらMPを1D6吸い取られるのだが、忘れていた)
神崎 混乱から回復出来るか、精神力チェック‥‥だめだぁ。
紫 あたしも失敗。
次のターン、PC側は、誰もまともな行動ができないので、悪魔からの行動となるが、バーサークしているマネキンAが、リーダーの女性に28点という大打撃を与える。マネキンBの攻撃は、紫に命中し、24点のダメージを与える。
紫 あたしも臨死体験の覚醒チェックをしよう。(ころころっ)いきなり、失敗。命運は6点もふえちゃった。
DM おねえさんの目標は‥‥やっぱり男性陣だな。(ころころ)神崎君。
神崎 でーっっ、この期に及んで、まだ何か?
DM お姉さんのつめたい手が、そっと君の顔にふれるよ。格闘回避。
神崎 死ぬかもしれん、(ころころ)お、03で成功。
黄 魅了回復の精神力チェックは失敗。
まりあ 命運1点消費して、HPを3点回復。
神崎 また失敗。早く立ち直って、ピクシーを呼ばねば。
DM 行動出来るのは、まりあだけか。イニシアチブはこちら。マネキンAの攻撃は、ウィスプに命中。回避して。
紫 ウィスプちゃ〜ん‥‥失敗しちゃった。
DM 6が出た‥‥合計、50点。ウィスプはしゅぽんと消えたね。
紫 あーっ、あたしのウィスプちゃんがぁっ!
DM マネキンBは、自分に攻撃。おや、失敗したね。で、お姉さんは、男性陣に‥‥
神崎 またかよぅ。
DM 黄にむかって、また悩ましげな視線がいくね。魔法回避は成功? 『ちぃっ、なかなかガードがかたいわねっ』
神崎 よし、混乱状態から回復したぞ。
黄 ファンブルで失敗。
DM それは‥‥バッドハイチャートを振ってもらおうか。(笑)02? 『頭をかきむしって騒ぐ』 MPを2D6減らして下さい。
黄 4へった。
まりあ 薬草の治療って、HPを回復するんだよね?
DM 時間がかかるけどね。
まりあ あ、10分だ。(笑)じゃあ、集中する。
神崎 とりあえずは、ピクシーを召喚‥‥55、またファンブルぅ!
DM ファンブル表の結果は、『派手に失敗してしまい、状況を更に悪化させてしまう』次のターンに呼び出そうとすれば、マイナス20のペナルティをつけよう。
神崎 じゃあ、アナライズでもしとこう。
次のターン、悪魔側からのイニシアチブで、バーサークマネキンが黄に大打撃を与える。黄は、命運を消費して、この危機を逃れる。だが、もう一体のマネキンが同士うちをして、仲間のマネキンを倒してしまう。謎の女は再び黄に怪しい視線(アイ・ショット)を送るが、あっさり防御されてしまう。(弱いな、このボス)
紫は命運を消費して、HPを回復。神崎は、アタックナイフで攻撃するものの、失敗。黄も精神力チェックに失敗し、まりあは集中を続けている。
DM マネキンBの攻撃目標は‥‥自分〜? ‥‥自爆した。一体、なんだったんだ、こいつらは。
神崎 いや、十分に怖かった。(笑)ピクシー召喚、今度は成功。
黄 精神力チェックは失敗。(主戦力が‥‥)
まりあ 投げナイフ投げる。一回目、成功。15点。2回目も当たって、12点。
DM ちょこっと、きいてる。次はPCがイニシアチブをとったか。
黄 回復チェックは失敗。
まりあ クリスナイフ起動‥‥だめだった。
DM じゃあ、MPが8点空しく消費された、と。(笑)
神崎 女の人にアナライズ! 威力は‥‥2。(笑)
DM 『ビーッ、解析デキマセン。』
神崎 マネキンなら出来るんだけどな。(笑)えーと、ピクシーの行動だ。信頼度は4だから、4つD6を振って、1、2、3、6。攻撃、ディ、ジオ、ジオンガが。ここはディだな。自分を回復するつもりだったけれど、それ以上ひどい人がいるから‥‥
紫 3。
まりあ 3。
神崎 (自分のHPの)12が多く、みえるよな。(笑)魔法は自動成功だから、えーと、MP2点へらして、まりあに6点回復。
まりあ おお、ほとんど全快。
DM 次のターンか。イニシアチブはそっち。
黄 やっと回復。
まりあ クリスナイフ発動成功!
DM MPを8点消費してね。
神崎 ピクシーは黄にディ。13点回復。それにしても、このお姉さん、強いのに誘惑してくるばっかだよなぁ。
DM うん、いちばん食らったの、味方のマネキンの一撃くらい。(笑)じゃあ、おねえさんの格闘攻撃だ。ピクシーに攻撃、命中。
神崎 げっ、やめてくれよ。かわいそうだろっ。みんな、ディはここまでだ。(笑)(ころころ)おっ、回避成功。
紫 精神力チェックはまた失敗。
黄 久しぶりに、いくぞ。‥‥はずれ。
神崎 しかたがない、俺もなぐりましょう。‥‥だめだ、3ほど足りない。
まりあ クリスナイフは‥‥14以下だが、05で命中。3点。
DM じゃあ、剣はざくっとお姉さんの体に食い込む。剣が僅かに光っていて、普通よりも大きな打撃を与えているようだ。
神崎 (思いついたように)‥‥ああ! そうだったのか!
紫 このおねえちゃんは、いわゆるひとつの『ボディコニアン』なわけね。
DM ということは、まだ君達は知らない。(笑) おねえさんの番だな。神崎に向かって、『お友達の居所を、知りたくなあい?』
神崎 むっちゃ知りたいぞ!(笑) 魔法回避か、かろうじて成功。ほっ。
黄 命中、ダメージ11発。
DM 食らってはいるが、あまり効いていない。
紫 やっと回復したよん。
神崎 集中する。
まりあ 集中。
DM つぎのイニシアチブは取ったぞ。また神崎にむかって『私とロウの道へ』
神崎 今度はだめかもしれない。失敗。
DM シンクロするダークとカオスが1D6ふえますねぇ。
神崎 回復チェックは失敗。ピクシーも操れない〜。
まりあ 集中。
紫 集中。
DM 次のターンもPC側からです。
紫 集中。
まりあ 集中。
黄 攻撃命中、成功。10発。
ボディコニアン 『いったーい!』
黄 次は『打拳』をつかおうかな。
神崎 精神力チェックは03で回復した。えーと、ピクシーはディだ。ユカちゃんに、7点回復。
DM おねえさんは、まりあに近づいていってかみつこうとしますが、失敗しますね。
ボディコニアン 『やっぱり、男の子が相手じゃないと』
次のターン、イニシアチブをとったPC側は、神崎と紫は集中。まりあのクリスナイフが、大打撃をあたえる。
ボディコニアン こんなの、くらってたまるもんですかっ。『命運で打ち消してやるっ。ふえーん、最後の命運、なくなっちゃったぁ』
神崎 ピクシーの行動は、ディとジオンガと、パピルマか。
紫 パピルマってあれ? 『○○はしあわせだ』ってやつ?(笑)
神崎 よし、じゃあ『○○はしあわせだ』を。(笑)
DM (いいかげんにダイスを振って)きかないね。
紫 もとから、きかないのかも。
DM また、まりあにかみつきだ。『あの魔法剣の使い手をなんとかしなきゃ』でも、失敗。つぎのイニシアチブはこっちっすね。『やっぱり、男の子よね』とばかりに、神崎をねらう。命中。これは避けたほうがいいよ。
神崎 こないでー。05で回避。
紫 3回集中したから、一発目成功。ふりたしで6が出て、もう一度出て……33発!
DM そりゃあ、ひとたまりもないね。(歓声)紫のナイフは眉間をうちぬいた。お姉さんの体はドロドロと溶けていく。
紫 最後の死にゼリフは?
DM (ちょっと考えて)ないね。お姉さんの体が溶けきると、突然、地響きが起こる。
紫 ズズズズズズズ‥‥
神崎 もしかして、デパートが崩壊するとかいわないでくれよ。
DM 空に、あの黒い瘴気がぐるぐるぐるぐるうずまいていて、ウィッカの使い手とかならわかるだろうけど、辺りには低級霊みたいなのがいっぱい集まって来ている。このままだと、いろんな霊障による、人災天災がたくさんおこるんじゃないかなー、と思っていたら‥‥加護チェックだあ!
紫 やめてぇー!
神崎 オッケー。
まりあ オッケー。
黄 成功。
紫 失敗あたしだけぇ!?
DM じゃあ一際大きな地響きが起こって、紫はコンクリートの上にたたきつけらる。1D6のダメージ。防御点は無効ね。(あっぶねぇ、紫がファンブルしてたら、鏡が割れてたぞ)
紫 3点。大丈夫。「いったーい」
DM 倒れた時に、鏡が輝きだすね。君だけ、プラス20の加護チェック。
紫 でたぁっ!
DM 君の耳元で、この鏡をわたしてくれた女性の声が聞こえるね。
『鏡を空に向けてください』
紫 ああ、さっき(神崎がみたビジョン)やってたみたいにだね。わかった。
たおれこみながらも紫は、輝く鏡を上へ向けた。今にも地上に向かって、黒い瘴気の牙を打ち込もうとしている暗黒の空へ向かって。
紫の腕の中の輝きは、さらに強さを増した。駐車場いっぱいに、白が満ちる。そして、光は収束し、一筋の光となって、暗雲の中へと吸い込まれていった。
空では、黒と白が戦っていた。光と闇がぐるぐるとせめぎあい、紫電がひらめきわたった。雲のあちこちで、獣のうなりのような雷鳴がとどろき、異常な光景は地上の人々を震撼させた。
5分は続いただろうか。
周囲が真昼のように明るくなった。
光がおさまった後の空には、一片の雲さえもなくなっていた。
静かだ。まるで何もかもが悪い夢だったかのような、静けさだ。
コンクリートの上にへたりこんだまま、くれなずむ空をぼんやりと見上げていると、階段を駆け上がってくる足音がした。
「やったわね」
ヒールの音もたからたに、息を切らせて駆け上がってきたのは、風見 つららだ。
「ひゅーう、あんたらもヤルもんだねぇ」
つづいて現れた明智 太郎は、相変わらずカルい。
どっと疲れがでてきて、それぞれに口を開こうとすると、明智が、あの不思議な杖を横にふって制した。
「ま、話はあとあと。そろそろ、ここにも警察がくる。あんたら、みつかったらやばそうなモン、結構持ってるんだろ? まずは、ここから抜け出そう」
慣れた動きの二人に先導されて、無事にデパートの裏通りまでたどりついた。
建物をおおいつくしたいた蜘蛛の巣はあとかたもなく消えていた。それが存在したということを示すものは、何も残っていなかった。
蘇った『日常』の姿をみているうちに、だんだんと冷静さを取り戻した。
神崎 白虎は?
明智 大丈夫。救急隊員にちゃんと、救助されたぜ。
つらら ‥‥あのデパート内には、わたしたち以外の生存者も結構いたらしいの。ただ、みんな蜘蛛の巣の結界のなかに包まれて眠らされていたから、見つけられなかったのね。きっと、あなたがたの知人の方も無事でしょう。
思わず、安堵の息が漏れる。
そんな彼らの顔を見渡してから、風見はバッグから、ぴっと一枚の名刺を差し出した。
つらら はい、名刺。
横書きの名刺には、日下探偵事務所所属調査員という彼女の肩書に加えて、事務所のアドレスと電話番号が印刷されていた。
つらら 私達、ここの事務所でゴーストバスター稼業をしてるの。あなたたち、みどころがあるから、いつでも歓迎するわよ。仲間としても、お客としても、ね。
明智 次の仕事もあることだし、俺達はそろそろ帰るぜ。今日はゴクローサン。
じゃ、と手を上げて、ふたりは路地へ消えていった。
彼らが消えるのを待ち構えていたように、黒塗りの車が、目の前へすべりこんできた。
音もなく、後部座席の窓がひらくと、見覚えのある顔が現れた。
デパート前で、周囲の警官から浮き上がっていた、あのビジネスマン風の男である。
男は紫のもっている鏡を見つめて、微笑した。
紫 鏡を抱きしめたまま、睨み付けてやる。
男 (だしぬけに)「その鏡‥‥50万で譲ってもらえませんか?」
紫 うっ。
神崎 うっ、じゃなくて。(笑)売らない売らない。
紫 だね。売って、さっきのクモのお姉さんにとりつかれたら困るしー。
「これは、売れないよ」
男 「‥‥そうか。」
一瞬、笑みを深くしたあと、
男 「ならば、ひとまずは君に預けておくことにしよう」
まりあ 今度は非合法の手段で来るつもりかも‥‥
まりあのつぶやきは聞こえなかったのか、窓が再びしまった。来たとき同様、黒塗りの車は滑るように去っていく。
鏡をだきしめる手にさらに力を込めて、紫は車を見送った。
DM 静かになった通りで、なにげなく空を見上げると、血のように赤い夕焼けだ。夜に間もない大気は、いつもと同じような、どこかなつかしい匂いがする。
だが、今の君達の目には、明らかに昨日と、なにかがかわりつつあるという『現実』が、見え始めていたんだ‥‥
to be continued・・・