|
傷心を抱え、一行はシオンホテルの地下駐車場へ向かう。 | |
| 立花 | トラックで待ってもらってた九段坂さんには、悪いことしたわね。 |
|---|---|
| 九段坂 | 「乗っていかないのか?」 |
| 紫 | 歩いて行きたいんだ。 |
| 真藤 | ありがと、お世話になったね。 |
| DM | 九段坂は多くを聞かず、トラックで去って行く。では、シオンホテルに到着。 |
| 紫 | 中で死んでたりしないでしょうね。 |
| 立花 | 死んでたら……ザマアみやがれ!(笑) |
| 紫 | 田村が死んだら情報は永遠に手に入らない。 |
| 立花 | あたしが行けばいいでしょ。 |
| 真藤 | 早まったマネだけはしないようにって、サキさんも言ってただろ、立花さん? |
| 立花 | ……。で、田村は? |
| DM | いますね。例のフェラーリのボンネットに腰を預けている。 |
| 田村 | 「約束のものは?」 |
| まりあ | 持って来れなくなった。 |
| 紫 | かくかくしかじかまるまるうしうしで。 |
| 立花 | 全部言っちゃうの? |
| 紫 | いいんじゃないの、別に。(なげやり) |
| 田村 | 「そうか、楠木に渡ったのか」 |
| 立花 | ……聞きたいんだけど、あたしがもっているもの、つまりあなたがあたしを求める理由も、ああいったものなの? |
| 田村 | 「恥ずかしいから何度も言わせないでくれよ。俺が君に求めているものは、君のすべてだ」 |
| 紫 | 立花のすべて−それは、体も魂も、力も。 |
| DM | えらく最後の力を強調しますな。(笑) |
| 田村 | 「じゃ、取引は成立しないわけだな」 |
| 立花 | ま、しょうがないわね。 |
| 神崎 | がしっ。(立花の腕をつかむ) |
| 立花 | 分かってるって。(笑) 行かないわよ。 |
| 真藤 | 右腕の方をつかんでいる。 |
| 立花 | (両方から押え込まれて)だ、だいじょうぶだってばぁ。 |
| 真藤 | 「立花はあんたにわたさない」あ、呼び捨てにしちゃった。 |
| 田村 | 「……。つまり、俺はむだ足だったってことか」 |
| 立花 | そういうことね、田村さん。 |
| 田村 | 「あーあ、俺、おちこんじゃう。交渉には失敗するし、好きな女には振られるし」 |
| まりあ | ホれた相手が悪いんだよ。(笑) |
| 紫 | 好きになった理由が不純なのよ。 |
| 田村 | 「理由だって? 女を好きになるのに、理由なんかあるわけがないだろう。どっちにしろ、失恋しちゃったわけだな、俺は」 |
| 立花 | うん。 |
| 田村 | 「失恋の痛手を癒すために、ちょっとウサを晴らさせてもらおうかな? あんまり、こういう悪役みたいなことは好きじゃないんだけど」 |
| まりあ | な、なにをする気だ。 |
| 田村 | 「さ、おいで」 |
| DM | 田村は自分の車に向かって手招きする。すると、フェラーリのドアが内側から開いて、小さな女の子が出て来る。 |
| 立花 | 今、「おいで」って言われたとき、チャームでもかけられたかと思った。(笑) |
| DM | それもよかったな。(笑) 出て来たのは、えみるそっくりの女の子だ。 |
| 女の子 | (キツい声で)「えみるを返して!」 |
| 立花 | いや、返してと言われても。 |
| 紫 | 別にさらったわけじゃない。 |
| 女の子 | 「えみると私は神様に選ばれたのよ。えみるを返してよ」 |
| 立花 | 選ばれたのねぇ……じゃあ、なんでえみるちゃんはあそこにいたの? |
| 女の子 | 「司祭様と一緒に大事な修行をしてたのよ」 |
| 紫 | 焼き殺されるために。 |
| DM | あの火事は、犯人が違いそうだけれどね。(笑) |
| 女の子 | 「あなたたち、司祭様が言ってた悪魔の使いね!」 |
| 紫 | 悪魔の使いねぇ……確かにそうかもしれんなぁ。ははははは! |
| 立花 | (溜息)田村さんも趣味がわるいわね。この子を使ってどうするつもりなの? |
| 田村 | 「別に何も。この子がしたいようにさせてやるんだ。君達が傷つくのを見ているのはけっこう楽しそうだ」 |
| 立花 | 傷つける? |
| 女の子 | 「悪魔の使いめ! 私はおまえたちを許さない!」 |
| 立花 | (あきれたように)許さないんだったら、何でもしたら? |
| 女の子 | 「ううっ……燃えつきちゃえ! アギ!」 |
| 立花 | はいはい、魔法回避ね。 |
| DM | ちょっと待て、立花にいったんだな? じゃあ、回避しなくていい。 |
|
少女の手から放たれた火球は、身構えた立花を直撃するかに見えた。が、寸前のところでコースをそれ、背後の車にぶち当たり、爆発した。煙が噴き出し、スプリンクラーが回転する。シャワーの水音と、非常ベルが地下の閉鎖空間に響き渡った。 | |
| まりあ | まずいぞ、炎上してるぞ。(笑) |
| 紫 | 地下駐車場で車が燃えたら、あたしたちみんな一酸化炭素中毒になると思いまーす。ま、簡単に決着がついていいかもしれないけどぉ。 |
| 真藤 | ゆ、紫…… |
| DM | ま、換気装置くらいあるでしょ多分。(笑) |
| 立花 | なにがあったのか分からないんだけど、とりあえず。(冷たく)「ノーコン」 |
| 女の子 | (困惑気味に)「あなた、悪魔の使いなんだわ……そうなんでしょお?」 |
| 立花 | そう思いたければ、おもっとけば? |
| 女の子 | 「やっつけなきゃ、やっつけなくっちゃ……おにいちゃん」(田村を振り返る) |
| 田村 | 「うん?」 |
| 女の子 | 「このくるま、まりのにくれる?」 |
| 田村 | 「ああいいよ。好きにお使い」(にっこり) |
| 女の子 | 「ありがとう。くるまさん、一緒にあいつらをやっつけよう!」 |
| 一同 | ヘ? |
| DM | 少女の声に答えるように無人のフェラーリのライトが点滅し、エンジンが唸りを上げる。あきらかに、尋常な車じゃない。 |
| 紫 | (えみるを)返してあげたほうがいいんじゃないの? |
| 立花 | いいの? 私はあんまりね、あの子に感情移入してないけれど……一番つらいの、ユカちゃんじゃないの? |
| 紫 | (無感動な声で)えみる本人の気持ちの問題でしょ。あのこは、まりのに会いたがってたし。肉親と一緒にいるのが一番でしょ。 |
| 立花 | ほかの人はいいの? |
| まりあ | あたしは別にいいけど。 |
| 紫 | (たまりかねたように)あたしらに何が出来るっていうのよぉっ!? |
| DM | ……。まりのはえみるを引き渡してもらえるなら、戦闘体制を解く。実はえみるの暗示はまりのと一緒にいれば発動しないようになっているんだ。 |
| 神崎 | なら、そちらから来てもらうしかないか……。 |
| まりあ | まりのに向かって言う。「えみるちゃんが一番望んでいるのはあなたと一緒にいることだから、そちらから来てもらったらあの子を返すわ。だから、戦いはやめましょう」 |
| 紫 | 来てもらえれば、あたしたちが無理やり監禁してつれてきたんじゃないってことは分かるわ。 |
| 女の子 | (肩をそびやかして)「おにいちゃん、えみるを迎えにいきましょう」 |
| 立花 | ところで、まりのの方は外に出ても大丈夫なの? |
| DM | そのようですね。 |
| まりあ | それじゃあ、えみるちゃんも待ってることだし、さっさと早く行きましょう。 |
| DM | うん。二人はフェラーリに乗って行ってしまう。 |
| まりあ | あ、あたしらは徒歩か。 |
| DM | それからしばし遅れて、君達が信明寺に帰ると…… |
| 紫 | 信明寺になんか、帰れない。 |
| まりあ | 帰らないと、どうなったか分からないでしょ。 |
| 紫 | 黄さんと戦って、信明寺になんか帰れない。(泣) |
| 立花 | (冷静に)あたしは住職さんに、事情を話しておいた方がいいと思うの。 |
| 紫 | ……。 |
| DM | では信明寺です。住職さんが出迎えてくれる。 |
| 住職 | 「おお、さっき派手な車に乗った、えみる嬢ちゃんそっくりの客人がきての。えみる嬢ちゃんを連れていったよ」 |
| まりあ | えみるちゃんはどうだった? |
| 住職 | 「大層喜んでおったわ。何でも、双子の姉妹だとか言ってたのぉ。そういえば、ウチの学丈もなかなか戻らんの」 |
| 紫 | 黄さんは、もう帰って来ないかもしれない…… |
| 住職 | 「ヤツのことを思いだしたら、急にハラが減って来たな。立花さんや、そろそろ昼ご飯の時間なんじゃが……」 |