| DM | おまたせしました。立花さんの出番です。一人ですが頑張って下さい。 |
| 立花 | はーい。(笑) |
| DM | では、雑居ビルの三階にある事務所に到着します。「ちーん」 |
| 立花 | あれ、ここってエレベーターあったっけ? |
| DM | そういや、なかったな。では立花がエレベーターの気分を味わいたいがために、自分で言ったということで。(一同爆笑) |
| まりあ | さびしーっ。(笑) |
| 紫 | 階段を上がり切った所で、自分でぼそっと「ちーん」。 |
| 立花 | (にべもなく)却下。 |
| DM | 事務所に入ると二人の男性がいる。一人は、秋のさなかだというのにアロハシャツを着ている。 |
| 立花 | はっ? |
| DM | もう一人は、壁際の椅子に座って、自分の腕に包帯を巻き付けている。が、自力ではかなり巻き辛そうだ。アロハの男は「いでぇーっっ」と叫びながら、腰の部分に包帯を巻いてもらっている。その治療にあたっているのが、前回登場した南雲さんだ。 |
| アロハの男 | 「いででででーっっ! もちっと、優しくやってくれないかなー、優子すわーん」 |
| 紫 | 南雲さんって、下の名前、優子っていうんだ。 |
| 真藤 | きっと、この男が、売約済みの人なんだな。 |
| DM | 南雲さんは「わかったわ」とにっこり笑って、ぎゅぅぅっと包帯を締めあげる。で、また男が絶叫します。(笑) |
| 立花 | 呆然と見ている。 |
| DM | 痛みの余りのけぞった男が、立花と目があいますね。 |
| 立花 | ちょっと視線をそらせたい気がします。(笑) |
| アロハの男 | 「おっ? どこの王女様のお出ましかと思えば、立花じゃないか。相変わらず女神のように美人だね」 |
| 立花 | (冷たく)ありがと。 |
| アロハの男 | 「うーん、その冷たさがたまらないね」 |
| DM | 南雲さんはアロハ男の包帯をしめおえると、立花に来客用のソファーをすすめる。立花は不思議に思う。南雲は『倉庫番』なのだから、事務所に降りて来ることはめったにない。普段この部屋をしきっているのは、立花の友達の風見つららさんだ。 |
| 立花 | 南雲さん、どうして今日はここにいるんですか? |
| 南雲 | 「うーん、ちょっと人手が足りなくなってしまってね」 |
| 立花 | つららちゃんは? |
| 南雲 | 「さぁ……あの子は気まぐれだから、ふらりといなくなっちゃった。今日、来てもらったのは、あなたたちをねぎらうためなの」 |
| 立花 | あ、すみませーん。真藤は、ちょっと別な用事があって来れなかったんです。 |
| 南雲 | 「そうなの。まあ、いいでしょう。いままで、よく、ハードな仕事を続けてくれたわね。だけど、今日、この今から、もうあの仕事から手を引いてくれて結構よ」 |
| 立花 | はい? いきなりですか? |
| 南雲 | 「そうよ。今まで、どうもありがとう」 |
| DM | そう言って南雲は厚みのある茶封筒をすっと差し出す。 |
| 立花 | (戸惑いながら)え、えっとぉ、この封筒っていうのは給料なんでしょうか? |
| 南雲 | 「それは所長からのボーナス。それとあなた達への見舞い金も含まれているわ」 |
| 立花 | (まだ混乱しながら)えっと、えっと、仕事を依頼されたってことは、依頼主がいたわけだよね。で、その依頼主の人が、もういいって言ったの? |
| 南雲 | 「ちゃんと相手側と話はついているわ。調査も終了したと受け取ってもらえたし」 |
|---|
| 立花 | 私達、依頼者のことは全然知らないんだよね。 |
| 南雲 | 「すべて、済んだことよ」 |
| 立花 | だったら、教えて下さい。 |
| 南雲 | 「……企業側からの依頼だったわ」 |
| 立花 | 企業側? どこの企業? |
| 南雲 | (溜息をついて)「クレハコーポレーション」 |
| 立花 | ……。で、紫ちゃんの何を調べて欲しいということだったんですか? |
| 南雲 | 「正確に言えば、あの人が持っている魔導器を監視してほしいというものだったの。護衛という形で共に行動し、その魔導器がどのような状況下でいかなる力を発揮するのかを調査するのが私達に依頼された仕事だったのよ」 |
| 立花 | で、南雲さんは、クレハコーポレーションの話をしようとすると、どうしてそんな険しい顔になるんでしょう?(一同爆笑) |
| DM | それ、そのまま聞くのか?(笑) |
| 神崎 | なんと、単刀直入な。(笑) |
| 南雲 | 「あの会社は良くない噂が多いわ。利口な人間ならばちかづかない」 |
| 立花 | 良くない噂、か。絶対ウラがあると思うんだけどな。 |
| DM | ウラ? |
| 立花 | 裏。 |
| DM | うら。 |
| 立花 | うらー。(笑) |
| 神崎 | なにやってんだ、この二人。(笑) |
| 立花 | 南雲さんだったら、知っているような気がするんだけどなぁ。情報通だし。(笑) |
|---|
| 南雲 | 「私はただの倉庫番。今日も単につららちゃんの代理でここにいるだけだし。元々、依頼人と直接接触するのはあの子ですしね」 |
| 立花 | つららちゃん…… |
| 神崎 | 逃げたな。(笑) |
| 南雲 | 「とにかく、真藤君の分とあわせて40万、渡しておくから」 |
| 立花 | はぁ。(受け取る)あの、つららちゃんは、今どんな仕事をしてるんですか? |
| 南雲 | 「あの子は今、日下から離れてるの。用というのはこれだけよ」 |
| 立花 | 離れている?(首を傾げる) ……ところで、あの二人は? |
| DM | おお、あやうく存在を忘れるところであった。(笑) アロハシャツの男は佐伯、自分で包帯を巻いている方は北條という。共に正所員です。 |
| 立花 | あのふたりの受けてた仕事はどんなものなんですか? |
| 南雲 | 「本人達に聞いてみたら……あら、いつの間にか出ていっちゃったみたいね」 |
| 立花 | いないのぉ?(笑) |
| 南雲 | 「佐伯君の事だから、下で遊んでるでしょう」 |
| DM | このビルには2階にビリヤード場があるんだ。日下の所員を探すなら、事務所よりも、ビリヤード場を探した方が手っ取り早いという定説がある。(笑) |
| 立花 | (南雲に向き直って)えぇと、依頼の方は終わったと聞いたけど…… |
| 南雲 | 「ええ、大変だったでしょ」 |
| 立花 | 学校もしばらく通えそうにないし、別にすることもないから、あの人達ともうちょっと行動を共にするかもしれないわ。 |
| 南雲 | (眉をひそめて)「できれば…もう、あの人達には近づかないでほしいわ」 |
| 立花 | どういう意味? |
| 南雲 | …………。 |
| 立花 | 南雲さん、南雲さん、本当はなにか知ってるんでしょ? さぁさぁ、洗いざらいしゃべりましょう!(笑) |
| 南雲 | 「立花…あなた、他人の心配をするよりも、自分のことで手が一杯でしょ?」 |
| 立花 | ……でも、ここまで拘わってしまったら一緒だと思うし。(笑) |
| 南雲 | 「自分から面倒なことに首を突っ込む必要はないんじゃないの? お小遣いも手に入ったことだし」 |
| 紫 | 家であやしい魔道の研究をする資金が。(一同爆笑) |
| 立花 | 別にお金に執着はないの。「でも、南雲さん、どうしてそんなに止めるの」(にっこり) |
| 南雲 | 「理由なんかないわ。あなたたちのことを心配してるのよ」(にっこり返し) |
| 立花 | ああっ、跳ね返された。(笑) |
| 南雲 | 「じゃあ3択」 |
| 立花 | よし、こい! |
| 南雲 | 「1番、なんとなく。2番、気のせい。3番、単なる思い付き」 |
| 立花 | 全部却下。(笑) |
| 南雲 | 「ブー。はずれ」(一同爆笑) |
| 神崎 | 日下の人って、知れば知るほど、分からなくなるよな。 |
| 立花 | 南雲さん……オチャメなんだから。「こんどお茶でもしながらゆっくり話しましょう」と言って、事務所を出ます。で、ビリヤード場に顔を出す。 |
| DM | ふむ。なら有無をいわさず、佐伯にひっぱりこまれるな。(笑) |
| 佐伯 | 「よぅ、立花。金入ったんだろ? 遊んでいこうぜ」 |
| 立花 | いや、あたしのお金じゃないから。あ、半分はあたしのだけど。 |
| 佐伯 | 「どうせ、のこりの半分は真藤のなんだろ」(笑) |
| 立花 | いや、それは……ううーむっ?(一同爆笑) |
| 真藤 | 今、全身を身の毛のよだつような感覚が! |
| 佐伯 | 「さぁさ、入った入った」(ぐいぐいと背中を押す) |
| 立花 | でも、このお金は使わないからね。 |
| 佐伯 | 「ええーっ、遊んでいこうぜ。1ゲーム、3千円。あっというまに倍になるかもしれないぜ」 |
| 立花 | 遠慮しとくわ。カモにされそうだし。 |
| 佐伯 | 「俺が、女の子から巻き上げたりすると思う? ま、真藤の分だったら容赦はしないけどな」(一同爆笑) |
| 真藤 | なんだよ、そいつらは。よかった、行かなくって。 |
| 神崎 | どこでも、ヒドい扱いされてるんだな。 |
| 立花 | そんなことよりも、なんでアロハを着てるのか聞きたいんだけど。(笑) |
| 佐伯 | 「俺って、こういった華やかなモンじゃないと似合わないんだよな」(笑) |
| 立花 | でも、今そんな恰好してると、頭がパッパラパーに見えるわよ。(一同爆笑) |
| 佐伯 | 「相変わらず直球ストレートだな、立花は。ま、そこが魅力なんだが」 |
| 立花 | めげへんなー。真藤よりもシブトい。「それで一体、どんな仕事でそんな大怪我をしたの?」 |
| DM | その質問をされると、佐伯はバツが悪そうに視線をそらし、北條の方を見る。北條が黙ったまま頷きかえすと、仕方ないといった風情で口をひらく。 |
| 佐伯 | 「別に、仕事のため、だけじゃないんだよ、な」 |
| 一同 | は? |
| 立花 | 仕事のためじゃないんだよな、ということは……佐伯さんのことだから、女の人を守って、名誉の負傷とか。(笑) |
| 佐伯 | 「そういった武勇伝なら、とっておきのがあるんだけど、聞いてくれる?」(笑) |
|---|
| 立花 | いや。(笑) その怪我をした本当の理由を教えてよ。 |
| 佐伯 | (衝撃の告白調で)「あれは……私が、幽霊屋敷の化物退治の依頼をかたずけ、相棒の北條とともに帰路についたときのことだった……」 |
| 立花 | はいはい。(笑) |
| 佐伯 | 「薄暗い道を歩いていると、突然物陰から『死ねやー!』という声と共に、何者かが飛び出してきたかと思うと、俺の脇腹にナイフを……」 |
| 立花 | 佐伯さん……極道の女に手を出したの? |
| 佐伯 | 「まぁ、死ねやー、は冗談としても、妙な奴らの闇討ちにあったのは事実なんだ。ありぁ、間違いない。ゾンビだな、うん」 |
| 立花 | ゾンビぃ? |
| 佐伯 | 「始め、人間だと思ってたから手加減してたんだけどな。腕がひん曲がっても無表情で向かってきやがったから、炎油をぶっかけてやったら、燃えること燃えること」 |
|---|
| 立花 | きれいなゾンビだったのね。「で、襲われた理由に心当たりは?」 |
| DM | 北條は無言で首を横に振っているが、佐伯はちょっと考えこんでしまう。(笑) |
| 立花 | 佐伯さん、一体何をしたのかしらぁ?(笑) |
| 佐伯 | 「ゾンビの女には手を出してないハズなんだがなぁ」 |
| 紫 | ボディコニアンとかいるしー。(笑) |
| 立花 | (少し呆れて)北條さん、この人と手を切るつもりはないの? |
| 北條 | 「切りたいのは山々なんだが……」だから、立花の気もちもよく分かると目で訴えてる。 |
| 佐伯 | 「立花たちの方も大変だったんだろ? なんせ、あのクレハコープがらみの仕事だったらしいしさ」 |
| 立花 | どういう意味? |
| 佐伯 | 「あそこの上層は軍部とも強く結び付いているし、なにかとヤバイ噂を聞くぜ」 |
| 立花 | 軍とねぇ……。「それ以外にも、なにか聞いてない?」 |
| 佐伯 | 「クレハが様々な宗教団体のスポンサーとして結び付いているのは公然の秘密だろ」 |
| DM | 佐伯の話によると、クレハが接触をもちたがるのは、ローマ・カトリック教会のような伝統的な組織ではなく、末法思想を教義のベースにした比較的新しい教団らしい。この傾向はクレハに限ったことじゃなくて、最近、都心に本社をもつ大企業の多くが、積極的に宗教家と関係を結び、その活動を支援している。 |
| 佐伯 | 「立花たちが仕事を降ろされたのも、南雲さんがクレハの方へ断りを入れたからなんだぜ。あの会社はただでさえ怪しい上に、ツナギの連絡員が急にいなくなったりして、もう信用がおけなくなったんだってよ」 |
| 立花 | 南雲さんが? |
| 佐伯 | 「ほんとは、つららがやるべきことなんだろうけどな。いないから」 |
| DM | 南雲さんは、君達所員の身を案じたのですね。まぁ、つららだったら、やばそうな仕事でも、いってらっしゃーい、とか言いそうだけど。(笑) |
| 神崎 | 自分に関係なけりゃ。(笑) |
| 紫 | 死んだら、またその辺で補充すればいいし、って。(笑) |
| 立花 | あたし、一応友達なのに……。(笑)「佐伯さんたちの仕事は、全然クレハがらみの物じゃなかったのよね?」 |
| DM | うん。不動産屋さんが持家にオバケが出て、買い手がつかんから何とかしてくれというヤツ。 |
| 神崎 | むっちゃ、幸せな依頼だな。 |
| 立花 | クレハねぇ。あ、そういえばクレハの人なんだけど、奈良さんって人知ってる? |
| 佐伯 | 「奈良? ああ、行方が分からなくなったっていうクレハの連絡員が、そんな名前だったな」 |
| 立花 | じゃあ、タムラっていう人は? その人もクレハの社員で、社章の六芒星の形の金色バッヂをつけていたの。 |
| DM | では、運試しだ。立花は命運で振る。 |
| 立花 | 命運ー? (ころ)ぜんぜんっダメ。 |
| 北條 | (ぼそりと)「……知らないな、そんなやつは」 |
| 立花 | タムラさんは、クレハの人間じゃないってこと? |
| 佐伯 | 「クレハの社章が六芒星のバッヂなんて、初耳だぜ」 |
| 立花 | あれぇ? |
| 紫 | ここにいない人間が口出しするのもなんなんだけど、そのバッヂっていうのは、会社内の怪しい組織の会員証のようなもんじゃないのか? |
| まりあ | 学校全体の校章じゃなくて、一部のクラブ章のようなものか。 |
| 佐伯 | 「でも、日下も変わったよな。前はどんな事件だって、とりあえずどんどんぶつかっていってたのに。まぁ、経験を積んで賢くなったといえないこともないが」 |
| 一同 | うーん。 |
| 北條 | (不意に)「……最近の日下はおかしい」 |
| 立花 | 「おかしい? あたし、最近おやじさんと会ってないんだけど、方針が変わったとかそういうあやしい意味?」 |
| 佐伯 | 「あやしいのは、いつものことだろう」 |
| 北條 | 「……所員たちが妙に落ち着きをなくしている。佐伯、おまえも妙にハイになって敵に突っ込んでいったから、ゾンビごとき相手にそんな樣だろう」 |
| DM | ま、北條も怪我してるんだけどね。 |
| 立花 | そうよね、二人ともなんか同じような怪我してるし。 |
| 佐伯 | 「なー? 人のこと言えないと思うよな?」 |
| 立花 | だからって別に佐伯さんの味方にはならないけど。(笑) |
| 紫 | しっかり、クギを差しておく。(笑) |
| 北條 | 「ああ、俺も落ちつかないんだ。妙に胸が騒ぐ」 |
| 立花 | それは、日下の人だけに起こってるってこと? あたし、最近あんまり帰って来てなかったから、気づかなかったんだけど。 |
| DM | 彼は、日下全体のムードが、なんだか浮ついていると言いたいらしい。 |
| 佐伯 | 「いなくなる所員とかも多いしなぁ」 |
| 立花 | いなくなる所員? |
| 神崎 | 一人いるよな。 |
| 紫 | 知ってる人が言ってくれないから、わからないんだけど。 |
| 立花 | 例えば、誰? |
| 佐伯 | 「立花の知らない奴の中にもいるしな。知ってそうなところでは、明智や、つららとかだな」 |
| 立花 | まぁ、つららちゃんはいいとして(笑)、明智くんもなの? それは仕事の途中で、帰って来ないってこと? |
| 佐伯 | 「いや、仕事をどうのこうの言う以前に、事務所に全然顔をださないんだ」 |
| 立花 | じゃあ、知ってる人では外には誰? |
| 佐伯 | 「うーん……あ、そうそう。あの子もだよな。ホラ、腕を失くした」 |
| 神崎 | そ、そうだったのか。(笑) |
| 立花 | ううーん。(頭を抱える) |
| 佐伯 | (ふっと笑って)「そろそろ来るのかもしれねぇな」 |
| 立花 | なにが? |
| 佐伯 | 「おやっさんが言ってた『ヤバイ時代』って奴が、さ」 |
| 立花 | …………。 |