あの、悪夢のような『蜘蛛の巣事件』からしばらく後の土曜日。紫と神崎とまりあは、事件に巻き込まれた友人や家族の見舞いに黒須総合病院へ来ていた。この病院は、この近辺では比較的規模の大きい総合病院で、クレハデパートから救出された人々の大半が、ここへ収容され、検査や治療を受けている。
神崎 サークルの頭が病院行きじゃ、週末の活動もできんよなぁ。
DM 鳥羽はちゃんとおとなしくしているが、白虎は元気を持て余しているようだな。「早く外で遊びたいぜーッ」(笑)
神崎 おお、元気に走りまわっとる。(笑)
DM そのたび、注意されて病室にもどされる、と。ここの病院には、みんなの予想どおり(笑)、紫のおじさんも入院している。おじさんの家は、けっこう裕福だから介護の人をやとっていて、身の回りの世話などで紫に面倒をかけることはめったにない。おじさん自身が、あまり紫を病院に呼ぼうとしない。だが、この日はどういうわけか、おじさんのほうから会いたいと電話がかかって来た。
紫 病院までいけばいいのかな?
DM うん。すると、そこで偶然、弟の見舞いに来ていたまりあと、悪友たちの顔を見に来た神崎と出会う。で、紫がこれからおじさんの病室へ行くというので……
紫 いくんだよーん。
DM すると、ふたりは「ついていく」ということにします。(強引)
まりあ・神崎 ぶーっっ(笑)
まりあ 「弟が、アイスクリームを食べたがってるのォ」
紫 こいつ‥‥もしかして、ブラコン。(笑)
神崎 「いきなり、鳥羽のやつがノートをとりにこいって‥‥」(笑)
DM まぁ、つべこべいいながらも、病室についちゃいます。
紫の叔父の病室は、一人部屋だった。ちりひとつ落ちていない明るい部屋の中へはいっていくと、壮年の男性がベッドから身を起こした。
紫の叔父、真駈 直也である。
直也 「よくきたね、紫」
紫 「おじさん、起きなくてもいいのに……」
直也 「かわいい姪子がせっかくきてくれたんだ。それに、今日はわたしのほうが呼んだのだからね」
DM おじさんの顔色はあまりよくありません。しずかに笑っているけど、ちょっとかげりがある。
紫 「あんまり、具合がよくないんじゃないの?」
直也 「だいじょうぶ。心配ない。ただ、おまえの顔が見たくなったんだよ」
まりあ 死期が近いんじゃないの?(一同爆笑)
神崎 そうかも。
紫 やめてー!(うーん、いい仲間をもったな)
直也 (神崎とまりあの方を見て)「君達は紫の友人かい? この子は元気がありすぎるところがあるが‥‥」
紫 くぅーん(泣)
直也 (苦笑)「ほんとうは、優しい良い子なんだ。これからも、よろしく頼むよ」
まりあ 多分。(笑)
直也 「‥‥すまないが、すこしだけ紫と二人だけにしてもらえないだろうか?」
神崎 じゃあ、ごゆっくり。
紫 ははははは‥‥ともかく、おじさんと二人になったよん。
ドアがしまると、直也は、それまでの穏やかな表情を打ち消して、真剣な瞳を紫へむけた。
直也 「我々、真駈の一族には、まれに普通の人と違った能力を持って生まれてくるものがいる。だが、力の代償とでもいうかのように、一人の能力者の誕生と共に、ほかの親族が死んでしまう。そのことは知っているな」
紫 「うん‥‥」
直也 「おまえの父さんや、母さん。私の両親もすでにこの世にいない」
紫 「でも、そんな言い伝え信じちゃいないけどね。だって、おじさんが生きてるんだもん」
直也 「おまえのことを責めているんじゃないよ。私も彼らの死がおまえの不思議な能力と、なにも関係無いと知っている。それどころか、私がこんな体であるために、子供のおまえに親らしいことをなにもしてやれなくて、申し訳無く思っていたのだ」
紫 「え‥‥いや‥‥」(ちょっと当惑)
直也 「おまえは、力にゆがめられることなく、まっすぐに育ってくれた。それが、私の何よりの喜びだ。今まで私が生かされていたのは、きっとおまえの成長を見届けるためだろう。‥‥私の役目はそろそろ終わりに近づいているようだ。感じるのだよ。私も真駈の人間だ」
紫 いや、そんないきなり死ぬようなことを言わないでほしいなぁっ。(固い笑い)
立花 おお、今振ったサイコロ3つ全部、1。(一同爆笑)
紫 縁起わるすぎるぅぅっっ。(泣)
直也 「もし、私がいなくなったとしても、けして心をゆがめてしまってはいけない。真駈の力、いや、お前の力は忌避するものではなく、未来をつかむための鍵だと私は信じている。おまえには、神崎君やまりあさんという友達がいる。とくに、神崎君がもつ力は我々のものとは異質ではあるが、その力ゆえに大きな選択を迫られることになるだろう。そのとき、お前は彼の力になっておやり。そうすることで、お前の未来も自然と定まって行くだろうから」
紫 「わかりました。おじさん」
そのころ、廊下にでている神崎とまりあは‥‥
DM 廊下のむこうから、見覚えのある人物がやってきます。
神崎 ぎく。(笑)
DM クレハデパートの事件で知り合った風見つららさんです。
一同 ぐがーん。(笑)
つらら 「はぁ〜い、お元気?」
神崎 逃げ出す。
まりあ 「竜ちゃんがにげたよー」
が、つららの動きは神崎のそれよりも数倍早い。あっけなく、とっつかまる。
つらら (顔をのぞきこんで)「そんな、厭そうな顔をしなくってもいいじゃない。せっかく、こんな美人が声をかけてあげてるのに」
神崎 (身を引きながら)「いやぁ、あははははは」
まりあ 「あ、あたし、弟にアイスクリームとどけてくるから」(笑)
神崎 ま、まってくれ。(焦) 「あ、あの、何か用?」
つらら 「あなたたち、あれから身の回りで変わったことはない?」
まりあ 「別に」
つらら 「そう、ならいいけど。あたしのほうでもヒマをみて、あのデパートについていろいろと調べてみたんだけどさ、あそこ、昔、ほこらがあったんだって。紫チャンがもっている鏡は、おそらくそこに祀られていたものらしい‥‥って、コレ全部、氷川神社の神主さんの受け売りなんだけど。鏡について、もっと詳しく知りたいなら、直接相談に行ったほうがいいんじゃない? 奉納してもいいんだし。なんなら、ウチで買い取ってもいいんだけど?(笑)」
一同 うーん。(悩)
神崎 「本人(紫)にかけあってくれないか、そういうことは」
つらら 「どうせ、イヤなんでしょ。ま、アタシの紹介だっていえば、それなりにもてなしてくれると思うから、じゃね」と言って、つららは去って行く。
神崎 もう戻って来るなぁー、とひそかに思っている。(笑)
なかば追い立てられるようにして事務所を出た二人は、久々の仕事でなかなか気分が切りかわらないようだ。だが、立花の憂鬱の原因はそれだけではないらしい‥‥
立花 お願いだから、こいつと一緒にしないでくれー。(笑)
DM だが、ほかの所員がいないとき、タイミングよく二人同時に出勤して来たしね。君達はペアとしてこの仕事につかされる。(笑)
真藤 「ひさしぶりの仕事なのにつまらないなー。ねぇ、綾津さん」
立花 「‥‥‥‥」
DM シカトしとる、シカトしとる。(笑)
立花 「‥‥まぁ、所長のことだから何か考えがあるのでしょう」
真藤 「とは、いうものの、まーたケッタイな依頼をひきうけたもんだよなぁ」
のんきなニュートラル真藤と、納得いかない表情のままの立花は、そうこうしているうちに、目的の病院にたどりついた。
真藤 「俺、病院のクスリ臭いにおい、きらいなんだよなぁ」
DM でも、ついちゃう。(笑) 病院の正面玄関に、こんな形をした機械がある。(といって、イラストを見せる)
真藤 こりゃあ‥‥T92COM(対人用警備ロボット)か。
DM 2台、入り口の脇をかためるようにおかれている。そばには、自衛官が立っている。かれらは、病院の中へはいっていく君達をちらっとみるけれど、とくに呼びとめられたりはしません。
真藤 とりあえず、気楽そうに「なーんだ、ありゃあ? 病院だろ、ここは? あんなもん、自家用車かぁ?(笑)」
立花 「‥‥‥‥」
DM で、入り口の待合い室ホールに入っていくと、真藤はあることに気づく。周囲の外来患者や、入院患者、見舞い人風の人々の中に、君と同じような訓練を受けた動きの人間がまじっている。
真藤 ぴしっと気がつきます。「回りの様子がおかしい」
DM 真藤が、そのことに気を取られていると、車椅子を乗った外国人とぶつかる。
真藤 ひょっとして、赤いジャケットを着て、眼鏡をかけていて、銀髪で、首がちょっと曲がっているとか。(笑)
DM うん。(笑) ひざのうえにはノートパソコンまでのっけているかなー。
一同 うわーっ、STEVEN。(笑)
DM そういう人とぶつかった。
真藤 「あ、すいません」
DM 「こちらこそ、失礼した」と言ったあと、すれちがいざまに、その外国人男性は、ぼそっと小声でささやく。聞き取れたかどうか、そばにいる二人は直感チェック!
立花 どちらを10の位にしてもいいんだよね? (ころっ)うわっ、全然だめ。
真藤 俺、けっこうカンはにぶいんだよなあ。(ごろん)だめ。
DM ああっ、聞こえなかったか。うーん、じゃあ「この建物は‥‥」という部分しかききとれなかった。(笑)
神崎 なんか、致命的なところでおとしたという気が(一同爆笑)
真藤 ふっと眉をひそめて「この建物は‥‥?」
立花 おじさんを見送ります。
DM ふたりが首を傾げていると、階段から、写真の女性がおりてきます。
紫 てけてけてけ。
真藤 結構時間がかかると思ったけど、早めに会えたなぁ。
立花 さて、これからどうしましょうかねぇ。
真藤 相手には、気付かれちゃいけないんだっけ?
DM できるだけね。
真藤 じゃあ、何気ないふりして、横を通り過ぎます。
立花 てけてけてけっと。(笑)
紫 じゃあ、こっちは何も知らないんだから、気づかずそのまま行き過ぎる。
DM 君達3人(紫、まりあ、神崎)は、同じ行動をしていてくれ。
神崎 そうなん?(笑)
まりあ いつのまに。弟のお見舞いにきただけだったのにぃ。
神崎 まぁ、それはすんだということで。
真藤 じゃあ、通り過ぎた後、にっこり笑って「ターゲット発見」
立花 うーん。(こめかみをおさえている)
真藤 どうしてそんなに、こわがるの? まだ豹変してないのに。
立花 気を許していない。(笑)
DM ところで、つららちゃんの話をわすれたとか、言わないでくれよ。
神崎 伝えとかなきゃいかんな。まぁ、かくかくしかじか、と。
紫 「ふーん、あの鏡がねぇ」と言ってバッグの中から、チャッ!(取り出す音)
神崎 「うん、それそれ」(笑)
まりあ 「銅鏡かぁ、古いもんだよねえ」
紫 「一見、ガラクタ。でも、50万で買いたいって言ってた人もいたしー」
神崎 「そういや、つららちゃんも買いたいって言ってたな」(笑)
紫 「ええーっ、やばいんじゃないの! まあ、とりあえず、その氷川神社にいってみるべきなのかなぁ?」
神崎 「まあ、顔だけ出すだけでもいってみるか」つららちゃんの仕返しも怖いし。これは、心の叫び。(一同爆笑)
まりあ よっぽどこわいんやなぁ。
立花 そのつららちゃんと友達してるあたしって‥‥(笑)
神崎 だから、やめといたほうが良かったのに。(笑)
紫 でも氷川神社ってどこにあるか、あたしは知ってるのかな?
DM 知っている。ここからだと、バスで3駅くらい離れているかな。歩いていけない距離じゃない。
紫 なら、てけてけ歩いていこうかな。
まりあ 月曜日テストなんだけどぉ。
DM でも、好奇心の押えられないまりあはついていった。(一同爆笑)
真藤 とりあえず、かなり離れた後ろを‥‥(立花のほうを向いて)「どう尾ける? カップルのふりでもしようか?」
立花 ぐふうっっ。(硬直)
真藤 「そんなロコツに厭そうな顔をしなくても」
立花 いや、心の中で思っているだけで、無表情のまま。
真藤 だって、無表情だけど厭そうなんだもん。(笑)「ちえっ、つまんねぇの」あっちを向いて腕を頭の後ろで組む。まあ、30センチ以上あけてついていく。
立花 ムッチャちかいぞ!(笑)
真藤 いや、『以上』だから。まぁ、猫なんてだきあげて、にゃあにゃあ言わしながら、つけていく。
DM 前の3人もまさか自分が尾けられているとは思わないから、まあ尾行は成功する。
まりあ テストのことで頭がいっぱいー。
DM では、なにごとも起こらぬまま、神社に到着します。