EXシリーズ第3話です。


どうぞ!!

第3話『試される北の大地の住人達』

 ある夜、家に一本の電話が掛かって来ました。
「もしもし。愛田ですが。」
「あ、めぐみちゃん。お父さんいるかしら?」
声の主は、札幌でTV局のディレクターをしている陽子おばさま
でした。
「ちょっと待ってくださいね。お父さ〜ん。」
私は少し離れた所にいたお父さんを呼びました。
「はい、電話を変わりました。おお、陽子か久しぶりだなぁ。元気か?」
陽子おばさまは、お父さんの妹にあたるんです。
「本当に久しぶりね兄さん。今回はお願いがあって電話したの。」
それから数十分くらい2人の会話は続きました。
「ああ、他ならないお前の頼みだ。なんとかしよう。」
「それじゃ、頼むわね。」
電話を終えて、お父さんが戻ってきました。
「それで、陽子さんからはどんな用事だったんですか?」
お母さんがお父さんに尋ねました。
「ああ、陽子の勤めているテレビ局のキー局のTVスタッフが
北海道の牧場の様子を番組にしたいと言って来たんだ。」
「まぁ、そうなんですか。」
「他ならない妹の頼みだから受ける事にしたよ。」
「そうですね。」
「ね、TV局の人がくるの?楽しみだなぁ。」
「こ〜ら、あくまでも私達の普段の生活を撮影しに来るんだぞ!!」
「は〜い。わかっていま〜す。」

 なんと、この愛田牧場をTV局の人が撮影しに来る事になりました。
もし、これが放送されたらきっと橘さんの住んでる所にも流れます。
私はその後で橘さんに連絡しました。
「でね、今度の金曜日に来るんだって。」
「へ〜っ、それは凄いね。」
「お父さんは、あんな事言っていたけど内心、楽しみにしているん
じゃないかなぁ。」
「う〜ん、でも耕作さんは違うと思うなぁ。」
「どうして?だってTV局だよ。全国に流れるんだよ。うれしい
筈だよ。」
「本当にそうかなぁ〜」
私は、橘さんが言いたい事がわかりませんでした。その時は・・・・・

 そして、約束の金曜日が来ました。陽子おばさまは担当している
「料理の下手人」の収録で残念ながら同行出来ないそうです。
「それでは、撮影を始めましょうか。」
「で、どうすればいいんだね。」
「まずは、家族団らんの所から行きましょうか?」
そんな感じで、撮影は進んでいきました。
しかし、みんなが気になってた事が一つだけありました。
なんて、言えばいいのか解りませんがなにかが、いつもの私達らしく
ないんです。
そして、問題の搾乳の撮影です。
「はい、そこで搾乳をして・・・」
「こ、こうですか・・・」
「う〜ん、なんか違うなぁ。おいカメラ、もっと下がって。」
「こ、こうっスか?」
カメラマンさんはどんどんバックして牛のすぐ後ろまで来ました。
その時・・・・・・。
「おい!!今すぐそこをどくんだ!!」
「へっ?」
カメラマンさんが退けた次の瞬間、牛が後ろ足を大きく蹴り上げました。
「び、びっくりしたぁ〜。」
「だから、あれ程言っただろう。いいか、牛達はとっても神経質なんだ
何かちがった事があったらびっくりするんだ。そうして興奮したら
後ろ足を蹴り上げるんだ。もし、その直撃を受けたら骨折は間違い
ないぞ。」
たしかにお父さんの言う通りです。牛の蹴り上げる力は物凄いです。
ちょっとした板なんか簡単に割ってしまいます。
「す、すみません。」
「それから、一つ言っておく事がある。」
「なんでしょう?」
「先程からの撮影を見ていると演出が多いような気がするんだ。」
「まぁ、そりゃぁ〜。」
「それがマズイ。」
「はぁ。」
 そうか、そうだったんです。私も何かが引っ掛かる様な感じが
したんですが、この事だったんです。
確かに、普段やらなさそうな感じの事もやったりしていましたし・・・
妙に北海道弁に拘ったり。
それが、お父さんの一言で解決しました。

「私達の生活を写すのなら変な演出や小細工はいらないだろう。」
「そうですね。」
スタッフの皆さんも反省したみたいです。

「ところで、君達は北海道のキャッチフレーズは知ってるかね。」
「ええ、試される大地・・・ですよね。」
「ああ、そうだ。私も最初にこのキャッチフレーズを聞いた時には
随分疑問を抱いたよ。なんで北海道をPRするのに、こんな感じ
なんだって。でも、最近は解るような気がしてきたよ。」
「それは、どういうことですか?」
「この四季のハッキリした日本の中でも、とりわけ季節感を感じ
捕れるのがこの北海道なんだ。そんな北海道に憧れて私の様に
本州から来る人も大勢いる。もちろん、この土地に生まれながらに
住む人もだ。そんな私達に自然は、いい顔ばかりはしてくれない。
時には暑い日もあるし、凍てつく様な寒い日もある。そんな中で
私達が暮らして自然の大きさを知って自分達も成長していく。
自然は私達を試し、私達がどれだけこの北海道の未来を発展させ
られるかまた試す。これこそ試される大地だと私は感じたんだ。」

 私も、お父さんの意見が正しいと思いました。
最近、開発で自然が少なくなって来たけどまだまだ自然は私達より
大きいんです。そんな自然の中で私達は暮らさせてもらっています。
「確かに・・・そうですね。」
撮影スタッフの皆さんもお父さんの話に感銘したようです。
「よし!!こうなったら変に演出を付けたりはしない。ありのままを
放送しよう。」

 それからの撮影は順調に進みました。
そして、全ての撮影が終了した日・・・・
「今回は、本当にありがとうございました。」
「いろいろ言って済まなかったね。」
「いいえ、それに・・・・」
「それに?」
「ここに来る前に札幌のTV局に行ったんです。その時に春野
プロデューサーに会いまして「なんたって私の兄さんだから
一筋縄では行かないわよ。」って言ってたんです。」
「ハハハッ、あいつはそんな事も言ってたのか。」
これにはお父さんも一本取られたようでした。さすが陽子おばさま。
「今回の放送、楽しみにしててください。きっといい物にして
みせますから。」
「それじゃぁ、楽しみにしているよ。」
「はい、お世話になりました。」
「気を付けて帰ってくださいね。」
「それじゃぁ、私も楽しみにしてますね。」
「はい、ご家族の方もお元気で・・・」
そう言うと、スタッフの皆さんが乗った車は愛田牧場を後にして
行きました。

そして、半月程したある日・・・・・

TVでは、あの時撮影した番組が流れていました。
スタッフの人が言ってた通りにありのままを写していました。
しかし・・・・
「あ、あの時の事だ!!」
お父さんが試される大地の事を話している時の映像も入っていました。
どうやらカメラマンさんが偶然撮った物を放送したようです。
「これまで、撮っていたのか。」
これを見た時のお父さんはなんだか照れていました。

その晩、私は橘さんに電話を掛けました。
「TV見たよ。久々にめぐみちゃんも見れて嬉しかったよ。」
「本当?私もなんだか照れちゃうなぁ。それでね、撮影が決まった
時の晩に橘さんが言ってた事なんだけど、あの時は正直な話何の事
か解らなかったけど、こうして見るとこういう事を言いたかったん
だなぁ〜って、思っちゃった。」
「そうだね。耕作さんは正面から酪農に取り組んでいる人だもんね。」
「へへ、やっぱり橘さんって凄いね。」
「あれ、今頃気付いた?」
「もう、意地悪なんだから。アハハハ・・・」
「ハハハッ。」
「それじゃぁ、今日はもう寝るね。お休みなさい、橘さん。」
「おやすみ、めぐみちゃん。」
受話器を置いて私も考えていました。
お父さんの考えって凄い。私もあれぐらいの夢に対する情熱を
持てるんだろうか?って・・・・
そんな事を考えてました。
「よしっ、明日も元気に頑張ろう!!」

EXシリーズ第3話 おしまい。



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