『FMN』第12章です。


第12章『はじめまして・・・。』(後編)

めぐみ>
 私が病院に着いた頃には、もうお母さんのお産が
始まっていました。
少し暗い待合室の椅子には、お父さんが手を組んで
頭を下げ、祈っているようだった。
『おお、めぐみ。来たのか。』
『うん、搾乳終わらせてきたよ。』
『お前にも、大変な思いをさせてしまったな。』
『ううん、これくらい大丈夫だって。なんて言っても
これから生まれてくる赤ちゃんの、お姉ちゃんになるん
だもん。』
『そうか、めぐみもすっかり立派になったな。』
『えへへ・・・。』

耕作>  あれから、何分。いや・・・。何十分が経っただろう。
分娩室の赤いライトは、まだ付いている。
不安が否応なしに、私に向かってくる。
そんな時・・・。

『ねぇ、お父さん。』
 めぐみが私に話しかけてきた。
『わたしの・・・。私の生まれる時はどんな感じだったの?』
『あぁ、めぐみが生まれた時の事か。』
 私は、めぐみに生まれた時の事を話した。
『あの時はまだ東京にいて、私も仕事を任せてもらえるよう
になった頃だった。あの時は、お母さんのお母さん。つまり、
めぐみのおばあちゃんが付き添いにいたんだ。』
『それで?』
『おばあちゃんから『子供が産まれそうだから早く来て
くれ』って言われたんだ。』
 静かな待合室の中で話は続いた。

『お父さんなぁ、その時はどうしても離れる事が
出来なかった。』
『結局、どうしたの?』
『仕事をしてても、これから生まれてくる自分の子供の
事で頭が一杯になって、どうしようも無くなって必死で
プログラミングして、その足で病院に駆けつけたら間も
なくめぐみが生まれたんだ。』
『お仕事は?』
『そんな思いで組んだもんだから、かなりバグがでて
上司にこっぴどく叱られたさ。』
 私はその時の様子を話していた。
めぐみは『お父さんらしいね。』と言って笑っていた。
新しい命の父親になる気持ち・・・。
これから、またそれが始まろうとしていた。

めぐみ>
 私が生まれた時の話を聞いて改めて感じました。
やっぱり、お父さんは優しい・・・。

 そんな事を思っていた時。分娩室から赤ん坊の泣き声が
聞こえました。
『生まれたんだぁ。』
 そう言ってお父さんの方を見ると『あぁ。』とたった一言
言っていた。でも・・・。その目には、うっすらと涙が
溢れていた。
少しして、私達は看護婦さんに呼ばれました。
『おめでとうございます。元気な女の子ですよ。』
 
 赤ちゃんは女の子だった。私にとって、妹が出来たのです。
 
 お父さんは、赤ちゃんとお母さんに向かって『ありがとう』
と言ってた。そんなものだから私の目にも涙が溢れて
きました。
 お母さんは、安心した顔で『無事に生まれてきてよかった
わ』って微笑んでいた。
 赤ちゃんを見るとまだ生まれたばっかりで本当に字で表す
通り真っ赤な顔をして元気に泣いていた。
とにかく無事に生まれて良かった・・・。

耕作>
 とにかく安心した。里子も無事だったし、赤ん坊も元気な
子が生まれてくれた。
新しい家族が増えて、正に感無量だった。

それから数日後・・・。
めぐみ>
 赤ちゃんの名前が決まりました。名前は『愛田 理沙』
ちゃんになった。
お父さんの話では、昔のコンピューターに付いていた名前
らしい。最初は、どうして?と思ったけど話を聞いて納得
しました。
耕作>
 子供の名前は理沙に決めた。これから大きくなってくる頃
今よりも、国際的になってくるだろう。そんな時、親しまれ
やすい名前が一番いいと考えたからだ。名前の様にグロー
バルに考える子に育ってくれたらいいと思う。
めぐみ>
 お母さんも退院してきて、理沙ちゃんの世話をしている。
私もお姉さんとして、いろいろと頑張らなきゃ。
橘さんにも連絡しなきゃ。
『私たちにとって、少し早いクリスマスのプレゼントが、
やってきました。』ってね。

第12章 おわり。
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