『FMN』の第14章です。


第14章 『再び・・・(前編)』

 クリスマスも終わり、みんなの心は年末に向けて
動き出しています。
 でも変わってますよね。クリスマスってキリスト様の
お誕生日をお祝いするのに、その1週間後には神社に行って
お参りするんですから・・・。

 そして、あの人が・・・橘さんが北海道にくる日が
近づいてきました。

『めぐみ〜電話よ〜。』
 お母さんが呼んでいたので客間に行ってみた。
『はい、札幌の春野さんの所からよ。』
『琴梨さんの所?』
『はい、お電話かわりました。』
『あ、めぐみちゃん。琴梨だよ。』
『琴梨さん。お久しぶりですね。』
『本当に。前にめぐみちゃんの所に行ったのは高校に
入ってすぐの時だったもんね。』
 琴梨さんはお母さんとの2人暮しで、お母さんの陽子
さんはTV局に勤めててとても忙しい方です。
琴梨さんと私はイトコ同士で、私のお父さんと琴梨さんの
お母さんが兄弟なんだそうです。

『お元気だった?』
『うん。部活の方も3年生が抜けてからレギュラーの
座があるから頑張ってるよ。それからお兄ちゃ・・・
橘さんの方から電話が来てると思うけど28日に来るん
だって。』
『うん。聞いてるよ。』
『それでね。その前の日に家に遊びに来ない?』
『いいの?』
 私は、28日の朝に家を出て橘さんに会いに行く予定
でいたのでこのお誘いはとても嬉しかったです。
『うん。めぐみちゃんなら大歓迎だよね。お母さん。』
そう言うと、受話器の向こうで陽子さんの声が聞こえていた。
『うん、それじゃ27日のお昼頃行きますね。』
『楽しみにしてるよ。』

 受話器を置くと、お父さんとお母さんに了解を取った。
2人の答えは、OKでした。
自分の部屋に戻ると自然と嬉しくなってきました。
『にゃぁ〜』
『クロちゃん。私ね、明日札幌の春野さんの所に行くの。』
『にゃ?』
『楽しみなんだ、とっても。』
『にゃぁぁぁ〜』
 クロちゃんも、私のうれしい気持ちが分かったのかうれしい
鳴き声で返してくれた。
その日はなかなか眠る事が出来なかった。

 そして、次の日・・・

 私はいつもの様に朝の搾乳をしていました。
さすがに冬場の北海道は寒いです。牛達の吐く息も、真っ白く
なっています。
履いている軍手を通してもその寒さは伝わってきます。
でも・・・。明日、橘さんに会えると思うと普段以上に
張り切ってしまいます。
昨日の電話では、チケットも取れてあとは行くだけだって
言ってました。

『めぐみ、今日はもういいから支度しなさい。』
『はーい。』
 私は家の中に戻って、寒さで凍えた体を暖めるために
お風呂に入りました。
『あ〜楽しみだなぁ。』
 気付くと、自然と鼻歌まで出ていました。
曲は、あの夏の日に聞いた『夏の思い出』という曲です。
『ララララ、ラララ・・・・』
窓からは、朝日がお風呂場を包み込んで、とてもいい天気です。

ザバァ〜

 お風呂から上がると念入りに髪を乾かし、お気に入りの
洋服に着替えました。
『よし、今日も元気!!』
 私は鏡を見て、自分に向かって気合いを入れました。
『お母さん、おはよう。』
『おはよう、めぐみ。』
『里沙ちゃんも、おはよう。』
 里沙ちゃんはまだ、ベビーベットの中で寝ていました。
なんて言ったって、妹はとてもかわいいです。
私もお姉ちゃんとして、頑張んなきゃ。
『今日は、何時の汽車で行くの?』
『えーとね。8時・・・。あーっ!!』
『どうしたの?』
『もう、出掛けなきゃ!!』
『そうね。そろそろね。』
『お父さんに言ってくる。』

ガチャ。
『めぐみ。そろそろ・・・』
『うん、わかってる。駅まで送っていって。』
『ああ。車の用意は出来てる。』
『それじゃぁ、行ってくるね。』
『気を付けてね。あ、それと春野さんや橘さん
にも宜しく言ってね。』
『うん。わかった。』
 そう言って、今朝搾乳した牛乳を持たせてくれました。
『行ってきます。里沙ちゃんも行ってくるね。』
 里沙ちゃんはまだ、おねむの様です。
『クロちゃんも、行ってくるね。』
『にゃぁぁ〜』
『いってらっしゃい。』

 私は、お父さんに車で送ってもらって駅に着きました。
美瑛駅は外見が石で作られた全体的に白っぽい駅です。
『それじゃあ、めぐみ。先方に失礼の無い様にな。』
『うん、お父さんも気を付けて帰ってね。』
『ああ、わかった。橘くんにもよろしくな。』
『それじゃぁ、行ってきます。』

バタン!!

 私は、お父さんの車を見送った。
『さてと、切符を買わなきゃ。』
 さして広くない駅舎の中に入り、私は切符を買いました。
美瑛から直接札幌には行けないので取り合えず『富良野線』
に乗って『旭川』まで行って、そこから『函館本線』に乗り
換えて、『滝川』、『美唄(びばい)』、『岩見沢』そして
札幌の近くの『白石』まで行き、そこから札幌に行きます。

『さてと、切符も買ったし・・・ん?』
 私は、以前見た事のある人が、駅舎の中に入ってきたのに
気付きました。
『今日もいい天気じゃの〜』
 そのお爺さんは、私が橘さんを迎えに行った時に勘違い
をしてしまった『間 朴堂(はざま ぼくどう)』さん
というお爺さんでした。
 どうやら、駅の近くに住んでいて、ここには散歩してる
ようです。
『んぁ、どっこいしょ。』
『あの・・・間さん。』
『んぁ、ワシの名を知ってるとな。はて〜誰じゃった
かの?』
『夏に、勘違いしてしまった。愛田めぐみです。』
『んぁ、ワシは間じゃ。愛田ではない。』
『あの〜そうじゃなくて。愛の『あい』に田んぼの『だ』
と書く愛田です。』
『んぁ、だからワシは『あいだ』ではなく間じゃ。』
『あの・・・。』
 このままで行くと夏みたいに、ずっ〜と会話が続い
ちゃうので、これ以上は会話をしなかった。
『間もなく旭川行きの列車が到着します。』
 私は、汽車にのる時間もあるのでお爺さんに一言だけ
『間さんも、お元気でね。』
『うむ、わかった。』
 そう言って私は、ホームに出た。燐とした寒さが
頬に当たりとても清々しいです。

フォン!
 向こうから警笛と共に汽車が入ってきました。
私は、汽車に乗り込むと窓から町の景色を見てました。

2ページ目に・・・


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