『FMN』の第9章です。


第9章 『アップトゥー・ザ東京(後編)』

 私は、橘さんの家の前まできて、勇気を出して
そのチャイムを押した。
『どちら様ですか?』
『あ、あの。北海道から来た・・・。』
『ああ、めぐみちゃんね。どうぞ、中に入って。』
『おじゃまします。』
 私は、橘さんの家の中に入っていった。
とても、落ち着いたインテリアがとても良いセンス
だった。
『どうぞ。』
『どうも、すみません。』
 橘さんのお母さんが出してくれた紅茶はとても
おいしかった。
一緒に出してくれたケーキもあっさりとした味が
良かった。

『あの子ね、今その食べているケーキのお店で
アルバイトしているの。』
『そうなんですか。』
 橘さんは、ここの近くのケーキ屋さんでアルバ
イトをしていて、忙しくてどうしても休めなかっ
た。ということだった。
『おいしいでしょ。そのケーキ。』
『はいっ、とっても。』
『あの子が『どうしても』って言って、店長さん
から特別限定のケーキを分けてもらったんです
って』
『そうなんですか。』
『ええ、北海道から大切な人が来るからってね。』
 と言って、お母さんは微笑んでいた。
私は、そう聞くと顔が真っ赤になってしまっていた。

『かわいいお嬢さんね。あの子が頑張ってるのも
わかるわ。』
『えっ、え〜っ。わた、私なんか・・・。』
『本当よ、あの子ね。北海道に行くまでとてもつまら
ない顔してた。でもね、家に帰った時になんか
こう・・・。う〜ん、なんて言うかなぁ。とてもいい
顔をして帰ってきたからびっくりしたの。』
『そうなんですか。』
 確かにそう思った。牧場で頑張っていたり、一緒に
行ったラベンダー畑や、熱気球のホテル・・・。
とても、笑顔が輝いていた。

『あの子が今アルバイトを頑張っている理由が
分かる?』
『えっ。』
『あの子、冬にまた行くんですって。北海道・・・。』
『本当ですか。』
『ええ、その為にも頑張らないとって張り切ってたの。』
『そうですか。』
 
 覚えてくれていたんだ。約束を・・・。
『また、冬に行くよ。』という約束を・・・。

『こんな、素敵なお嬢さんがいるものね。』
『そ、そんなぁ・・・。』
 私は、おかあさんの一言にすっかり舞い上がって
しまった。 『ね、よかったらあの子の所に寄ってみたら?』
『その、やっぱりいいです。』
『どうして?』
『橘さんも一生懸命頑張ってるとおもうし・・・。』
『そうね、お楽しみはもう少しおあずけって所かぁ。』
『あっ、そういう意味じゃないんです。』
『わかるわ、ふふふっ・・・。』
 今のお母さんの笑い方、橘さんにそっくりだった。
そしてふと思い、時計を見るとお父さんとの待ち合わせ
の時間が近づいていた。
『あの、父との待ち合わせがあるのでこの辺で
失礼します。』
『あら残念ねぇ、夕食を一緒にと思ったのに。』
『ごめんなさいっ。』
『わかったわ、また遊びにきてね。耕作さんにも
宜しくね。』
『はいっ、お邪魔しました。』
 私は、橘さんの家を後にした。
 そして、橘さんがアルバイトをしているケーキ屋
さんを少しだけ覗いてこようと思った。
 お店の中はとても賑わっていた。
そして、橘さんの姿も見えた。
忙しそうに店内を動き回っていた。
あの時と同じ真剣で一生懸命な姿で・・・。
 あまりにもいそがしそうだったので、私は
そのまま、その場を後にした。

『お父さ〜ん。』
『おお、めぐみ。どうだった?橘君には会えたか?』
『ううん。今、アルバイトで一生懸命だったから。』
『そうか、残念だったなぁ』
『でも、そうでもないかも・・・。』
『えっ?』
『ふふふっ・・・。』

 そして、私は再び北の地。そして、家に戻っ
てきた。

あと、1か月・・・。
また、あの人が来てくれる・・・。
 そう思うと、また一日を迎える楽しみが増えて
いくのが、うれしかった。

このイラストは、AsiAAquA様から
第9章のイメージイラストとして頂きました。
お店の中を見つめるめぐみちゃんが可愛らしくて
そして、いじらしいです・・・・
本当にありがとうございます。



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