暗殺――虎人 VS 妖精
- 238 名前:ロン投稿日:02/03/24 22:31
- >ロン VS 御神苗優 導入
上海はその夜、雨の白いベールに包まれていた。
すでに数時間、ロンは闇に身を潜めている。その場所は標的の住居を監視するには格好の場所だったが、しかし容赦無く雨に曝され続けていた。
羽織ったコートの襟首から雨水が入り込み、ロンの容赦無く体温を奪っていく。だがロンは表情をまったく動かさずに監視を続けた。
今夜の"標的"は上海では名の通った男だった。すでに80を越えて引退しているはずだが、未だ裏の社会に隠然たる影響力を持つ。
今夜、重要な会談に標的が出席することはわかっていた。暗殺の目的は、会談の妨害なのである。
もっとも、ロンはそのあたりの事情には無関心だった。
一度放たれた矢は己で考えることをしない――暗殺者はただ標的を殺すことだけを考えていれば良い。それが生き方だ。
会談に間に合わせるには、時間的な余裕はそろそろ無い。
ロンの想念に応じるかのように車が玄関に回され、屋敷の玄関が開いた。
- 241 名前:御神苗優投稿日:02/03/24 22:45
- ロンvs御神苗優
俺は、窓に叩きつける雨を見ていた。
「こんな日は、よく荒れるんだよな、色々と」
魔都、上海。俺は護衛の任務に当たるため、とある有力者の家に居た。
アーカムとの提携。それは上海裏社会の均衡を破るには充分過ぎる代物だった。
暗殺を恐れた男は、護衛を頼んだ。その任務に選ばれた不幸な奴が俺だった。
正直、なんでS級工作員の俺が、こんな仕事にかりだされにゃいかんのか・・・・・・
『御神苗さま、こちらにいらしたのですか』
何時の間にか、俺の後ろには一人の少女が立っていた。
依頼人の孫娘、だったか?まだ13,4歳程の少女。
「あぁ、すまん、そろそろかい?」
『い、いえ、あの、まだお時間ありましたら、お話でも、と思いまして・・・・・・』
その時、俺を呼ぶ声がした。さぁ、仕事だ。
「すまねぇな、時間みたいだ。それじゃ、また後で」
俺は少女とともに広間へと移動する。
男は既に用意を整えていた。
傍には護衛の男が3人、立っている。
『それでは、よろしくお願いいたしますよ、妖精』
「あぁ、仕事はきっちりさせてもらう」
短い言葉を交わすと、玄関へと歩いていく。
それを見ながら、孫娘は心配そうに見送っていく。
―――そして、運命の玄関は開いた―――
- 243 名前:ロン投稿日:02/03/24 23:02
- >238>241 ロン VS 御神苗 優
護衛は4人。標的は・・・歩き方の癖で分かる。間違いなく本物だ。
ロンは隠れ場所から走り出た。コートをなびかせ、水溜りを蹴立てて走る。
一人目が振り向くと同時に鋲を目を狙って投じる。
のけぞる護衛の体を他の3人からの盾として接近、親指一本の貫手で喉を潰す。
勢いを殺さず、体当たりするようにして亡骸を2人目に突き飛ばす。
その影から走り出、護衛の構えたサブマシンガンの銃口を左手で逸らすと、みぞおちに一撃。内臓の破裂した感触。
ロンはそのまま走り抜け、残り2人の護衛に守られた標的に迫った。
- 245 名前:御神苗優投稿日:02/03/24 23:12
- >243 vsロン
玄関前には既に車が回されていた。
後はこの男を車に乗せるだけ・・・・・・・
護衛の3人は先に玄関へと出ると周囲を警戒している。
襲撃してくるならば、ここか・・・・・・もしくは会見場所。
そして、俺の予想は見事に当たった。
当たって欲しくも無かったけどな。
黒い疾風が走り寄って来る。
一瞬で二人までもが倒された。
俺は残る一人に男を守って室内に入るように指示しながら、
疾風の前に立ちはだかる。
「あんたにゃ恨みも何も無いが、こっちも仕事でね!!
アンタに殺させるわけにゃあいかねぇんだよ!!」
腰のホルスターから愛用のSAUERを引き抜くと、男の頭目がけ、
弾丸を打ち込む。依頼人が逃げ延びるだけの時間は稼がなくちゃな。
- 248 名前:ロン投稿日:02/03/24 23:27
- >245 ロン VS 御神苗 優
「チッ・・・」
舌打ちをもらし、ロンは車両を盾にとって銃撃を防いだ。
1人、手練が混じっていた。残り2人を一気に抜いて殺る目論見が崩れる。
標的は護衛の1人と共に屋内に戻ろうとしていた。時間をかければそれだけ不利になる、迷っている時間は無い。
半身を出し、左手で鋲を投げつけて牽制。
ついでコートを脱ぎ捨てて投げ上げ、跳躍した。体を横にして車を飛び越える。
銃弾が至近を掠める感覚。
濡れたルーフの端を掴んで軌道を修正し、空中から回し蹴りを放つ。
- 249 名前:御神苗優投稿日:02/03/24 23:40
- >248 vsロン
男は車を盾にしながら、こちらに向かって着実に進んでくる。
ナイフを投擲した奴は、移動しながらコートを脱ぎ捨て、
一気に跳躍した。一飛びで車を飛び越えるだと!?
だが、驚愕している暇はなかった。
ナイフを手刀で叩き落すと、身構える。
奴は車のルーフで軌道修正すると、俺に向かって回し蹴りを放つ。
俺は半身を捻るようにそろを避けると、
回し蹴りをしてきた足を掴み、手近な柱に向けて放り投げた。
- 252 名前:ロン投稿日:02/03/24 23:58
- >249 ロン VS 御神苗 優
蹴り足を取られる。外見からは想像できない、強烈な握力。
強烈な力が加えられると同時に、逆足で顔面に蹴りを放った。爪先が相手の頬を掠める。
瞬間、わずかに緩んだ把握を足を捻るようにして強引に振りほどいた。
不完全な投げは勢いにかけ、ロンは空中で身を捻って着地。
位置関係が変わる。
一瞬、ロンは玄関の方へと足を向ける素振りを見せた。ちらりと投げた視線。
それをフェイントに、一気に間合いに飛び込む。
突進の勢いを借りた突きが、スプリガンの顔面を襲った。
- 255 名前:御神苗優投稿日:02/03/25 00:11
- >252 vsロン
奴は掴まれた足を軸に、俺の頭へ強烈なけりを放つ。
首を捻って避けるも、爪先が頬をかする。
頬が裂けた感触と共に温かいモノが流れ出る。
掠っただけでコレかよ・・・・・・・
目の前の男は、強引に俺の拘束を振りほどき、俺の目の前に居る。
お互い、一完歩で届く距離で対峙している。
汗が一筋流れる。
奴の目線が一瞬玄関へと移った。
突入する気か?
俺は微妙に動いた。空気が動く。
奴は一瞬にして自分の間合いに動くや、
高速の突きを放った。
一瞬、反応が遅れた俺は、それを受け流すのが精一杯だった。
吹っ飛ばされた俺は、柱に激突する。
「痛〜〜〜!!やってくれるじゃねぇか、この野郎!!」
俺は崩れた柱から起き上がると、男に向かって飛び込むと、
左の連打から右の正拳を狙う!!
- 260 名前:ロン投稿日:02/03/25 00:40
- >255 ロン VS 御神苗 優
仕留め損ねた。
ロンはどうやら眼前の敵の力量を見誤っていたことに気づいた。
度の入っていない丸眼鏡の奥で、目を細める。
連続した突きをさがりながら捌く。速い。加えて異常な筋力に、受けた手が痺れる。
裂け損ねた一撃が頬を掠めて眼鏡を弾き飛ばし、若干体勢が崩れた所に右のストレートが襲った。
左腕を強引にねじ込んで受ける。受ける瞬間に前腕を外に捻って力を流したが、それでもその一撃は左腕に強烈な痺れを残した。
だが相手の動きも一瞬止まっている。
ロンは右の貫手で目を狙い、同時に右足を跳ね上げ、爪先蹴りで股間を狙った。
- 263 名前:御神苗優投稿日:02/03/25 00:53
- >260 vsロン
俺の攻撃を全て受け流すとはね・・・・・
こいつも生半可な実力じゃねぇ、ってことか。
正拳を叩き込んだ後の一瞬の硬直状態。
そこに奴は目潰しと金的を狙ってきた。
俺はゾクゾクしてきた。
ここまでゾクゾクさせてくれるかよ!!
俺は左で貫手を撥ね退けると、
宙返りをするように後方に飛ぶ。
その際に、奴の胸に一発蹴ることは忘れなかった。
- 268 名前:ロン(虎獣人)投稿日:02/03/25 01:25
- >263 ロン VS 御神苗 優
胸への蹴りを、上体逸らしながら両腕で受ける。後退して勢いを逃がした。
間合いが開く。頬を流れ落ちる雨を気にもせず、ロンは相手を計った。
これ以上時間をかける訳には行かない。下手をすれば増援が、あるいは標的が裏口から逃げる可能性もあった。
己にとっての切り札を、ロンは解放した。
気配が変わる。一種無機質だった暗殺者のそれから、荒々しい猛獣のごときそれへ。
ロンのシルエットが膨れ上がっていく。体毛が伸び、骨格が組み変わり、眼光が獣の光を帯びた。
その姿は、虎だ。強力な爪と牙で獲物を捕食する肉食獣。
だが、この人虎が狩る獲物は人間だ。人食い虎の狂気じみた眼光が、獲物を射すくめんとする。
人虎は先ほどを上回る速度で間合いを詰め、強靭な爪の植わった腕を、頭を狙って振り下ろした。
- 269 名前:御神苗優投稿日:02/03/25 01:34
- >268 vsロン
「な・・・・・・!?」
俺は目の前の光景に絶句した。
男の姿があっという間に黄色い肉食獣のそれにかわっていく。
・・・・・・・これがスプリガンを派遣しなきゃならなかった理由、か。
奴は以前以上の速さで間合いを詰めてきた。
俺は振り下ろしてくる腕を左手で受け流すと、
ナイフを引き抜き、胴目がけて一気に振りぬく!!
- 272 名前:ロン(虎獣人)投稿日:02/03/25 01:43
- >269 ロン VS 御神苗 優
胴を狙った斬撃に、虎は驚異的な速度で反応した。
左手を刃に添えて下に流す。振りぬいた右腕を返し、ナイフの柄に沿えてその方向をコントロールする。
その行く先は、奴自身の太ももだ。
そのままロンはさらに踏み込み、肘をその胸に叩き込もうとした。
- 275 名前:御神苗優投稿日:02/03/25 01:50
- >272 vsロン
俺、確かに奴の胴狙ったよな?
自問自答した。しかし、なぜかナイフは俺の太ももに刺さっている。
だが、疑念に答えを出す前に、肘が俺の胸に叩き込まれた。
なんとか受身は取れたものの、そのまま俺は車に叩きつけられる。
体がめりこんで動きが取れない・・・・・・
やべぇ、殺られる!!
- 277 名前:ロン(虎獣人)投稿日:02/03/25 02:03
- >275 ロン VS 御神苗 優
吹き飛んだ相手を見やる。
殺戮者としての衝動がうずく。だが、かかりすぎている時間がロンを冷静にさせた。
機動力は殺せたはずだ。あれが追ってくるまでに標的を殺し、逃走するのは可能だろう。
跳躍する。迎撃が予想される正面玄関を避け、2階の窓を破って侵入。
人の気配を求め、虎の鋭敏な嗅覚と聴覚を働かせて邸内を探る。
・・・いた。気配の集まりを発見する。
虎は、獲物を求めて邸内を進んでいく。
- 280 名前:御神苗優投稿日:02/03/25 02:08
- >277 vsロン
奴は俺に止めを刺さず、屋敷の二階から中へと侵入していく。
殺させ葉しねぇぞ!!
俺はなんとか車から抜け出すと、正面玄関から再び中に戻る。
護衛に駆けつけた奴らに二階へ移動するよう言いながら、
俺は簡単な止血処理を施すと、護衛たちの後を追って二階へと駆け上がる!!
- 283 名前:ロン(虎獣人)投稿日:02/03/25 02:26
- >280 ロン VS 御神苗 優
サブマシンガンの射撃音が響く。
虎は、うるさそうに跳躍して間合いを殺すと、無造作に鈎爪を振るって射手の顔を肉塊に変えた。
反撃は散発的だった。鈎爪で切り裂き、牙で頚動脈を噛み破り、人食い虎は屍の山を築く。
返り血が、虎の黄色い毛皮を薄汚く汚していった。
部屋の中に気配を察し、虎はドアを体当たりで破って侵入した。武装した3人の男を一瞬にして片付ける。
隣、だ。標的がそこにいることをロンは確信した。
ドアを蹴破る。
いた。標的――80を過ぎてまだ腰も曲がらぬ老人。少女が、老人に抱きつくようにして寄り添っている。
老人は毅然とした態度を崩さなかった。恐らくは類縁なのだろう、少女をかばうようにして暗殺者を睨みつける。
一瞬だけ、虎の歩みが止まった。
一瞬だけだ。何事も無かったかのように二人に歩み寄り、右腕をおもむろに振りかぶる。
一撃で、片がつく。それでこの仕事も終わりだ。
- 285 名前:御神苗優投稿日:02/03/25 03:04
- >283 vsロン
二階は既に屍血でドロドロになっていた。
おれはその中を駆ける。
二人の部屋に入るのと、虎男が二人に腕を振り上げるのはほぼ同時だった。
俺は咄嗟に腕のワイヤーアンカーを奴の腕に射出する。
腕に絡まったワイヤーで動きを阻止された虎は、
苛立たしげな唸り声を上げると俺に向かって駆け寄ってくる。
俺もまた奴に向けて駆け出す。
俺は目を疑った。あの孫娘が俺と虎の間に立ったのだ。
まるで戦闘を止めさせようとするように。
俺はなんとか止まろうとした。
が、遅かった。彼女の体は二人の間に挟まった。
まるで人形のように、少女は床へと崩れ落ちた。
- 286 名前:ロン(虎獣人)投稿日:02/03/25 03:22
- >285 ロン VS 御神苗 優
一瞬、目を疑った。この娘は何を考えていたのか。血塗れの虎を見て、恐怖を感じなかったのか。
だがそれよりも、横たわったその姿が既視観を伴ってロンの古い記憶を呼び覚ました。
思い出せば古傷のように痛むがゆえに、記憶の奥底に沈めて封をした記憶だった。
倒れたまま、二度と起きなかった妹の記憶が、修羅道に落ちる前の記憶が蘇った。
どす黒い、怒りともいえない感情が湧きあがった。
行き所の無い黒い憎念が、殺戮衝動となってロンを支配した。
終始無言だった虎の口から、低く、重苦しい唸りが漏れる。
咆哮した。
右腕でワイヤーを掴み、力任せに引く。
誰でもいい、なんでもいい。虎は、ただただこの衝動をぶつけられる相手を欲した。
- 287 名前:御神苗優投稿日:02/03/25 03:28
- >286 vsロン
虎は低い唸り声を漏らすと、力任せにワーヤーを引っ張る。
なんて力だ・・・・・・・必死に踏ん張るが、ずりずりと引きずられそうになる。
ならば、こっちはそれを利用してやる!!
俺は一気に奴に向かって跳躍した。
奴の引く力と突進力を利用して、俺はナイフを突き出した。
- 288 名前:ロン(虎獣人)投稿日:02/03/25 03:36
- >287 ロン VS 御神苗 優
ロンは一歩踏み込み、ナイフの軌道と交差するように左拳を突き出した。
左腕が大きく切り裂かれる。刃が骨に達していやな感触を響かせた。
だが痛みすら望んでいたかのごとく、虎はただ左拳をたたき付けた。
- 289 名前:御神苗優投稿日:02/03/25 03:44
- >288 vsロン
俺の一撃は命中はした。
だが、奴の拳と交錯したせいで、急所にはあたらなかった。
だが、それでも奴の肩口に突き刺さる。
奴の拳もまた、俺の肩口に命中し、俺は吹き飛ばされた。
だが、腕をつなぐワイヤーのおかげで転倒はしなかったが。
今回は相打ちか・・・・・ならば!!
俺は痛む足で蹴りを放つ。
本命は痛まないほうでの延髄蹴りだ!!
- 291 名前:ロン(虎獣人)投稿日:02/03/25 04:03
- >289 ロン VS 御神苗 優
虎は、蹴りを無造作に顎で受け止めた。
すぐさま二発目の蹴りが延髄を狙う。衝撃で噛み付いていた牙が外れる。
だが、逆足に噛み付かれたために微妙に狙いの外れた蹴りは致命打に至らず、虎は再び獣の目を獲物に向ける。
着地する相手に、蹴りを見舞う。
後ろ回し蹴り。靴を破って飛び出した鋭い爪が、斜め下から孤を描いて頚動脈を狙った。
- 292 名前:御神苗優投稿日:02/03/25 04:16
- >291 vsロン
俺の一発目の蹴りは奴の顎で受け止められた。
ここまでは予定通り。すかさず俺は延髄に蹴りを入れる。
しかし、足に来る感触がいまいちだった。
俺は歯噛みする。 やっぱ噛み付かれたからか。
奴は着地しようとする俺に後ろ回し蹴りを見舞ってきた。
ご丁寧に鋭い鉤爪のオマケ付きだ。
俺は無理やり体を捻ると、両腕を交差させて蹴りを防ぐ。
両腕が痺れる、重い蹴りを喰らい、後ろへと転がった。
やってくれる・・・・・・・・本当にすごいぜ、こいつは!!
俺は歓喜に震える。
すぐさま俺は奴に向かって突進すると、アッパー気味にナイフを振るう。
本命は左のフック!!
- 299 名前:ロン(虎獣人)投稿日:02/03/25 22:45
- >292 ロン VS 御神苗 優
自分はなにをやっているのか、と倦怠感にも似た思考が掠める。
目の前に獲物がいる。己に向って迫ってくる。
・・・・・なぜ獲物がいる?
思考の断裂に苛立ちが募る。若干、理性が戻る。
拳法家としての修練と獣の本能が、半ば自動的にロンを突き動かす。
相手の動きは見えてきていた。
あるじの動きを分厚い筋肉が実行に移すまでに、一瞬、タイムラグがある。
それさえ読めれば、その動きを一瞬早く察知するのは容易い。
顎を狙った一撃を、右掌を差し出してさえぎる。
根元まで貫き通される右掌。そのまま、相手の左手を掴む。
左からのフック――見えている。
体を回転させるように右に捌き、掴んだ左手を捻って逆関節に持っていく。
相手の左側面にまわりつつ、右腕に絡みついたままのワイヤーを獲物の首に絡みつかせた。
逆側を口で掴み、引く――
- 301 名前:御神苗優投稿日:02/03/25 22:59
- >299 vsロン
奴は獣じみた動きで俺のナイフを掴む。
左のフックを捌くと、右腕を逆間接に持っていく。
右腕がきしむ。苦痛にうめく暇もなかった。
奴は絡んだままのワイヤーを首に巻きつけたから。
やべぇ、マジでやべぇ!!
俺は踵で金的を、空いている左肘で鳩尾を狙う。
とにかく、ワイヤーを切断なりなんなりしなけりゃ・・・・・・・
- 303 名前:ロン(虎獣人)投稿日:02/03/25 23:12
- >301 ロン VS 御神苗 優
かかと蹴りを膝で受けた瞬間、鳩尾への一撃がまともに入った。
ワイヤーをくわえていた力が抜け、ワイヤーが緩む。
苦痛に耐え、ロンは相手の膝の裏を蹴り付けた。関節を取った腕を捻り上げ、相手の体勢を前に倒す。
このまま体重をかけて地面に叩き付け、腎臓を狙って自分の肘を落とすつもりだった。
- 306 名前:御神苗優投稿日:02/03/25 23:37
- >303 vsロン
金的は膝でブロックされたが、おかげで鳩尾には肘が当たった。
ワイヤーは緩んだ。息を胸いっぱいに吸い込む・・・・・・・・
だが、のんびりはできなかった。
奴が膝の裏を蹴り付けたのだ。
体が前に崩れたところに、奴は体重をかけてくる。
このまま押しつぶすつもりか!!
俺は左に体を捻り、
無防備になっている奴のこめかみに右の拳を叩きつける。
- 309 名前:ロン(虎獣人)投稿日:02/03/25 23:53
- >306 ロン VS 御神苗 優
こめかみを狙った拳を、額の厚い骨で受ける。
体勢が崩れる。もつれ合ったまま二人は倒れた。腎臓を狙った肘は、床板を陥没させるに留まる。
ロンは、体重差を利して相手を押さえ込もうとした。掴んだままの腕を更に捻り上げる。
狙いは首筋だ。
牙で、噛み千切る。
- 310 名前:御神苗優投稿日:02/03/26 00:06
- >309 vsロン
俺の一撃を、奴は額で受けた。
・・・・・・なんちゅう額だよ・・・・・・俺の一撃受け止めるなんてよ!
俺たちはそのままもつれたまま床に倒れこむ。
奴は俺の左腕を更に捻り上げると、
俺の首筋めがけてその鋭い牙が襲い掛かってくる。
俺はとっさに身をずらし、首筋にか見つかれるのだけは免れた。
だが、肩口に食い込む牙は、ぎりぎりと肩を噛み砕こうとしている。。
膠着状態を打破しようと、俺は奴の目に貫手を放つ。
それを見た奴は一瞬、力を抜いた。
その一瞬の隙に、俺は無理やり左腕を引き抜き、
間合いを取るように床を転がる。
だが、無茶をやったおかげで、左肩を痛めちまった。
左腕は、しばらくは使えねぇな。
俺は立ち上がると、再び虎人と向き合う。
- 319 名前:ロン(虎獣人)投稿日:02/03/26 00:57
- >310 ロン VS 御神苗 優
ロンは、相手を見つめた。
攻防が、若干熱を冷まして冷静さを取り戻させていた。
ふと、声が耳に入る。虎はぴくりと耳を動かし、ちらと視線をそちらにやった。
少女を、老爺が助け起こしていた。かすかに少女のうめきが聞こえる。
安堵に似た感情を、ロンは奥底に封じ込めた。
殺人者として生きてきた自分に、そんな感情は不要なだけだった。
ワイヤーは、未だ虎と護衛者とをつないでいる。
殺す、だけだ。暗殺者は殺すことでしか生きられない。
そう、割り切ろうとした。
今は目前の相手に集中する事が、抜け出る唯一の道だった。
慎重に、若干右回りに間合いを詰めていく。
獣人特有の回復力で、左腕はかろうじて動くまでに回復していた。
右腕を軽く突き出した右半身のまま、すり足で前に出る。
右掌を突き出す。
受けに来るか、カウンターに来るか、どちらにせよ右はフェイントだ。
右腕で相手の反撃をいなし、左の貫手――鋭い爪で奴の首を貫く。
- 321 名前:御神苗優投稿日:02/03/26 01:12
- >319 vsロン
奴の目に冷静さが戻ってきた。
やばいな・・・・・
回復力では向こうの方が上・・・・・・
奴はじりじりと間合いを詰めてくる。
いつだ、いつ動く?
額から汗がたれる。
そして、床に落ちた。
それと同時に、奴は右の掌打を放ってきた。
俺はその攻撃を身を捻って避ける。
そこにすぐさま左の貫手が首めがけて突き出される。
俺はそれを身をかがめてやり過ごす。
奴の目には、まるで俺が分身したように見えるだろう。
残像を残すほどの高速移動。
奥の手までださせてくれるとはね・・・・・・
俺は奴に肉薄すると、無防備の腹に右の掌打を叩き込む。
まともにくらった奴は、転がるように後ろへと吹っ飛んでいく。
- 325 名前:ロン(虎獣人)投稿日:02/03/26 01:39
- >321 ロン VS 御神苗 優
虎人の巨体が壁に叩きつけられる。衝撃に、部屋が震えた。
崩れ落ちる。四つん這いになり、血塊を吐き出しながら顔を上げる。
そのわずかの間に、ロンは人の姿に復していた。
脇腹を押さえつつ、ゆらり、と立ち上がる。
アバラが数本折れていた。
一撃を知覚できず、まったく防御の体勢を取れずに喰らったのだ。
急所ならば、あるいは獣人の強靭な筋肉に守られていなければ、死んでいたであろう一撃だった。
ロンは、息を吸い込んだ。肋骨の痛みを無視し、一瞬呼吸を止め、鋭く吐き出す。
同時に、構えを取った。
ある種、ひさびさの感覚だった。
目の前の相手を、自分と対等の相手と認識する。一方的な殺人ではなく、殺し合い。
ただ、今この瞬間に没頭する事を望む。
「殺し屋、ジン=ロン。名前は?」
殺し屋が名乗るなどという不条理に、今のロンは拘泥しなかった。
知覚を研ぎ澄ます。
自分からは動かない。己の気配を抑え、相手の気配を読む事にすべてをかける。
- 335 名前:御神苗優 ◆CeqdL8pw 投稿日:02/03/26 03:22
- >325 vsロン
奴は、衝撃から変身が解けたようだ。
人の姿に戻った奴は血反吐を吐きながらも、
再び立ち上がった。
『殺し屋、ジン=ロン。名前は?』
奴は名乗った。殺し屋が名乗るってのもおかしな話だ。
しかし、俺はその時は何もおかしいとは思わなかった。
「スプリガン、御神苗優。いくぜ!!」
俺は名乗るや、一気に奴との間合いを詰める。
決着をつけるべく右手に持ち替えたナイフで、
俺は神速の突きを叩き込んだ。
- 336 名前:ロン ◆rLawCrt6 投稿日:02/03/26 03:31
- >335 ロン VS 御神苗 優
突き、だ。死角に滑り込むようにして迫る一撃。
幻惑するような動き。やはり、捉えにくい・・・
ロンは、勘を頼りに右拳を突き出した。
方向を逸らしさえすればいい。急所を避けえれば、倒せる――
- 337 名前:御神苗優 ◆CeqdL8pw 投稿日:02/03/26 03:55
- >336 vsロン
(勝敗はトリップ判定にて行った。C>rにて、ロン敗北)
俺のナイフは奴の体に突き刺さった。
だが、奴の右を避けながらとなったせいか、
急所をわずかにそれた。
奴はニヤリと笑うと、左の拳を俺に叩き込んだ。
浮身でなんとか打撃を消すも、完全ではない。
俺は再び奴との間合いをとって対峙する。
そこへ廊下のほうから複数の足音が聞こえた。
応援か?
それを聞いた奴は舌打ちをすると、窓に向かって突進し、
雨の世界へと消えた。
俺は後を追いかけかけたが、足をとめた。
あくまで、俺の任務は依頼人の護衛だったから。
俺は窓際から、奴の消えた庭をずっと凝視していた。
- 338 名前:ロン投稿日:02/03/26 04:32
- >337 ロン VS 御神苗 優
エピローグ
胸に刺さったナイフは、肺を傷つけている。
それで、走っていられるのは獣人の生命力ならではだ。
(失敗か・・・)
それは、ロンの経歴の中で、ほとんど唯一に近い汚点となるだろう。
だが、それを無念に思う感情は、不思議と、無い。
それは恐らく、ロンの"暗殺者"としての仮面に小さなひびが入った事件だったのだろう。
殺しを始めてから、仕事の場で拳法家としてふるまうことなど、ありえないことだった。
しかしそれを、ロン自身は無論、気づいてはいない。
雨は依然として振りつづけている。
泥水を跳ね上げ、傷ついた右胸を抑えたまま、ロンは走り去っていく――