≪不安≫

 何度も何度も、唇を重ね、角度を変え、貪るように、がつがつと形容したくなるくらいに求めるように。
 冥の舌が歯列を割り入り、御剣の口内に侵入してくる。それは荒々しくもあり、やたらと性急にも感じた。
 ……冷静な部分でその行為を味わいつつ、御剣は細く目を開けて冥の顔を見ようとした。
 目が、合った。
 キスの最中に、冥は目を開けている。その目はどこか、怒ったような色が浮かんでいるように見えた。

   唇を離して、御剣は少々戸惑ったような色を浮かべつつ、膝に乗った冥の顔を覗き込んだ。
 今までの行為の名残か、冥の顔は赤らんでいる。

「……キミがこんなに積極的なのは珍しいな、メイ」

 基本的に、冥は受身だ。欲望をあらわし、押し付けるのは御剣の方であって、冥はそれを羞恥と共に受け入れる。
 2人の関係が変わってから、それが当たり前だった。
 今日のように、冥から……貪欲に求めるようにしてくるのは珍しい。

「そうね、確かに珍しいわね」

 冥は睨むような視線を御剣に向ける。その目は少しばかりキスの快楽に潤んでいるものの、何かの意思を宿しているように思える。

「メイ……怒っているのか?」

 御剣は冥の目元に指を這わせた。触れた部分が熱い。
 額にかかる髪の毛をそっとはらい、指を髪に絡ませる。御剣の指の感触に、冥の表情は一瞬だけ和らいだように見えた。
 だが。

  「別に」

 それに対する冥の答えは素っ気無い。
 その様子は……どう見ても怒っているようにしか見えないのだが。
 だが冥が怒っているのが事実だとしても、それがどうして今の冥の行為に結びつくのか……いまいち、関連性がつかめない。

「ちょっと、思い出しただけ」
「何を?」
「1年間、レイジがいなかったこと」

 うつむき気味にそう呟くと、冥は御剣の首に腕をまわし、自分の顔を御剣の視線から隠すように、深く強く抱きついた。

「……今度だまっていなくなったら、もう許さないから」

 ああ、なるほど、と、御剣は冥の行為の意味を理解した。
 思い出して、拗ねて、寂しくなって……不安に、なったのだ。

 本人にそれを言えば、そんな事はないと反論してくるだろう、きっと。 
 御剣は冥の小さな肩を、身体ごと包むようにきつく抱きしめた。

「ああ、もうしないよ、メイ……」

 低くそう囁くと、冥も小さく、こりとうなずいた。

 冥が御剣を必要とし求めてくれる事、これ以上の喜びはない。
 離れていた時間が今の関係を作りあげたのならば、それを後悔するつもりはない。
 だが……冥の中の不安を現実のものにするつもりは毛頭ない。
 離れる必要はもう感じないし、離れようとも思わない。

 冥の髪の感触を楽しみながら、今度は自分から冥の顔を引き寄せて、より深く、御剣は唇を重ねた。


2003.10.27.


ジオシティーズではアレな話はご法度なので、ここで終了な話です。