≪見る≫

 私の事を見ているレイジの視線は感じていたけど、あえてそれを無視していた。
 こちらから気がついてあげて、その理由を問い掛けてあげるなんて何だか悔しいもの。
 それにきっと理由があるようならば、レイジの方から口に出すのだろうし。
 ……そう、思っていたのだけれども、さすがに何もいわずに私の横顔だけを見ているらしいレイジの様子が、しばらくするととても気になってくる。

「……何か、私に用でもあるのかしら、レイジ?」

 私はレイジに顔を向けてそう言った。
 これは根負けという事なのかしら、と思ったのは、レイジの顔が何だか妙に嬉しそうだったからかもしれない。

「いや、特に」

 じっと私の顔を見たまま、レイジはしれっとそう答える。

「でもさっきからずっと見られているように思えるのだけれども」
「気がついていたのか?」
「気がつくわよ」
「ム。何も言われないものだから、気がついていないと思ってずっと見ていたのだが」

 その言い分は、つまり、これは私の対応ミスだと言いたいわけなのかしら。

「気がついていないからといって、人の顔を見ているのは、不躾だとも思うけれども」
「ふム。私に見られていて、不愉快だったか? ならば謝るが」

 そう問われて、私は返答に詰まった。別に、不愉快だったわけではない。それにレイジに謝って欲しいというわけでもない。

「別に、そういうわけではないわ」

 では、私はどういうわけだったのだろうかと考えて――すぐに答えが出た。

「……で、何の用なの?」

 用は、私は理由が知りたいだけなのだ。レイジが私を、じっと見ているその理由を。

「だから、別に、用はないのだが」
「ならどうして、さっきからすっと私の事を見ているのかしら?」
「見ていたいから見ているだけだが」
「…………は?」

 そう言うレイジの顔は、答えをはぐらかしているようには見えない。きっと本気でそう思っている、そんな顔をしている。
 ……時々、レイジの言動は、わけがわからない。

「何よ、それは」
「言葉通りの意味だが」

 何かおかしかったのか、レイジはくすくすと笑った。



2005.01.01.



それだけの話。
今年の最初の文字ですが
……新年に全然からんでない内容な気がします。
気のせいではありませんが。