目が覚めると必ず目の前に赤く長い髪がある。
それがない日は何だか淋しい。
でもそんなことは言わない。
言わなくてもあいつはわかっているから。
いつでも明るく構えていて、俺が何も言わなくてもわかってくれる。
ほら、今日も目が覚めると赤く長い髪があって、幸せそうな寝顔がある。
ベッドの中でそれを見るのが俺の楽しみ、かも知れない。
閉じていた瞼が開いて大きな目が俺を見上げて、にっこりと微笑む。
「おはよ、ヒイロ」
その時のこいつの笑顔が好きだということはこの俺でも認めざるをえない。
「じゃ、行ってくる」
俺を一人残して行く、奴を見送る。
「そんな目をするなよ、すぐ帰ってくるからさ」
自分がどんな目をしているのかは知らない。睨みつけているのだろうか?
ぽんと頭に手を置かれて、それが離された時。
出て行く背中が見えた時。
赤く長い髪が翻り、こちらに向けられた時。
「…………?」
知らない間に、俺の右手はそれを掴んでいる。
「ヒイロ」
困ったように首を傾げて、にっこりと笑う。
軽く塞がれる唇。
「行ってきます。早く帰ってくるからな」
別にキスが欲しかったわけじゃないけれど、それ以上引き止めることも出来なくて。
触れた唇に指を置いて、今日も赤く長い髪の男の帰りを待っている。
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