「ヒイロ、待てよ!」
 追いかけて、その細い肩を抱き締める。
「離せ、人が…………」
「見たっていい!」
 力一杯抱き締める。どうせ道行く人は自分の幸せに手一杯で周りなんか見ていない。
 12月だというのにいつもと変わらない薄着のヒイロ。
 腕も足も剥き出しのままで、家の中ならまだしも外に出ていくなんて自殺行為だ。
「何怒ってるんだよ?」
 今日はクリスマスイヴ、御馳走を作って二人で過ごそうとしただけなのに……。
 あんまり高価なものは買えないけど、ヒイロにプレゼントするために溜めた金で小さな幸せを買った。
 昨日まではヒイロも言葉では嫌がっていたけど本気じゃなかったはずなのに。
 今日になっていきなりこれだ……。
「怒ってない」
「じゃあ何で家を飛びだすんだよ」
 ヒイロの肩が震えている。俺は引っ掴んできたヒイロのコートを肩にかけてやりその上から再び抱き締めた。
「………クリスマスなんて…………」
「?」
「来なければいい」
 振り向いたヒイロの目が潤んでいた。
「俺、何かおまえの気に触るようなことした?」
 俺は恐る恐る聞いて見た、無神経な俺は知らない間に人を傷つけているらしい。
ヒイロだけは傷つけまいとしていたけど…………。
「おまえが…………俺に優しいから………………」
 ヒイロが潤んだ目で瞬き、涙が一筋頬を伝う。
「俺は…………こんなときでも、おまえにあげるものがない…………」
 愛らしいヒイロの様子に顔が綻んでしまう。
 あんなに他人に、そして自分にも無関心だったヒイロが、俺のことを考えている。
 俺はヒイロの唇を塞いだ。
「俺はおまえを貰っているからいいんだよ。」
 頬を朱に染めるヒイロ。
 言っててちょっと気障かなとも思ったけど、俺の一番言いたいことだから。
 家に帰ればヒイロがいる、それだけで俺は世界一の幸せ者になる。

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