白いシーツの中で安らかな寝息を立てている白い獣。
眠っているというのに眉間にしわを寄せ、何かを威嚇しているようである。
ここはいつも彼が眠る工業科の裏の資材置き場ではない。
お世辞にもしっかりしているとは言い難い保険医がいることで有名な、普通科の保健室であった。
眠る白い獣の傍らでは生徒会長がずっとその姿を眺めていた。
触られることを拒絶するかのようにきつく結ばれている唇。その形を指でなぞる。
その指は頬へ上がり、少し垂れ目がちな瞼から長い睫毛へと動く。
そして再び頬へ降り、顎を伝って喉へ行き、肩の方へと滑る。
今は夏休みである。
委員会や部活動、そして補習の生徒しか登校していない。
当然梧桐は前者で、半屋は後者だった。
補習が終わった半屋は眠いと言ってここへ来、そして梧桐がやってきた。
剥き出しになった肩は半屋が眠りに落ちる前に行われていた行為を物語っている。
梧桐は肩から鎖骨へ、鎖骨から胸へ、脇腹へと撫でて行った。
半屋の身体を眺めるのは好きである。
白から生まれ出たとしか思えない色素の薄い肌、髪。
常に威嚇しているように、睨みつけてくる瞳。
抱かれているときですら屈することのない誇り高き獣。
白く美しい身体を持った、獣。
女性のように丸みを帯びているわけでもないのに、その引き締まった筋肉のついたラインは独特の色香を持っている。
すらりと伸びた脚は細く、その腰は軽く腕を回せそうなほどである。
眠っているときだから、じっと見つめることが出来る。
起きているときであればすぐに憎まれ口をたたきだし、ゆっくり眺めている暇などなくなってしまう。
愛おしい白い獣。
半屋が目を覚ますまでのしばらくの時間、梧桐は彼にしか見せない表情でじっと見つめ続けていた。
軽い寝返りとともに半屋が目を覚ました。
だるそうに身体を起こし、傍らにいる梧桐をちらりと見た。梧桐の視線は半屋の顔の辺りにある。
「何見てんだよ」
「……いや」
「変なやつ」
白いカーテンがクーラーの風で揺れる。窓の外の太陽は夏の顔をしている。
「綺麗だな」
「あぁ?」
梧桐の視線は半屋の身体に注がれたままである。
不可解な表情をする半屋をよそに、梧桐は座っていたイスから動き、半屋のいるベッドに腰掛けた。
きしりとスプリングが軋む。
そして梧桐の腕が伸び、空調のために冷えた半屋の肩を掴んで自分の胸へと引き寄せた。
「おい」
予期せず、後ろから抱き締められる形になった半屋。しかし、もう諦めているのか大した抵抗は見せない。
ひんやりと冷たい身体。
もとからそう高くない体温の上、寝る前にかいた汗が冷やされた結果である。
半屋の背に服越しに梧桐の胸の暖かさが伝わってくる。
やめろ、と言う言葉はない。ただおとなしく梧桐の腕におさまっている。
外には蝉の声と部活動をする生徒のざわめき。
外界から閉ざされた保健室の中で、白い獣とその恋人は静かにお互いの体温を感じていた。