真っ白い世界にオレはいた。上も下も右も左も全部真っ白で、オレは何故かそこが病院だと感じていた。
『ひっく、ひっく。…………ママぁ……』
 子供の泣き声が聞こえる。幼い。小学校に上がる前だろう。
 真っ白い世界の目の前の空間に、これまた真っ白い扉が現れ、中から小さな男の子が出てくる。
 一瞬女の子かと思うような可愛らしい顔で、でもオレはそれが誰かを知っていた。
『まこちゃん……』
『なおくん、なおくん、……ママがね、ママがね』
 少年の背にある病室の中は真っ暗で、数人の大人たちのすすり泣く声が聞こえてきた。
 ばんやりと感じ取れる「死」というもの。
 オレの胸は締め付けられるように痛んだ。
 こんなに幼いのに、この子の母親は……もう…………。
『もう、あえないの。ママがウソついたの。「たいいん」してボクの大好きなチョコレートパフェいっしょに食べに行こうねっていったのに。ヤクソクしたのに』
 オレは泣きじゃくる少年を自分の胸に抱きしめた。
『なおくん、なおくん。ママみたいにいなくなっちゃいやだよ。もうだれもいなくなっちゃいや……ママみたいに。ママ、ママぁ………』
 抱きしめたはずのオレの腕はとても小さくて、逆にオレの方が抱きつくような形になっていた。
『まこちゃんのママがいなくなっても、ボクがずーっといっしょにいてあげる。ずっとずっといっしょ。ボクがまこちゃんのママになってあげる』
 オレの口から甘ったるい子供の声が出てきた。
 そうだ、約束したじゃないか。
 ずっと一緒にいるって。
『ホントに? ホントに一緒にいてくれる? ヤクソクだよ……?』
 泣きやまない「まこちゃん」の口にそっと唇を寄せた。
『ヤクソクしたよ。ぜったいずっとそばにいるから』
 涙が引かない目で「まこちゃん」がにっこりと笑った。
 その笑顔がどんどん大人になっていって…………。
 
 オレは目が覚めた。
 懐かしいような寂しい夢。今まで思い出すこともなかった幼稚園の時の夢。
 お隣の「まこちゃん」はオレより一つ年上でそのとき年中だった。オレが幼稚園に入って初めての夏に、「まこちゃん」の母親は病気で亡くなった。
 一緒にいると約束したが「まこちゃん」は家の事情で引っ越してしまった。
 幼稚園児のオレに手紙のやり取りなんて不可能で、しばらく泣きじゃくったものの小学校に入る頃には忘れてしまった。
 男の子だって知っていたけど、「まこちゃん」が大好きだった。
 だからあんな約束もしたし、キスだってした。
 忘れてたことは悪いと思う。でも、一言言ってくれてもいいんじゃないか?
 夢の中で成長した「まこちゃん」は見慣れた笑顔でこう言った。
「僕は尚輝が好き」
 オレは頬が赤くなるのを感じながら、額に手を当てた。

 

「柊二の全快と、中間テストの終了を祝って乾杯!」
 オレの声に、それぞれが手にした烏龍茶やジュースの缶を持ち上げる。
 ガチガチと缶がぶつかる音が響いて、オレは手の中のスプライトを飲んだ。
 ぴりぴりとした炭酸が喉を焼いて気持ちいい。
「心配掛けてごめんね」
 柊二がそう言って微笑んだ。頭の包帯はもう取れていて、しかし、こめかみの上に残る傷跡が痛々しい。
「全快してよかったじゃないか。試験に間に合わなかったらどうするのかと思ったよ」
 和人の言葉にオレもうんうん、と頷いた。
 球技大会から2週間後の中間テストに柊二はぎりぎりで間に合ったのだ。
「皆が毎日ノート届けてくれたからね。いい点数を取れた自信はないけど……」
 球技大会の次の日は日曜日で、その日の夕方、柊二は目をあけた。
 1週間の入院とその後2週間の通院で、今日ようやくその通院も終わった。
 その後オレはというと特に変わりのない生活を送っていた。
 ……ただ一点を除けば。
「岩永くんにも迷惑掛けちゃったみたいで、ごめんね」
 柊二がオレの隣に座っている岩永に笑いかける。オレの胸が小さく跳ねた。
 そう、真剣に授業を受けている横顔、体育で走る姿、オレの方に近寄ってきて、にっこりと営業スマイルじゃない笑顔を見せる岩永に、オレは終始ドキドキしっぱなしなのだ。
 もっとも岩永は授業が終わったらすぐに仕事にいってしまうのだが。
 こんなのはおかしい。
 だってオレはもう幼稚園児じゃないし、岩永だって女の子みたいな訳でもない。
 でも、ドキドキと脈打つ心臓はオレの考えとは裏腹に、おさまろうとしなかった。
 皆でお菓子を食べて、ジュースを飲み、他愛もない話をする。
「じゃあ、またな」
 少し眠たくなって来た辺りでお開きとなり、和人の部屋を出てそれぞれの部屋に帰る。
「お休み」
 明日は日曜日だからぐっすり眠れることだろう。柊二たちが部屋に入る。
「じゃあね」
 と階段の方へ行こうとする岩永を呼び止めた。 
「何?」
 綺麗な顔はやはり良く見ると「まこちゃん」そのもので、何故再会してすぐに気が付かなかったのかと不思議に思った。
「あの、さ」
 緊張しているため声が震えているのが自分でもわかる。  
「寮に、……帰って来ないか?」
「えっ?」
 岩永が困ったような表情になる。もしかしたら、もうこいつはオレのことなんて興味がないのかもしれない。
 でも、オレは……。
「尚輝、それ言ってることわかってる? 同じ部屋に戻ってきたら……」
 戸惑う声が嬉しい。
「お前のこと、嫌いじゃないかもしれない」
 岩永の言葉を遮って言い放つ。耳まで紅く染まっていくのが自分でもわかる。
 嫌いじゃない、としか言えないけどそれでも岩永は嬉しそうに笑った。
「ホントに?」
 まこちゃんの笑顔で言われて、オレの心臓は壊れそうなほど大きな音を立てる。
「約束だから、傍にいてやるって言ってるんだよ」 
 ばんっと乱暴に自分の部屋の戸を開け、締めた。
 鍵は掛けていない。
 入ってこようとすれば簡単に入れる。
 そして程なく、カチャリとノブが回された。
  
 
 
 目の前が真っ白になって、オレは今日何度目かの白濁した液を放った。
「いわ、なが……」
「真理って呼んで」
 整った顔が汗にまみれたオレの顔を優しく拭って囁いた。
「あっ」
 ぺろっと耳を舐められて思わず甘い声を上げてしまう。
 2段ベッドではなく、前に押し倒されたあのクッションの上でオレは霰もない姿で岩永を見上げていた。
「まこ、と……」
 オレの言葉に嬉しそうに笑うと胸の辺りを撫でていた手がぴんと経つ胸の飾りをきゅっと摘んだ。
 何故男にそんな物がついているのか、なんて特に考えたこともなかったけれど、じくじくと広がる快感になんとなく理由がわかった。
 右手で胸を弄りながらぺろぺろと首筋、胸、腹の辺りまで舌を動かす。
 舐められた場所が熱く疼く。
「やぁっ……ん……」
 ぱくりと立ち上がっているものを銜えられ思わず腰が引ける。
「真理ぉ……汚い……」
 何度も白濁した液を放ち、今もまた透明な液を滴らせているそこは少し口を動かされるだけで考えられないほどの快感に襲われる。
「尚輝の大切なところだもん、綺麗だよ、可愛い」
 ぺろぺろとミルクを飲む子犬のように真理がオレのものを舐める。
 天下のアイドルにオレのものを銜えて貰っているなんて何万人といるファンに殺されてしまうかもしれない。
「オレ、も、する」
 オレの声に真理が顔を上げる。息が上がってぼんやりとした視界の中、オレは真理に抱き付き、オレと同じように立ち上がっているものに口を付ける。
 今まで自分のものは特別小さいなんて思ったことが無かったけど、真理のそれは比べ物にならないぐらい大きかった。
 雄の匂いが口の中に立ちこめる。決して美味しいものでもないけれど、真理のものだから嬉しい味だ。
「尚輝ズルイよ、……僕にもさせて」  
 気持ちよさそうに息を吐いていた真理がオレを起こし四つん這いにさせ、すっと身体を動かしたかと思うと仰向けになってオレの下に滑り込んできた。
「えっ」
 戸惑うオレを他所に下からオレのものを舐める。
 オレの目の前にはそそり立った真理のものがあって、オレは必死で舌を這わせた。
 腰から上がってくる快感に足ががくがくと震える。
「あぁっ」
 舐めるだけでなく強く吸われると脳まで溶けて、そのまま全てを放出してしまいそうになる。
 もう、次にそうされたら間違いなく弾け飛んでしまう程に高められ、それからはぺろぺろと焦らすように柔らかな刺激が与えられる。
 オレは刺激を与えられるままに真理のものを強く吸い続けた。
「うっ」
 真理が声をあげ、オレのものを強く刺激した瞬間、オレは真理の口の中に、そして真理はオレの口の中に白い液を放った。
 
 
 暖かくて心地の良いものが近くにあって、オレは無意識にそれにすり寄っていた。
 目を開けるとそこには綺麗な顔のアップがあって、オレの心臓は早鐘を打った。
「忘れてて、ごめんな」
 そっと眠る男に唇を寄せて、また離れた。
「尚輝?」
 眠たそうに目が開かれ、そのままにっこりと微笑まれる。
 オレは目を閉じて暖かい胸に顔を埋めた。 
  
 


  真白い空間に子供が二人、手を繋いで駆けていく。
 『約束だよ?』
『うん、ずーっと傍にいるからね』
 遠い遠い昔。
 遠い遠い未来。
 微笑んでいる天使のような彼らの笑顔。
 ずっと、ずっと…………。
   

 

終わり   



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