ガラっと妙に軽い引き戸を開け、叫ぶ。
「崇峻さん、また女になってしもたやんか! 責任とってや!どうしてくれんねん!」
 オレはとりあえず自分の男子用の制服を着て2年生のクラスまで抗議に行った。
 なんや胸がでかくて、上のほうのボタンがとまらへんし、変な目で見られるし。
「……?」
 崇峻さんはわけがわからへん、とゆーよーにとぼけとる。
 なんで崇峻さんのクラスが解ったんか言うのは近くにいる人に聞いたら一発で教えてもらえたからや。
 やっぱり結構有名らしいなぁ。
 けど、なんや昨日とちゃう。
 白衣も着てへんし、眼鏡もかけてへんからなんやろか……。
「君の相手は私だ」
 急に背後から声がし、振り向くまもなく抱き締められた。
 視界の端に白い身体が見える。白衣や!
「兄さん!」
 目の前の崇峻さんが言う。
 兄貴?ってことは……。
「そう、そっちは弟の大瀬(だいせ)だ。」
「崇峻さん、弟さんいはったんですか。めっちゃ似てはるわ」
 双子か? うわ、めっちゃそっくりやん。
 これは間違うわ。
「それはそうと、君の方から会いに来てくれるとは感激だな」
 オレを抱き締めている力が強くなる。
「だあぁぁぁぁぁー。もうっ!!!」
「兄さん、僕と同じ顔で変態行為はやめて下さい」
 大瀬さんが言わはる。けどそんなことで抱き締める力が弱まるはずもない。
 弟さん、ちゃんと兄さんの躾しておいてやー。
「おまえには関係ない。で、帝くん何の用だ?」
「見たらわかるやろ! 崇峻さん………やったらややこしいなあ。んと、大和さんのせいでまた女になったんや!!!」
 ぷちん。
 大和さんを振り払い叫んだ途端、かなりきつかった胸の前のボタンが飛ぶ……。
 つーかこの胸どんだけでかいねん。
 ちょっと膨らんでるぅ♪ぐらいやすまへんで!?
「あっ………」
 大瀬さんの顔が見る見る赤くなってゆく。
 兄と違って純情なんやろうか?
「だいじょーぶですかぁ?」
 オレは、とりあえず腕で胸を隠し大瀬さんの顔を覗き込んでみた。
 流石は兄弟、2人ともおんなじ身長でオレよりもちょっと高い。
「これ、着て……」
 大瀬さんはそう言うて自分の、オレにとってはちょっとだけ大きい上着を貸してくれた。
「ありがとぉ、ええ人やな……」
「では行くぞ、帝くん」
 オレの言葉が終わるか終わらんかの時、大和さんはオレに大瀬さんのブレザーを掛け、軽々とお姫様抱きで理科研究会部室に運びはった。前も言うたけどオレ、174センチあんねんけど……。体重も決して軽くないし。いや、平均体重よりはちょっと軽いかなーなんて思ったことはあるで? でも、ちょっとやん。ちょっと。
 華奢なんて言葉は言われたこともないで。
 貧弱いうのはあんねんけどさ…………あかんやん。
 そんな取りとめもないことを考えているうちに昨日の理科研究会の部室に連れ込まれていた。
「さて、とりあえず昨日戻った時と同じことをするか」
 どうやら男に戻そうとしてくれているらしい。
 ってまぁ、こんな格好でいつまでもおりたくないからありがたいねんけどさ。
「あんときは確か……。せや、『風邪をひく』ゆーて、大和さんが白衣を……」
「そうか! 白衣を着たいのか!」
 そう言うて、大和さんはどこからともなく大量の白衣を出してきはった。
「170〜175センチ用、175〜180センチ用、袖口が開いているもの、ポケットがついているもの女物、男物色々あるがどれが良いんだ?」
「どれでもええわ……」
 そんで、オレは崇峻さんが出してきはった全ての白衣を着てみてんけど……。
「なんで、直らへんねん!」
「白衣で戻ったわけではなかったのか。と、すれば……」
「と、すれば?」
 深刻そうに口元に手を当て目を閉じる大和さん。
 普通にしとったら結構格好ええのになぁ。
「昨日、君が女になってからあったことをすべて再現してみるしかないだろう」
 オレが女になって最初にあったんてなんやっけ。
「帝くん、目を閉じて…」
 はっと気がつけばオレは昨日のベットに寝かされていた。
「ちょ、ちょ、ちょっと大和さん!」
 この体勢ってまさか。まさかやで!?
「何かね、帝くん」
「まさかホンマに最初っから再現しはるんですか?」
「戻れなくていいのか?」
「それは嫌やけど……」
「時間がないぞ、最初の授業からサボるつもりか? 私は君と一緒なら一向に構わないのだが……」
 せやけど、せやけど………キスは、嫌やん!?
「帝くん」
 大和さんは眼鏡を外し、真面目な顔で近づいてくる。
「………やっぱり、嫌やぁぁー!」
 ー バーンっ ー
 オレの声を聞いてか聞かへんでか、大きな音を立てて戸が開かれ勇者の姿が目に入った。
「弥生〜!」
 弥生は無言のままオレをベットから降ろした。
「なんて格好してんねん」
 そう言うてから、大和さんの方を向いた。
 睨んでる? なんでや?
「崇峻さん、あんたの制服、帝に貸したってくれへん? サイズが大きい方が胸隠れるやろ」
「弥生、やっぱりおまえは親友や!」
 そう言うて、男子校の時のようにぎゅっと抱きつく。
「わあぁぁぁぁぁぁぁ!」
 逃げられた。うわ、ちょっとショックやぁ。
「……む、む、むむむ胸が………」
 真っ赤になる弥生。 
 オレは自分の胸を触ってみた。でかい。重い。柔らかい。何や変な感じや。
 つーか、マジでこれでか過ぎ。オレ巨乳アイドルとしてやっていけるで、ほんまに。
「さらし巻いたほうがいいんじゃないの?」
「昨日のねーちゃん!!」
「磐城 飛鳥(いわき あすか)よ。さっそれ脱いで」
 磐城さんは手に長く白い布を持って指先で弄りながら言わはった。結局オレはきつくさらしを巻いて大瀬さんに借りた上着を着てとぼとぼと教室へと戻った。
 はぁ、いつ元に戻れるんや?
 オレの身体、ぷりーず、かむばぁーーーーーーーーーーーっくっ!!
 
 

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