| 誰かがオレの身体を揺すっとる………。胸が揺れてて痛いし……。 「…………?」 何か言うとるな……。 「………?………」 何か、起きな、やばい気ぃする。 「ったぁ〜!!」 ばっと飛び起きたオレの額からゴツッという鈍い音と鋭い衝撃が走った。 自分の声と痛みで一気に目ぇ覚めたわ。やっぱり女になってるし……。 あっ、大和さんが額おさえてしゃがみこんどる。ゆーことは、 「ミカちゃん、残念!!もう一瞬起きるのが 遅かったら大和とキスしてたのに!」 「どこが残念や!」 「あら、知らないの? 大和って以外と女の子にもてるのよ? 変人だけど顔は格好いいから」 「オレは男や!」 「今は女やろ?」 弥生まで一緒になって笑っとるし。心の友やと思たオレがアホやったんか。 「弥生も面白がってんと止めろや!」 「まあ、よかったやん。死なへんで」 「せや! たった3ミリで死んでまうような危ない薬を口うつし…で………」 オレは言いながら自分の顔が赤くなっていくんを感じた。 何や、口うつしって……めっちゃ生々しいし、なんか、嫌やぁーーーー!!! 「どうしたんだい? 帝くん?」 急に黙りこんでしまったオレを大和さんが心配そうに覗き込み、オレは反射的に口をおさえた。 「そんなに警戒しなくても大丈夫だ」 「そうよ、そう何回もキスしないわよ」 「ほんまに?」 オレはそっと口から手をはずした。と、とたん………。 「警戒はしなくてもいいが油断もしないほうがいいぞ」 と、頬にキスをされた。 …………なあ、何回も言うけどな。オレは中学時代、男子校やってん。女の子と付き合ったこともないねん。そんな純粋な少年のオレはキスもしたことなかってん。 ………。 せや、そんなん言うとったら女々しい奴や言われるかもしれんけどやっぱりファーストキスは好きな子としたかってん。……好きな子やなくてもせめて、女の子にして欲しかったわ。 「ほう、それは悪いことをした」 「へえ〜。じゃあミカちゃんのファーストキスは大和なんだ〜」 「おい、あんたら!! なんでセリフやないのに聞こえてんねん!!?」 いくらコメディ小説や言うたってやってええことと悪いことがあるで! 「まあ、細かいこと気にしたらあかんて。けど、おまえのファーストキスが大和さんとはなあ。……めっちゃ、おもろいわ」 「おもろないわっ!! オレはめちゃめちゃショックやってん!!」 「まあ、まあ、せっかく女になったのだから実験を始めようではないか」 「俺は帝とキスするん嫌やからな!」 「私も〜」 「あんたらなあ……」 また騒ぎだした二人にオレが一言、言ったろうとしたとき、こんこんっという軽いノックに続いて誰かが入ってきた。 「大瀬、何のようだ?」 大和さんが入ってきた人物に言うた。 「うわ、大和さんが二人おる」 そう言うたんは弥生やった。 めっちゃ、ベタやな。 「あ、大瀬さん!そうや、これありがとお、めっちゃ助かったわ」 オレは朝から借りとった上着を思い出した。 「あっ…いや、別に……。お役に立てたのなら……」 なんか口ごもり横を向きはる。 「何、柄にもなく照れてるのよ! あっ、もしかして大瀬ってミカちゃんみたいな子が好みなの!?」 はぁ?冗談やろ?っと思ってんけど、大瀬さんは飛鳥さんの言葉に否定も肯定もせんと黙って横を向いている。 ちょ、ちょお待ってや……。 「へぇ、姿だけやなくて好みの子まで似てるんか。双子ってそんなもんなん?」 弥生は面白そうに大和さんと大瀬さんを見比べながら言う。 「えっ。やっぱり、ミカ…さんは兄さんの彼女なんですか?」 「似たようなものだ」 「全然ちゃうわ〜!!!!!!」 なんでオレが大和さんの彼女にならなあかんねん。 オレは男や! 「……よかった」 「はぁ?」 大和さんの言葉に本気で嫌がってるオレを見て、大瀬さんがつぶやいた。 何や、めっちゃ、ヤな予感。 「兄さんの恋人じゃないのなら、僕が好きになってもいいですよね」 ………………………………………………………。 ー ガァーン ー ド○フのコントで金ダライが落ちてくるような音がオレの頭の中に響いた。 ……オレ、男やねんけど。 いや、確かに今は女やで?でも、やっぱり男やもん。 「………あ、あの〜。大瀬さん?」 オレが口を開いた時、飛鳥さんがとんでもないことを言い出しはった。 「ミカちゃんは大和の恋人じゃないけどもう3回もキスされてるのよね。しかも、無理やり。かわいそうよねー」 いや、あってるねんけど、間違ってへんねんけど、別に言わんかったってええやん! 「兄さん! なんてことをするんですか! すいません。兄がご迷惑かけまして。ミカさん…でよろしいのですか?」 オレは大瀬さんに話しかけられ思わず言葉を飲み込んでしまった。 この人大和さんと違って思慮分別があって、礼儀正しくてなんか、めっちゃええ人やぁ。 なんでオレなんかを好きになるんやろ。もったいない。もっとまともな普通の女の子を好きになればええのに。不幸な人やぁ。 「ミカさん?なぜ、泣いているんですか?」 「えっっっっ」 パッと目に手をやると、ホンマや。涙出てきてるわ。 「帝が泣いてるんは、あんたがあまりにも不幸やからや」 そうそう。 「なにしろ帝は不治の病にかかっとって、大和さんなしでは生きていかれへん身体になってるんや」 はあっっ? まあ、似たようなもんかもしれんけど誤解ある言い方やなあ。 「そこでや、」 まだ続くんかい弥生の話は。 「この病を治すために色々検査してんねんけど、大瀬さんにも協力して欲しいねん」 おおぉぉぉぉぉぉぉーーっっ!! 本日二度目のどよめきが起こる。やっぱりオレの中で。 あきれるぐらいすごいわ。弥生の嘘は…………。 「よく、話をつなげたもんやなあ。けど、それってもしかして、あの忌まわしい出来事の再現を大瀬さんにやらせるいうことちゃうん?」 オレは弥生をひっぱりこそっと聞いてみた。 「あっ、そっか大瀬にやってもらえばいいんじゃない。大和と同じ顔してるしミカちゃんもやりやすいでしょ」 飛鳥さんまで乗ってはるし。 「えっ!? 僕に何をやれと言うんです? ミカさんのためなら協力しますよ」 ……………。 「決定だな」 大和さんがにやりと不気味に微笑んだ。 そして、オレは今あのベッドの上にいる。 「大和さん、ホンマに最初っからするんですか?」 半泣きになって大和さんを見る。 「僕は大瀬ですよ」 あっ。せや、大瀬さんは今、最後にオレに着せるための白衣を着てて、その上オレに少しでも違和感を感じさせまいと眼鏡までかけてくれてて……。って別に眼鏡はどっちでもえーねんけど。大和さんやと思っても大瀬せんやと思っても変わらへんし。 でも、なんやその心遣いが嬉しいわ。 「すんません、大瀬さん。事情もなんも話さんと協力してくれて言うて」 そうやねん、まだ大瀬さんはオレが男やって知らんねんな。 早めに言うておいたほうがええ気がするねんけど、なんや言い出しにくいわ。 「いいですよ、別に。で、兄さん、僕はまず何をすればいいんですか?」 にっこりと微笑む大瀬さん。 ああ、大和さんと同じ顔やのに、これほどまでに素晴しい人やとは……。 「では、まず帝くんにキスをしてくれ」 「…………………………、は?」 一瞬動きが止まる大瀬さん。そら、そうやんな。 「兄さん、今なんて……?」 再び聞きはる。 まあ、何回聞いても同じやねんけど……。 「帝くんにキスをしろと言ったのだ。聞こえなかったのか?」 何故か笑いながら言う大和さん。 ぜっっっったい!楽しんではるわ、この人。 「………………」 「お〜い。大瀬さ〜ん?」 凍り付いた大瀬さんの目の前でひらひらと手を動かす。 「……はっっ。ミカさん! あなたはそれでいいのですか」 急に正気になり、オレの手をつかむ。 「……治すためには…しゃあないと思う。」 もうかなり諦め入ってるわ。 「そんな……」 下をむく大瀬さん。 その後、どうにか納得した大瀬さんは、オレを気遣いながら、あの忌まわしい出来事の再現をしてくれはった。 けど………。 「治って………へん……」 オレはぼそりとつぶやく。 「えっっっ!ホンマ? 帝!」 オレは黙って白衣の前を開ける。白く大きく膨らんだ胸がそこにあった。 「大和じゃなきゃダメってこと?」 「………何か、嫌やな、それ」 「私としては嬉しいがな」 …………。なんか、怖ひ。 「しかし、大瀬が駄目だというのは不思議な話だな、私と大瀬は一卵性で、性格と育った環境以外すべて同じなのだが」 「力になれなくて……」 大瀬さんが頭を下げる。 「えっ、そんな頭下げられたら困りますぅ。協力、めっちゃありがとうございました。すいません」 オレはそっと大瀬さんの肩に触れる。大瀬さんはゆっくりと顔を上げる。 「……ミカさん…」 ……な゛、なんか大瀬さんの様子が変や。 少しかがんでぇ、目ぇつぶってぇ、肩においたオレの手を握り締めてぇ……、えっっっ!? 「大瀬!!私の許可なしに帝君にキスしようとするとは何のつもりだ!」 ワケが解らんと凍結したオレの唇に大瀬さんの唇が触れるか触れないかの時、凄い力で後ろに引っ張られ、抱き締められた。 助かったぁ……んか? 助かったって言えるんか!? 「兄さん!?」 「帝君は私のものだ。」 前に大瀬さん、後ろに大和さん、………めちゃめちゃ身の危険を感じるわ。 「あの〜、大和さん? オレは別に大和さんのモノやないんやけど……」 「しかし、私がいないと生きていけない身体になっているのだろう?」 「誰のせいや!」 「私のせいだ」 胸を張りエラそーに言う。 「わかってるんやったらなんとかしてやーーーー!」 オレの絶叫は学校中にこだましていった。 やっほぉーやっほぉーやっほぉー………………っちゃうって! 何でこんな悲惨な状態でウケ狙ってんねんオレは!? 溜息出てくるわ、ホンマ。 |
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