あれは夏休みの終わり頃だった。
街はずれの公園、寂れた滑り台の奥に鬱蒼と茂った木々……。
立ち入り禁止の錆付いた立て札が、雑草の茂みの中に埋もれている。私は柵を乗り越え、木々を掻き分けて大好きな場所へと向かった。いつも神秘的なものを感じさせる静かなその場所がその日は騒がしく思えた。
木々の切れ間に光が差し込み、目的地が目の前に広がる。崖になった所に立つと、街を一望できる場所。木々を抜けた後には微かな雑草が生えているだけだった。ただ一本の大樹を除くと……。その樹は崖の手前に立っていた。何百年もそこに立っている様に、その大樹は根付いていた。
その時、大樹の向こうに私が見たものは、その場所だけ世界が違うかの様に思わせる程、綺麗な男の人だった。緩く波をうった金髪は、太陽の光を弾きダイヤモンドの様に輝いていた。瞳はエメラルドの様な深い翠色の光を放っていた。その男の人は瑠璃色のマントで全身を覆い、時折そのマントが風に揺らいだ。地球の化身だといってもおかしくない程、見事に自然の色を配している。私は見入ってしまっていた。
私の大好きなその場所で、彼は一体何をしているのだろう。
彼は崖のぎりぎりの所に立ち、遠くを眺めて何か呟いている様だった。
「あっ!」
恐竜の様な翼を翻し、長いムチの様なシッポ、鋭い爪を持った、見たこともない生き物が男の人の前に現れた。
その日以来、謎の綺麗な男の人は現れなかった。
そして夏休みも終わり、いつもの様に二学期を迎えた。「私」、佐倉瑞穂は、平凡な女子高校生だった。ある人物と出会うこの日までは……。
|