人里離れた山の中に、チャオたちの暮らす森があります。
木々が色づきはじめて、すずしい風が気持ちよく吹きぬけています。
チャオたちは、きょうも元気にあそんでいます。
すずしくなったので、チャオたちは、いままでよりも活発にあそびまわっているみたいです。
なんにんかのチャオがオニゴッコをしています。
逃げる方も、追いかける方も真剣です。
でも、とっても楽しそうに走りまわっています。
あ、いま、オニがだれかをつかまえました。
これでオニは交代です。
さっきまでオニだったチャオが、さっそく逃げていきます。
あらら、追いかけていたときよりも、はやく走ってるんじゃないかしら?
新しくオニになったチャオは、ちょっとボーゼンとしています。
でも、すぐに気をとりなおして、追いかけていきました。
まだまだオニゴッコは終わりそうにありません。
べつの場所では、みんなでボールあそびをしています。
チャオと同じくらいの、大きなボールを転がして楽しんでいます。
ころころと手で押してみたり、おもいっきり蹴ってみたり、思い思いにボールであそんでいます。
誰かが蹴ったボールを、みんなで追いかけるのも楽しいものですね。
一番に追いついたチャオが、ボールの上に乗ろうとしています。
ふらふらとゆれるボールに乗るのはたいへんなことです。
このチャオは、なんとかボールに乗ることができました。
でも、両手でボールにしがみつくのがやっとでした。
なんとか、ボールの上に立ち上がろうとしてみましたけど、バランスを崩して転んでしまいました。
追いついてきたみんなが心配そうにしていましたけど、転んだチャオはバツが悪そうに笑っています。
だいじょうぶみたいです。
みんなも、いっしょに笑っています。
そして、森の片すみでは、チャオたちのかけっこがはじまろうとしていました。
ナイツチャオ、ミズチャオ、オニチャオ、そして、ソニックチャオがスタートラインに並んでいます。
ある夏の日に、泳ぎの競争をしていたみんなです。
つぎは、かけっこで競走しようという約束通りにあつまっているのです。
そして、ヒーローチャオが審判をつとめます。
でも、なんだか、みんなやる気がないみたい。
いえ、オニチャオは、やる気マンマンです。
準備運動にも、気合いが入っています。
これなら、いつスタートしてもだいじょうぶですね。
だけど、ミズチャオは、ソニックチャオにかけっこで勝てるとは思っていないのです。
それに、泳ぐことで負けなかったらいいと思っているので、この競走には乗り気にならないのでした。
ナイツチャオは、もともと競走することは好きじゃありません。
ただ、みんなといっしょに走りたいだけで、勝ちたいとは思っていませんでした。
ソニックチャオは、そんなみんなの雰囲気に気づいていました。
たぶん、自分が一番はやく走れるとは思っていました。
でも、絶対に負けないくらいの差はないとも思っていました。
みんなが本気で走ったら、どうなるか分かりません。
なのに、みんなは本気で走りそうにありません。
ただひとり本気になっているのが、走ることがあまり得意じゃないオニチャオだけでは、負けることは考えられません。
こんなかけっこは、おもしろくありませんでした。
そこへ、ひとりのチャオがやってきました。
ソニックチャオと似た3本のツノのある黒いチャオです。
ツノにある赤いラインが、すてきでまぶしいくらいです。
このチャオは、シャドウチャオです。
ダークチャオのなかで、いちばん走ることが得意なチャオです。
シャドウチャオは、オレも仲間に入れてくれと言いながら、ソニックチャオのとなりに立ちました。
シャドウチャオも、かけっこは大好きなのです。
シャドウチャオがきたことで、みんなの表情が変わりました。
ソニックチャオは、全力を出し切っても勝てるかどうか分からない相手ができたことで、とてもやる気が出てきました。
このかけっこが、本当に楽しみになったのです。
ミズチャオは、走ることが得意なふたりのチャオを見て、このふたりに勝ったら、すごいことだと考えました。
それに、なんだか絶対に勝てないことはないとも思えてきました。
がんばれば勝てるかもしれないと思うと、本気で走る気になってきたのです。
ナイツチャオは、ソニックチャオとシャドウチャオが競走することを、とても楽しみに思いました。
そして、いっしょに走ると、ふたりの競走をいちばん近いところで見ることができるということに気がつきました。
だから、がんばってふたりについていこうと思いました。
もちろん、オニチャオは、はじめからやる気マンマンです。
だれが相手でも、いつも全力でがんばるのです。
いよいよスタートのときがきました。
ソニックチャオは、両手を地面について、「くらうちんぐすたーと」の体勢をしています。
他のみんなも、思い思いのポーズでスタートの合図を待っています。
みんなの準備ができたことを確認して、ヒーローチャオがスタートの合図をします。
いちについて、よーい、どーん!
最初に飛び出したのは、オニチャオです。
でも、なんだか、スタートの合図の前に走り出してたみたいです。
ちょっと、やる気がありすぎたようですね。
でも、すぐにソニックチャオとシャドウチャオに追いぬかれてしまいました。
ナイツチャオとミズチャオも遅れないでついていっています。
まずは、森の木のなかを走りぬけていきます。
ソニックチャオとシャドウチャオは、はやく走りすぎて木をうまくよけることができませんでした。
なんとか、ひとつの木をよけても、べつの木にぶつかりそうになったり、木をよけることに必死になって、相手にぶつかりそうになったりして、いつものはやさで走ることができません。
そんなふたりとちがって、ナイツチャオはかんたんに木をよけて走っています。
木をよけるときにもスピードが、ぜんぜん落ちません。
どんどんふたりに追いついていきます。
ナイツチャオが、もうちょっとでふたりを追いぬけそうなところまできたときに、木のなかのコースはおわりました。
広いところに出ると、ソニックチャオとシャドウチャオは、いつものはやさを取りもどしました。
ふたりを追いぬきそうになっていたナイツチャオが、また引き離されていきます。
次は、小川の浅瀬を走るコースです。
みんな、水が気になっていつものように走ることができません。
でも、ミズチャオだけはちがいました。
水があっても、いつもと同じはやさで走っています。
ここまで、ちょっと遅れ気味でしたけど、あっという間に差を縮めていきます。
まず、ナイツチャオに追いつきました。
でも、先頭のふたりに追いつくまえに、小川のコースが終わってしまいました。
いつものはやさにもどったふたりに追いつくのは、ちょっと無理みたいです。
そのあとは、ゆるやかな曲がり道が続きます。
ソニックチャオとシャドウチャオは、相手に負けないように必死に走っています。
ソニックチャオが、ちょっとまえに出たと思うと、すぐにシャドウチャオが追いぬきます。
シャドウチャオが先頭になると、ソニックチャオがすぐに逆転します。
抜いたと思うと追いぬかれています。
抜かされたと思うと追いぬいていきます。
そんなはげしい競走がつづいていました。
そして最後は、上り坂のコースです。
走るジャマになるものは何もありません。
いつものように走ることができるはずでした。
でも、ソニックチャオとシャドウチャオは、おたがいを意識しすぎて無理なペースで走りつづけてきたので、疲れてしまっていました。
坂をのぼるだけで精一杯で、どんどん走るスピードが落ちていってしまいました。
ただ、相手に負けたくないという思いだけで走り続けているのです。
そこへ、オニチャオがいつもと同じスピードで坂を駆け上がってきました。
ぜんぜん疲れたようすはありません。
この調子だと、前をいくふたりのチャオを追いぬくことができるかもしれません。
ソニックチャオは、うしろからオニチャオがやってくることに気がついていました。
もちろん、すぐ横にシャドウチャオがいることも忘れていません。
でも、疲れていて、これ以上はやく走ることはできそうにありません。
負けてしまうのかな?
そう思ったとき、ゴールに森のチャオたちが集まっていることに気づきました。
みんなは、大きな声で、走っているチャオたちを応援しています。
がんばれ〜!
負けるな〜!
いそいで〜、追いつかれちゃうよ〜!
いいぞ、追いぬけるぞ〜!
応援しているみんなも真剣です。
みんな、自分と仲の良いチャオを応援しています。
応援してくれるともだちのまえで負けたくないとソニックチャオは思いました。
だから、疲れきっていても、最後にちょっとだけ新しいちからが出せました。
オニチャオは、すぐうしろまで追いついてきていました。
シャドウチャオも並んで走りつづけていました。
でも、ゴールの瞬間、ソニックチャオは、ほんのちょっとふたりよりまえにいました。
ゴールのテープを胸で切った感覚は、とても気持ちよいものでした。
ソニックチャオは、自分でもまだそんな元気があったのかと思うくらいのいきおいで、ガッツポーズを作りました。
みんなの歓声が、疲れを忘れさせてくれたみたいです。
そこへ、シャドウチャオが近づいてきました。
負けてしまいましたけど、全力を出し切った満足感でいっぱいの顔をしています。
今度は負けないぞ、と言って一瞬だけ笑顔をみせました。
そして、森のおくに帰っていきます。
ソニックチャオは、シャドウチャオを見送りながら、ありがとう、楽しかったよとつぶやいています。
3にんからだいぶ遅れてしまいましたが、ミズチャオとナイツチャオがやっとゴールしました。
みんなが大きな拍手で迎えてくれます。
ふたりは、ちょっと照れくさそうにしています。
その横では、オニチャオがまだ悔しそうにしています。
もうちょっとで、まえにいたふたりを追いぬけそうでしたから、無理もないかもしれませんね。
こうして、チャオたちのかけっこはおわりました。
秋風が、チャオたちの歓声を森中に運んでいきます。
おわり
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