真琴は「あの日」から一度も反応を返したことがなかった。
天野との約束「強くあること」も、日がたつほどに守れなくなっている。
時間がたつほど、真琴はもう戻ってこないのではないのかと思ってしまう。
一人、自分の部屋で泣いてしまうこともあった。
それでも、祐一は待ちつづけた。
もう一度、奇跡が起こる事を祈って・・・。

奇跡は言葉の心の中に


真琴が眠りつづけてから、もうすぐ1年がたつ。

「真琴、今日はお前の誕生日だよな」

祐一は、そっとベッドで眠る少女の髪を撫でた。
サラサラと、手から真琴の髪が逃げるように離れていく。
ちょうど3回撫でたところで、祐一は立ち上がり、カーテンを開けた。

――シャッ

カーテンを開けた瞬間、室内に光が差し込んだ。
今日は雲ひとつない快晴だが、外はすでに銀色の世界となっている。
祐一は再び真琴の寝ているベッドに腰掛けた。

「・・・早く、帰ってこいよ」

そう言って祐一は、真琴の手を握った。

――ちりん

鈴が、鳴った。

「・・・もっと高いものにしてもよかったのにな」

手を握ったまま、少しだけ振る。

――ちりん

また、鈴が鳴った。

「名雪も、秋子さんも、ずっと待ってるんだからな」

――ちりん

「・・・もちろん、俺だってそうだ」

祐一が視線をあげると、そこには、俺、名雪、秋子さん、そして真琴が楽しそうに笑っているシールが飾ってあった。
そして、水瀬家一同という文字。

「俺たちは、家族なんだからな」

だから、いつか真琴は帰ってくる。
確証はなかったが、祐一にはそう信じるしかなかった。



「そういえば真琴、じつはな、誕生日プレゼント買ってあるんだぞ」

そういって懐から、小さな箱を取り出す。

「あの時は、ちょっと順番が違ってたよな」

祐一が、真琴の手をとって、

「誕生日おめでとう、真琴」

その指に、箱から取り出した指輪をはめた。

――ちりん

それに応えるように、鈴が鳴った。

「真琴が帰ってきたら、今度はホントの結婚式をしような」

それは、無理をしている言葉だったのかもしれない。
真琴は、もう帰ってこないかもしれない・・・
祐一の言葉には、「信じる事」が少しずつなくなってきていた。
そのことに、祐一自身も気がついていた。

「信じないと・・・駄目なのにな・・・」

だんだんと、かすれていく声。
天野、俺は、約束守れそうもないよ・・・
強くあることは、やっぱり一人じゃできないことなんだ。
真琴を信じきれなかったこと、そしてそれをできなかった自分。
天野との約束、そして真琴が望んでいたこと。
ごめん・・・守れそうもない・・・
何かを言葉にしないと、自分に押しつぶされそうだ。
だから、祐一は一言だけ言った。
この物語の終止符を、うたせないように・・・

「真琴」
「なに?」

ハッと顔を上げる。
返事が、あった。待ち望んでいたものが、そこにあった。
よどみのない太陽の光、それを反射する雪景色。
その輝きを後ろにして、真琴は起き上がっていた。
祐一には、真琴が涙でかすんでよくみえなかった。
けれど、それはいまは必要のないものだ。
たった一つの言葉だけで、今までの奇跡を待ち望んだ時間をうめる事ができた。

「・・・おかえり、真琴」
「・・・うん、ただいま!」

止まっていた物語は、次のページを開け始めた。



あとがき

 漣:誕生日SS「真琴」をここにお送りします
名雪:誕生日SSになってるけど、別に誕生日にする必要もなかったんじゃない?
 漣:たしかにそうかもしれないね
あゆ:そういえば、次はボクの誕生日だね。どんなのにするの?
 漣:いや、まったく考えてない
あゆ:うぐぅ・・・ひどいよぅ
名雪:それにしても、あいかわらずだけど、タイトルがあってない気がするよ
 漣:う〜ん、行き当たりで書いていったから、少しはずれてるかもしれない
あゆ:いつもそんな感じだよね
 漣:うぐぅ・・・
あゆ:うぐぅ・・・真似しないで
 漣:あ、また「あとがき」結構長くなってしまった・・・名雪
名雪:はい。ここまで読んでくれた方々、ありがとうございました♪
 漣:ありがとうございました
あゆ:またのご来店を、お待ちしております
 漣:・・・それは違うだろ
あゆ:うぐぅ・・・

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