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あの冬は終わりを告げて、俺たちは3年生となっていた。 クラスの顔ぶれも変わったものの、いつもの4人グループはまた同じクラスだった。 そして、そんな生活にも慣れてきたという日のこと。 |
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キーンコーンカンコーン 授業の終わりを告げる鐘の音。これで今日4回目だ。 「祐一、昼休みだよ」 「おう、名雪は今日どうするんだ?」 「いつもどおり、学食にいくよ」 「そっか、じゃ、いくか」 席をたって、学食に向かう。 いつものことだが、学食はもう席がないくらい賑わっていた。 これもいつものことだが、空いている席が入り口に近いところから埋まっていく。 その人波を避けて、祐一と名雪は奥の方に向かっていった。 香里と北川の二人が、4人分の席を陣取っている。 最近では、授業の終わりとともに北川がダッシュして、この奥の方の席を陣取るという作戦になっている。 そしてそこに香里が座り、4人分の席を確保するわけだ。 その空いている席に、祐一と名雪は座った。 「で、今日は何にすればいい?」 「俺はカレーでたのむ」 「わたしは、Bランチ」 「わかった。じゃ、いってくるよ」 席を取る北川と香里。そして、注文を受ける祐一と名雪。 これが、今の学食での生活となっていた。 「ほい、カレーお待ちどうさま」 「早かったなぁ。おいくらですか」 「2800円になります」 「・・・あんたたち、他人が見たらとてつもなく変な人に見られるわよ」 祐一と北川のショートコントを香里が粉砕した。 香里の前にはまだBランチは届いていない。名雪もまだ戻ってきていなかった。 左手のカレーを北川に、右手の親子丼を空席の前に置いて、祐一はその空席に座った。 祐一が席につくと同時に、名雪が来た。 Bランチを香里に、そしていつものAランチを持って、席につく。 「お前、ほんとにイチゴ好きだよなぁ」 「だって、イチゴなんだもん」 「ぜんぜん意味がわからんぞ」 「うー・・・イチゴなんだよ」 だから、わかんないって・・・。 「相沢君、名雪、今日の放課後、ちょっと待っててほしいんだけど、いい?」 「ん? 別にかまわないけど、なんでだ?」 「ちょっとね、話があるのよ」 ここでは話せないような事なのか? とは聞かなかった。わざわざ放課後にするというのは、なにか理由があるからだろう。 「わかった、放課後、教室にいればいいんだな」 香里は、コクリと頷いた。 その間、名雪はイチゴのムースを見ながら、目を輝かせていた。 「で、話って何なんだ?」 金曜日の放課後、もうすぐ休みという雰囲気に包まれてやる気の無さが充満している教室の中に、祐一と名雪、そして北川と香里だけが残っていた。 北川は、あらかじめ香里から残るようにと話を聞いていたらしい。 「話っていうのは・・・部活の事なのよ」 「部活?」 そういえば、前に名雪から部活をしていると聞いたことがあったな。 「香里って、何の部活してるんだ?」 「演劇部だよ〜。祐一。前に言ったよ〜」 「いや、俺は聞いたことないぞ」 部長だという話は聞いたことはあったが、何の部活をしているかまでは聞いていない・・・と思う。 「それで、部活がどうかしたのか?」 話がそれそうだったのに気づいたのか、北川が香里にそう言った。 ナイス、北川。 「今度、最後の劇をすることになったのよ」 「3年なんだから、部活が終わるのもおかしくないだろ」 「そうじゃなくてね。ちょっと、これ見てくれる?」 香里が机の上に二枚のプリントを広げた。 一枚には最後という劇の大まかな説明、そしてもう一枚には、演劇部についてのプリント。 目を通して見たが、別に変なところはない。なにが問題なのか? 「人員が足りないのよ」 人員が足りない・・・。 祐一はもう一度二枚のプリントを見た。 演劇部が16人。そして劇に必要な人数は、20人以上。 つまり劇が出来ない。そして俺たちに話がある・・・と。 「もちろん、協力してくれるわよね?」 つまり、俺たちに劇に出演しろと言ってるのですか? ニコニコと微笑む香里に、俺たちは頷くしかなかった。 |
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