Side story for "Kanon"
Written by Aoto Koumi
『奇跡の降る場所』


―――ネタばれご注意でございます。―――


「祐一っ」

 名雪がリビングのソファでまったりしてる俺に声をかける。

「んが?」
「変な声出さないでよ…」
「ああ、すまんすまん。
 何か用か?」
「今日、わたし暇なんだ」

 それが俺とどういう関係にある?

「はあ、それで?」
「だから…デートしよっ」

 はあ、デート?

「何で俺が名雪とデートしなきゃいかんのだ?」
「あれ、イチゴサンデー奢るって約束したのは、どこの誰かな?」

 ぐはっ!
 確かにあの時はそう言ったが、何も小遣いピンチなこの時に言わなくても!

「そりゃ確かに言ったがなぁ…」
「あれー、祐一約束破るの?」
「誰もそこまで言ってないっ!」
「じゃ、決まりだね」

 うう…仕方ない。
 男は顔で笑って心で泣く生き物なんだ。


 * * * * *


 泣く泣く商店街に繰り出した俺は、時間が早いからという名雪の要望でショッピングに付き合わされる事となった。
 まあ、ブティックで嬉しそうに服を見ている名雪を見ていると言うのも悪い気分ではない。
 けれども、やっぱり恥ずかしいぞ。

「ねえ祐一、どっちがわたしに似合う?」
「わかる訳ないだろ」

 そんな事俺に聞くのか?

「うー、祐一に選んで欲しかったんだよ…」
「なんでだ?」
「今度デートするときには、それを着ていこうかなって」
「名雪が着ていきたいと思ったもの選べばいいじゃないか。
 別にどんな服を着たって名雪は名雪だろ」
「…そうだね」

 結局、名雪は服を買わなかった。
 もしかしたら、シチュエーションを楽しんでただけなのか?


 * * * * *


 百花屋で名雪の希望を叶えてやると、俺たちは再び商店街をぶらぶらとした。
 時刻はほぼ夕方を指している。

「ねえ祐一、もうこの街には慣れた?」

 名雪が不意に俺に聞いてくる。
 慣れた…か。
 確かに生活すると言う点では慣れたのかもしれないが…

「さあて、な」
「…答えになってないよ」

 名雪は不満そうに言う。
 久々に訪れた街で、俺は色々な出会いをして、色々な日常を過ごして…
 そしてそばにはいつも名雪がいた。
 これだけは変わらなかった。
 そして、これからも変わらない。

 不意に、俺の脳裏に何がが浮かび上がる。

「名雪、ちょっと付き合え」
「え、わ、急に引っ張らないでよ〜」

 名雪の抗議は無視して、俺はある場所へと歩き始めた。


 * * * * *


「…ここだ」
「わたし初めてこんな所へ来たよ〜」

 それは鬱蒼と生い茂る森の中だ。
 その中央で一際大きな大木の切り株が存在感を主張している。
 俺たちはその切り株に座った。

「何でここに来たの?」
「昔、俺が見つけたんだ。
 何か嫌な事があったとき、よくここに来ては独りで考え事をしてた。
 昔はこの切り株も大きな樹だったんだけどな…何で切られたんだろうな?」
「わたしも聞いた事ないよ」
「まあ、それで名雪にも見せておこうと思ってな」
「ふうん…いい場所だね、ここ」

 いい場所か…
 そうだな、久々に来てみたけどそうかも知れないな。

「なあ、名雪。
 さっきの答えだけど…俺は確かにこの街の暮らしには慣れた。
 この街も好きになりかけている。
 そして、この街をもっと好きになりたい。
 でも、それには名雪…お前が必要だ。
 名雪がそばにいてくれるから、俺もこの街を好きになれるんだ」
「祐一…」
「名雪…これからもずっと一緒にいて欲しい」
「わたしも…祐一がずっといてくれるから笑っていられるんだよ。
 お母さんが事故で死にかけたときに、祐一は黙ってわたしを支えてくれた。
 だから、わたしも祐一の支えになりたいよ。
 いつまでも…」
「ありがとう、名雪…」
「これからも、よろしくね、祐一…」

 俺たちの影が重なり合う。
 そのときずっと上のほうで誰かがにっこり笑いながら俺たちを見ている気がした。
 そして、時期はずれの雪が降る。

「ははっ、これもちょっとした奇跡だな」
「うん、そうかも知れないね」

 俺たちは、黙って降り始めた雪を見つめていた……


Fin.



あとがき

 勝手に相互リン記念として書きました。
 短い上にへぼで申し訳ないです。
 今、行を調べてみたら自己最短(爆死)。
 表現が足りなくて申し訳ない!

 ストーリーは、名雪ルートの本編とEDの中間くらいかな?
 『学校』に名雪を連れて行ったのは、最後に雪を降らせる場所にふさわしいかなーって、それだけです。
 しかも、作品タイトルと内容がいまいち一致してないし。

 皐月さん、ページ容量の無駄になるかも知れんが我慢して受け取ってくれい。


2001.12.03 Complete
神海 青人