<レジーナ通信1>
【フィリオ】 ナンバー7、応答してくれ。
【レジーナ】 フィリオ? どうしたのですか?
【フィリオ】 いや、べつに用はねえんだけどさ。
なんとなく、声が聞きたくて。
【レジーナ】 まあ、嬉しいわ。
わたくしも声が聞きたかった。
【フィリオ】 俺の声を?
【レジーナ】 あなたはわたくしの霊感をかきたててくれる。
すばらしい音楽を生みだしてくれるの。
あなたはわたくしの詩神ミューズよ。
いつでも声を聞かせてね。
【フィリオ】 ……あ、ああ、いいぜ。
へへっ! 照れるな。
【フォクシィ】 ……バカ。
【フィリオ】 なんか言ったか?
【フォクシィ】 べつに〜。

<レジーナ通信2>
【フィリオ】 ナンバー7、応答してくれ。
【レジーナ】 フィリオ? そんな他人行儀な……
レジーナと呼んでください。
【フィリオ】 そうか。へへっ! じゃあ……
レジーナ?
【レジーナ】 はい、フィリオ?
【フィリオ】 えへへへへへ。照れるな。
【フォクシィ】 バカ。
【フィリオ】 なんだよ!
【フォクシィ】 耳はいいけど頭は悪いのね。
【レジーナ】 フィリオ? 霊感をちょうだい。
あなたが持っている空気が
わたくしを高揚させてくれるのです。
【フィリオ】 へへっ! いいぜ、レジーナ。
どうすればいい?
【レジーナ】 声を聞かせて。あなたの声を。
【フィリオ】 いいけどさ、そのおう、なんて言えばいい?
【レジーナ】 構いません。なんなりと。
【フィリオ】 ……って言われてもさ。
【レジーナ】 じゃあ名前を呼んで。
わたくしの名前を。
【フィリオ】 わかった。じゃあ呼ぶぜ。
……レジーナ。
【レジーナ】 いいわ。もっと聞かせて。
【フィリオ】 レジーナ。
【レジーナ】 もっとよ、もっと。
【フィリオ】 レジーナ!
【レジーナ】 ああ、フィリオ!
いいわ、とってもいいわ!
【フォクシィ】 (ブツッ)
【フィリオ】 あっ!
フォクシィ! なにすんだよ!
勝手に通信切るなよ!
【フォクシィ】 おしゃべりは充分でしょ!
レースに戻るわよっ!
【フィリオ】 うっ……なっ、なに怒ってんだよ?
【フォクシィ】 あなたって、最っっ低!

<レジーナ通信3>
【フィリオ】 よう、レジーナ元気か!
……ん?
通信が、つながってねえぞ?
フォクシィ!
おまえ、なんかやったろ!
【フォクシィ】 やってないわよ!
【フィリオ】 じゃ、なんで応答しねえんだ?
【フォクシィ】 ……よく見なさいよ。
ほかのマシンのクラウンと交信中だわ。
プライベート回線指定だから割り込めない。
【フィリオ】 誰としゃべってるんだ?
【フォクシィ】 ナンバー14だって。
【フィリオ】 ……伯爵かよ!?
なにをしゃべってんだろ?
【フォクシィ】 名前を呼ばせてるんじゃないの?
レジーナ!
レッジィィーナ!
【フィリオ】 ……。
……あんまり想像したくねえな、それ。
【フォクシィ】 たしかに……。

<レジーナ通信4>
【フィリオ】 よう、レジーナ元気か!
【レジーナ】 フィリオね?
ああ、わたくしの霊感のみなもと!
【フィリオ】 おまえさ、伯爵としゃべってたろ?
【レジーナ】 マクシミリアン伯と?
ええ、話していたわ。
よくお相手してくださるの。
【フィリオ】 なにをしゃべってたんだ?
【レジーナ】 いろいろよ。美学、哲学、宗教学……。
【フィリオ】 !?
……むっ、難しい話をしてんだな。
【レジーナ】 それよりも、フィリオ。
わたくしに霊感をくださらない?
【フィリオ】 おう、まかしとけ!
名前を呼べばいいんだろ!
【フィリオ】 レジーナァァ!
【レジーナ】 いいわよフィリオ、いいわ!
【フィリオ】 レッジィィナァァァァァ!
【レジーナ】 ああフィリオ、いいわ!
【フィリオ】 レッ
【フォクシィ】 うるさーい!
【フィリオ】 !?
【レジーナ】 いいわ!
【フィリオ】 !?
【フォクシィ】 !?
【レジーナ】 フォクシィ!
いまの叫びは最高だったわ。
【フォクシィ】 えっ? えっ、あの、私!?
【レジーナ】 わたくしは心臓を貫かれたようでした。
霊感が、楽想があふれてくる!
フォクシィ!
【フォクシィ】 はいっ!
【レジーナ】 もっと聞かせて!
【フォクシィ】 あ、えーと……
ばかやろーっ!
【レジーナ】 ちがう!
【フォクシィ】 !?
【レジーナ】 いまの叫びには魂がこもってません!
やり直し!
フィリオも休まないで!
【フィリオ】 ……あ〜、レジーナ?
あのさあ、レースに戻りたいんだけど。
【レジーナ】 ……あら。わたくし、つい。
ごめんなさいね?
たまに、われを忘れてしまうのよ。

<レジーナ通信5>
【フィリオ】 よう、レジーナ元気……?
また交信中か?
【フォクシィ】 ナンバー14とだわ。
マクシミリアン伯爵と、難しいお話をしてるところみたいね。
【フィリオ】 ちぇっ。
プライベート回線にしなきゃいいのに。
俺も混ぜてくれよな。
【フォクシィ】 よしたほうがいいと思う。
眠くなるわよ。
【フィリオ】 ……。

<レジーナ通信6>
【フィリオ】 よう、レジーナ元気……って、おいおい?
まーた伯爵と交信中かよ?
【フォクシィ】 あのふたり、なんとなく雰囲気が近しいわ。
きっと話が合うんでしょうね。
レジーナは芸術家だし
伯爵は哲学者だし……。
【フィリオ】 哲学がわかったからって
霊感を与えられるとは限らないぜ。
【フォクシィ】 そうかも知れないけど……。

<レジーナ通信7>
【フィリオ】 よう、レジーナ! 聞こえてるか?
【レジーナ】 フィリオ! ひさしぶりですね!
【フィリオ】 呼んでも呼んでも通じねえんだもん。
【レジーナ】 ごめんなさい。
マクシミリアン伯との会話は
わたくしを思索の高みへ運ぶのです。
ついつい長くなってしまって……。
いまは思索すべき時ではないと
わかってはいるのだけれど……。
【フィリオ】 頭が良くたって霊感が訪れるとは限らない。
そうだろ、レジーナ?
【レジーナ】 ……フィリオ、そうですけれど。
思索もまた必要なのです。
わたくしにとって音楽は、世界のすべて。
わたくしは感性だけで世界をとらえる。
でも、知れば知るほど……フィリオ?
もっと知りたくなる。
もっともっと深く知りたくなる。
あのかたは……マクシミリアン伯爵は
「思索は牢獄だ」と
おっしゃるのだけれど……。
わたくしは、そうは思いません。
わたくしは、閉じこめられてはいないし、
どんどん大きく広がっている。
わかりますか、フィリオ?
わたくしの言っていることが?
【フィリオ】 ……わかるような気がするよ、レジーナ。
つまり、あんたは幸せなんだろ?
【レジーナ】 ええ、ええフィリオ!
わたくしは幸せよ!

<レジーナ通信8>
【フィリオ】 よう、レジーナ元気……?
また交信中か?
【フォクシィ】 ちがうわ。メッセージが表示されてる。
【レジーナ】 「新しい交響詩の作曲作業に入りました。
勝手ながらレース中の通信等は、ご遠慮を
いただけますようお願いいたします」
【フィリオ】 新作……。
即興演奏だけじゃなく、譜面に残そうって
気になったんだな……。
がんばれ、レジーナ!


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