<マクシミリアン通信1>
【フィリオ】 ナンバー14応答してくれ。
【ヤーコブ】 フィリオ・ロッシ君か?
兄上になんのご用かな?
【フィリオ】 ヤーコブさんか?
別に用はねえけど、どうしてるかなって。
【ヤーコブ】 フィリオ君、兄上はお食事中だ。
【フィリオ】 ……てゆーか、レース中だろ?
【ヤーコブ】 とくに急ぎの用でなければ
遠慮して欲しいところだが……は?
はっ、兄上。
フィリオ君、兄上がお話しになるそうだ。
回線をつなぐ。
【マクシミリアン】 フィリオ君かね?
【フィリオ】 よう、伯爵さん。
悪いね、メシ中なのにさ。
【マクシミリアン】 構わんよ。食事中でなければ、会話は楽しめない。とめどない思索が始まってしまうからね。
【フィリオ】 ああ、そう……。
俺には、よく判んねえけど……。
【マクシミリアン】 思索する習慣は持たないのかね?
【フィリオ】 考えごと? いや、あんまり……。
【マクシミリアン】 さいわいなるかな。
思索は牢獄だよ、フィリオ君。
【フィリオ】 はあ。
【マクシミリアン】 思索は、選べれた者にだけ許される快楽であり、大きく重い責任を伴う。
【フィリオ】 はあ。
【マクシミリアン】 貴君は自由という重荷に耐えられるかね?
【フィリオ】 はあ。
【マクシミリアン】 ……それはさておき、この果物は、かなりの出来だね、アントン?
【アントン】 はっ、はいっ、兄上!
【マクシミリアン】 あとでフィリオ君にも進呈しよう。
送ってあげなさい、アントン。
【アントン】 はいっ、兄上!
【フィリオ】 えっ? なに、くれるのか?
ありがとよ、伯爵さん!
【フォクシィ】 ……恥ずかしいなあ、もう。

<マクシミリアン通信2>
【フィリオ】 ナンバー14応答してくれ。
【ヤーコブ】 フィリオ・ロッシ君か?
兄上になんのご用かな?
【フィリオ】 ヤーコブさんか?
兄上さん、お食事中かい?
【ヤーコブ】 安心したまえ。君からの通信が入った場合は、すぐにつなぐようにとのことだ。
【フィリオ】 ホントに?
【ヤーコブ】 回線をつなぐ。
【マクシミリアン】 フィリオ君かね?
【フィリオ】 よう、伯爵さん。
【マクシミリアン】 フィリオ君、貴君なら、バウムクーヘンとアプフェル・シュトゥルーデルの、どちらを選ぶかね?
【フィリオ】 はあぁ!?
なにそれ、呪文かい?
【マクシミリアン】 菓子だ、フィリオ君。
メインのデザートを、どちらにしようかと思ってね。
貴君ならば、どうする?
【フィリオ】 て言われてもなぁ。
どんなのか知らねえからな。
じゃあ、アップなんとか。
【アントン】 ア、アプフェル・シュトゥルーデルですね。
それで構いませんか、あ、兄上?
【マクシミリアン】 もちろんだよ、アントン。
しかし、フィリオ君が選んでくれたのだ。
彼に送ってさしあげてはどうかね。
【アントン】 わかりました、兄上。
アプフェル・シュトゥルーデルは
フィリオさんに送ります。
【フィリオ】 えっ。そんなぁ〜、悪いなぁ〜。
【フォクシィ】 ……恥ずかしいなあ、もう。

<マクシミリアン通信3>
【フィリオ】 ナンバー14応答してくれ。
……ん?
通信が、つながってねえぞ?
【フォクシィ】 ほかのマシンのクラウンと交信中だわ。
プライベート回線指定だから割り込めない。
【フィリオ】 誰としゃべってるんだ?
【フォクシィ】 ナンバー7ね。
【フィリオ】 レジーナか?
【フォクシィ】 あのふたりなら話が合いそう。
食べ物の話だけじゃなく……。
【フィリオ】 ちぇっ。なんだよ、それ。

<マクシミリアン通信4>
【フィリオ】 ナンバー14応答してくれ。
【ヤーコブ】 フィリオ・ロッシ君か?
待ってくれ。いま回線をつなぐ。
【マクシミリアン】 フィリオ君かね?
【フィリオ】 よう、伯爵さん。
こないだはレジーナと話し中だったな。
【マクシミリアン】 レジーナ君は素晴らしい芸術家だよ。
じっくりと語り合いたいものだ。
【フィリオ】 ふうん……。
どんな話をしてんの?
【マクシミリアン】 さまざまだよ、フィリオ君。
美について、論理について、神について、人生について、思索という牢獄について。
【フィリオ】 ……はあ。
……あのさ、それ、なんか難しいんだけど、
レジーナは判ってんのかな?
【マクシミリアン】 彼女は理解しているよ、フィリオ君。
彼女の意見には、素晴らしい示唆が含まれている。教えられるところは多い。
【フィリオ】 はあ。
【マクシミリアン】 私の話は退屈かね?
【フィリオ】 いや〜、なんか俺には難しくてさ。
別世界だなって感じ。
うまいもんの話ならともかく……。
【マクシミリアン】 そうとも。美味はすばらしい。
美味を楽しむとき、私は果てしのない思索から解放され、純粋なる快楽に遊ぶ至福のひとときを許されるのだ。
【フィリオ】 ……うん。とにかく、うまいもんはいい!
幸せになる! そうだよな、伯爵さん!
【マクシミリアン】 そうとも、フィリオ君。
【フォクシィ】 ……恥ずかしいなあ、もう。

<マクシミリアン通信5>
【フィリオ】 ナンバー14応答してくれ。
……ん?
またレジーナと話してるのか?
【フォクシィ】 きっと高級な話をしてるのよ。
【フィリオ】 うるせえなあ。
俺だって伯爵と意気投合したんだぜ?
うまいもんは最高!
【フォクシィ】 はいはい……。

<マクシミリアン通信6>
【フィリオ】 ナンバー14応答してくれ。
……ん?
またレジーナと話してる。
よくネタが尽きねえな。
【フォクシィ】 て言うよりね、フィル?
伯爵は、あなたのこと気に入ってるみたいだけど、それが不思議なのよ、私には。
【フィリオ】 なんでだよ。
そりゃあ俺は、インテリぶった会話なんかできねえけどさ。
うまいもんの味だったら判るぜ。
それだけじゃ足りねえのか?
【フォクシィ】 ……そういうことなのかなあ。

<マクシミリアン通信7>
【フィリオ】 ナンバー14応答してくれ。
【ヤーコブ】 フィリオ・ロッシ君か?
待ってくれ。いま回線をつなぐ。
【マクシミリアン】 フィリオ君かね?
【フィリオ】 よう、伯爵さん。
最近は思索してるのかい?
【マクシミリアン】 逃れられない牢獄なのだよ、フィリオ君。
そう、フィリオ君。なにごとも切り離して考えるようにしなさい。
【フィリオ】 はあ。
【マクシミリアン】 たとえば、快楽だね。
【フィリオ】 はあ。
【マクシミリアン】 あらゆる快楽は表面にとどめるのだ。肌と鼻と恥じらいの場所だけで楽しみ、貴君の内部にまで侵入させてはいけない。
わかるかね、少年よ。
【フィリオ】 う〜ん……。
【マクシミリアン】 いいかね、貴君の頭が快楽の侵入を許したとき、貴君は退廃の急斜面を転がり落ちるしかなくなるのだ。
【フィリオ】 う〜ん……。
【マクシミリアン】 わかるかね、少年よ。
【フィリオ】 う〜ん……。
つまりさあ、伯爵さん……。
深く考えるな、って
そういうことかな?
【マクシミリアン】 そのとおりだ、フィリオ君。
【フィリオ】 だろ!? だろ!
そう思ったんだよ!
【フォクシィ】 ……恥ずかしいから、あまり喜ばないで。

<マクシミリアン通信8>
【フィリオ】 ナンバー14応答してくれ。
【ヤーコブ】 フィリオ・ロッシ君か?
待ってくれ。いま回線をつなぐ。
【マクシミリアン】 フィリオ君かね?
【フィリオ】 よう、伯爵さん。
【マクシミリアン】 弟のアントンが、貴君に、伝えたいことがあるらしい。
【フィリオ】 アントンが?
俺に?
【アントン】 ふぃ、フィリオさん。アントンです。
【フィリオ】 よう!
どうしたんだい?
【アントン】 あ、あの、フィリオさん。
バジル、お好きですよね?
【フィリオ】 好き? 好きだって?
バカ言うなよアントン!
【アントン】 えっ!? き、嫌いなんですか?
【フィリオ】 ンなわけねえだろ!
好きとか嫌いとかじゃねえんだよ!
俺の魂だよ!!
【アントン】 た、魂……!?
【フィリオ】 バジルはジェノバっ子の魂だ!
どんな料理にもバジルだ!
そうだろ、アントン!
【アントン】 そ、そうですよね!
よかった……。
あの、フィリオさん。
いいバジルが手に入ったんです。
お送りしますので……。
【フィリオ】 ホントかっ!?
あんがとよ、アントン!
【フォクシィ】 ……恥ずかしいから、あまり喜ばないで。

<マクシミリアン通信9(以降固定?)>
【フィリオ】 ナンバー14応答してくれ。
……ん?
あ、そっか。レジーナとお話中か。


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