小説ラリえもん
第5話「グッバイ、グッナイ」

 前回までの大体のあらすじ・・・ジャイヤンの猛攻にたじろいたラリえもんは、「まあまあ棒」によってその危機から脱する。しかしジャイヤンの本能はそのまま暴走し、ラリえもんは再び危機に瀕する。そこでラリえもんがひらめいた最後の手段とは・・・そこに未来はあるのだろうか。
「まともなあらすじも何か物足りないな」
 勝手なことを口走って、ラリえもんは胸一杯に息を吸い込み始めた。これが禁断の秘技のための準備なのか、は分からないが、とにかく彼のまわりには一種のオーラめいたものが渦巻き始めた。一方、ジャイヤンはこの気配を意に介しようともせず、歌(?)を歌い続けていたのだが、かたわらの空を泳いでいた小鳥達は、抵抗虚しく地上に引きずりおろされていた。
 ジャイヤンが歌い始めてから2分、ラリえもんが息を吸い込み始めてから1分30秒が経過した頃、ついに均衡が破られた。セピア色に染まる空に、ひとすじの閃光が走る。
「5次元ポケット解放!」
 なんとラリえもんは、自分がおなかの辺りにくっつけている5次元ポケットを、おもむろに裏返してしまった。するとその中から暗黒が染みだし始め、あたりをどんどん支配し始めていく。・・・ジャイヤンのまわりもアッという間に闇に支配されたのだが、彼は意に介しようともしない。自分のゴーダ・リサイタルに、精神レベルGで陶酔しきっていることは容易に想像が付いた。つまりジャイヤンはこの歌を歌うことによって、自らの精神レベルを高め、あらゆる妨害要素を物質レベルではなく、精神レベルから除去しようとするのである。常人には「ボエー、ホゲー」としか聞こえない彼の魅惑のヴォイスも、ジャイヤンにとってみれば「儀式」のおまけに過ぎないのだ。
「こうなることは想定済みだ」
 ラリえもんはこう言い放って、指をパチンと鳴らした(どうやって?指?)。いきなり「ビッグライト」が暗黒の空から現れ、ラリえもんを照らす。これを合図とばかりに、ラリえもんは狂ったように指を鳴らし始めた(・・・だからどうやって)。するとあらゆる道具が現れ、ラリえもんをその道具様にスープアップさせる。ビッグライトによって身長が元の2倍の246cmになった彼は、既に亜空間となった空き地を見渡し、深い呼吸に再び身を委ねる。ちなみに体重は元から考えると、123kgかける2の3乗となって1トン近くになっていたのだが、彼の頭がそれに深遠なる関心を持とう筈もないことは、もはや言うまでもない。
 ひみつ道具をパワーアップアイテムに変化させたラリえもんは、そのままの勢いでジャイヤンの方に突っ込んでいった。
「もうそんな歌は通用しない」
 ジャイヤンのほうは既に、「組曲ジャイヤニズム」の3番までを歌っていたが、この曲は120番まであるので、歌の終わりによって攻撃がストップするという危惧を抱く必要はなかった。しかし、それでもラリえもんの突進は、ジャイヤンにまわりの状況を把握する機会を与えるに十分なほどの迫力を持っていたため、ジャイヤンは突然歌うのを止めてしまった。彼は、何か不機嫌そうだ。
「あれ、そういや、かあちゃんに早く帰れって言われてたっけ」
 ナチュラルに母親との契約を思いだした彼は、5次元ポケットの作り出した異常空間内で普通に振る舞い、そのままスタスタと歩いて帰っていってしまったのだ。ラリえもんはそのままの勢いを止めることはできない様子で、三本土管に突っ込みそうになったが、全パワーを集中させてジャイヤンの無敵の行進を止めようとした。
「ぐあああっっっっっ!!!」
 何とか土管の前でストップさせることはできたが、ボディに受けたダメージは相当なものと思われた。突進を引き止めた彼の足下には、深さ30cmのができあがっていた。その溝から足を抜き出し、ほこりを払って5次元ポケットをまた裏返し、正気な空間をリバースさせてから、彼は今日三度目の深呼吸をした。体は元のサイズに戻り、空には体力を取り戻した小鳥達がふらふらと舞い上がっている。
口ほどにもない男だった」
 自分なりに戦いに満足していた彼はそう言い放って、土管の空き地を後にした。

(泣かぬなら 続けてみせよう ラリえもん  by 豊臣秀吉)
作:supi


(作者注・・・この作品は、文章の常識等というものとはかけ離れていますので、多分に不条理で投げやりな表現が用いられています。ご了承ください。なお、子供に夢を与えている某青色猫型ロボットとは、微塵も関係ありません。)
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