第1章

「なんなんだ、これ…」
 今、俺の机の上には拳銃のようなものがころがっていた。普通に見ると、これは拳銃なんかではない。銃口がないし、弾倉もない。銃と似ているのはグリップとトリガー、それに全体的なフォルムぐらいである。銃口にあたるところには、何かパネルのようなものがついている。
 俺は、恐る恐るそれを手に取り、トリガーを引いてみる。
 すると、先のパネル開き、スライドする。開いたパネルの内側の左側にはキーボードが、右側にはモニターがついていた。
 「これって…」
 その物体の形状は、俺の記憶の片隅を刺激した。
 机の上にあるミドルタワー型のPCを急いで起動した。完全に起動するのももどかしく、俺はマウスとキーボードに取り付いた。
 PCが起動すると、以前みた、PCメーカーのホームページ―――今はそのメーカーがつぶれてしま、ホームページは存在しない。だから、ホームページといってもPCにとっておいたファイルなのだが―――を開く。
「こいつだ…」
 一つの画像をクリックし拡大する。多少形状は違うのだが、間違いない。今、俺の手元にあるのと同じ物だ。
 このメーカーはいろいろの形のPCを作ることで、マイナーではあったが一部の人間には知られていた。
 他にも、画像を開くといろいろなPCがあった。ハンドベルトタイプ、サックス型、ギター型、ナックル型など、様々だ。形もすごいのだが、そのスペックもかなりのものだった。
 俺の手元にある、ガンタイプPC―――通称、ガンプというらしい―――の下に注意書きがあった。
「なになに、『当社の製品において使用するソフトウェア、プログラム等はDDS−NETよりダウンロードしてください』か。」
 他に、何か情報はないか見てみるとこのPCのマニュアルがあった。
 そのマニュアルによると、トリガーを引けばOSが起動するらしいのだが、
俺の手元にあるのは電源は入るのだが何もおきない。
「データがクラッシュしてんな」
 こうなると、フォーマットするしかない。幸い、俺のPCと接続してある程度動かせるみたいなので、早速ケーブルを引き出しから取り出すと、接続しフォーマットをはじめた。
 フォーマットが終了すると、DDS−NETに接続し、ホームページを開く。手元にガンプ用のデータが何もないため、片っ端からダウンロードすることにした。
「まずはOSか…」
 OSをこのような形で公開しているのは珍しいのだが、どうやらメーカーがつぶれても、このメーカーのPC用のソフトウェアを開発している人間がいるのだろう。
 「OSのダウンロード」をクリックし、ダウンロードを開始する。
 ダウンロードにはしばらく時間がかかりそうなため、一息つくことにした。
「ふう…」
 机にのっかってた缶ジュースを手に取り、それをあけると、一気に飲み干す。
「しかしなあ…」
俺はガンプを手に入れたいきさつを思い出していた。


俺は普段どおりに高校に登校し、退屈な授業を受け、いつもどおりに部活にでて、何事もなく下校したはずだった。
 下校途中のことである。
 いつもの帰り道をウォークマンでお気に入りの、やや聞きあき始めた曲を聞きながら歩いていた。普段から人気のない道だったのだが、今日はいつにもまして人気、いや動物の気配を感じなかった。
 何か違和感があった。
 空を見上げると、気のせいか青い空が紫がかっていた。段々違和感が大きくなり、それは不安へと変わっていった。
 俺はそのまま歩きつづけたが、不安は振り払えなかった。ウォークマンのボリュームを一気にMAXまで上げ、歩を速める。
 いつもはさほど気にしない道も長く感じる。
 やがて焦燥が不安を悪寒に変えていく。
「なんなんだよ…」
 言ってしまってから俺は後悔した。
 独り言が回りに誰もいないことを実感させ、不安をさらに募らせる。
 恐怖と争いながら、何とか歩いていると、俺は道の脇に何かが落ちているのを見つけた。
―――なんでもいい、何か、何か…
 周りに誰もいない、何もない恐怖を紛らわせてくれる、そんな気がした。この、不気味な空間に反抗するように「それ」は冷たく、鈍い銀色を放っていた。
近づいてみると、それは銃のような形をしていた。
「…」
 俺が、その銃らしきものを拾い上げると、周囲の不気味な空気は、何事もなかったように消えうせ、あたりは平穏を取り戻した。
俺はそれを胸に抱え、その場を走り去り、家路を急いだ。

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