ETARNAL BLUE


       □ ■ □ ■ □

 
いつからだろうか?
 一時も視線から外したくない位に、気になり出したのは。
 ただ、じっと見ているだけで幸せを感じる様になったのは。
 いつからこんな・・・・・・・・・・

 「・・・・・ったく、かなわんなぁ〜。この俺がこないにハマるなんて」

 言葉が風に乗って宙に舞った。


       □ ■ □ ■ □

 
今日は女王試験審査の日。
 女王候補・守護聖はもちろんのこと、女王候補の学習に深く関わる教官達
も女王陛下に謁見し、試験の進み具合を審査する日である。

 「今日は暇やな〜、女王候補のお嬢ちゃん達も守護聖様達もみぃんな仕事やし」
 そんな溜息をつきつつ「商人」ことチャーリーは、ぽかんと空を見ながら呟いた。
 「安心して下さい。暇なのは貴方だけですよ。普通は皆、仕事をしているます」
 チャーリーの独り言に几帳面にツッコミを入れたのは、王立研究院主任のエルンスト。
 直接的に試験に参加している訳ではないが、それでもこの試験の為に聖地に召喚されているので、
一応審査の日には聖殿ではなく、ここ・王立研究院の奥の間に集まる。
 
 ・・・・・・のだが。

「なぁ、なんでメルちゃんは来うへんの?」
 そう、占いの館の(一応)主人のメルがこの場に居ないのだ。
 「もしかして・・・・、ちっちゃ過ぎて見えへんだけとか?」
 メル本人に聞かれたら号泣されそうなことを言いながら、部屋をきょろきょろと見渡した。
 「・・・・・・・・・・熱の為、今日は欠席と、先程申し上げたはずですが」
 やはり聞いてなかったかとエルンストは溜息をついた。
 さっきからこっちの話には上の空で、ただ窓の外を眺めていたチャーリーには
やはり自分の声は届いていなかったらしい。
 「あれ? そうやったん? 俺、ボケとったみたい。嫌やわぁ〜、もう歳かな〜?」
 あはははは〜と笑いながら、オーバーアクションでごまかそうとしているのがわかった。
 「・・・・・・・・・・・貴方らしくないですね」
 ニコリともせずエルンストは言葉を放った。
 「・・・・・・そう? いつも通りやと思うけど」
 「いいえ。今日は貴方らしくない。その態度もごまかし方も。何かあったんですか?」
 緻密な分析の結果・・・・とは言いませんが、と付け加える。
 その言葉を黙って聞きながらチャーリーは再び窓の向こうの蒼天をじっと見ていた。
 何も答えないチャーリーに訝しげな視線を送る。
 だが、それも窓を見つめるチャーリーには全く効果が無かった。

 重い沈黙。
 
 エルンストの溜息だけが広い室内に響いた。
 仕方なく書類でも整理しようかと立ち上がろうとした瞬間、
 「この空の色・・・・・・・・・・・・、アンタの髪の色に似てるなぁ・・・・・・・・・・・・・」
と、声がした。
 果たして今のが独り言なのか、自分に向けて言われたものなのか、
エルンストには判断が付けられなかった。
 きっと独り言だろうと、立ち上がり書類に手を伸ばした。
 「ちょっと。聞いてるん?」
 ・・・・・・・・・・・・独り言じゃなかったらしい。
 目を通しかけた書類を置いて、チャーリーを見やる。
 厳しく、それでいてどことなく悲しげな瞳が自分を射抜いていた。。

 まるで捨てられた子犬が、捨てた主人を恨みながらそれでも待っているかの様な。

 思わず息を飲んだ。胸が締め付けられるような感覚に襲われて。
 「ひ、独り言だと思っただけです」
 心が揺らいだことが小さな動揺となり、声に少し震えた。
 だが、チャーリーはそれを気にする様子もなく、肩を竦めた。
 「『アンタ』って言ったんやから、独り言ではないと思うねんけどな」
 「ならば最初に主語を付けて頂きたかったですね」
 落ち着きが戻って来た。
 動揺を小さな息と混ぜ合わせて、少しずつ外に吐き出していく。
 「ほんじゃ、エルンストさん」
 「・・・・・・・・・・・・・・なんでしょうか?」
 また突然動揺が甦ってきた。
 何故? ただ名前を呼ばれただけなのに・・・・・・・・・・
 動揺したことに動揺しているエルンストには気付かず、チャーリーは自分の言葉の続きを紡ぐ。
 「この試験、あと・・・・・・・・・・どれ位で終わると思う?」
 突然の問い。
 一人で混乱していたとはいえ、さすがに意表を突く言葉だったので直ぐには答えられなかった。
 が、仮にも王立研究院主任。
 自分の管轄内の質問だと理解してたエルンストは、瞬間的に冷静さを取り戻して手にしていた
書類を見せた。
 「何、これ?」
 「本日付けの新宇宙の発展記録及び発展予想データ一覧です」
 「・・・・・・・・?」
 「わかり易く言えば、アルフォンシアとルーティスの成長記録です」
 なるほどと納得してチャーリーはその書類を取って読みはじめた。
 本来ならば機密書類として分類されるべき物だが、女王試験に関わる人間には適応しないだろうと
判断してその書類を見せた。
 一通り目にしたチャーリーは小さく溜息をついて、外に目を向けた。
 「あと2週間・・・・ってトコかな」
 「そうですね、その程度でしょう」
 チャーリーの正確な読みにエルンストは肯いた。
 そう、この試験はもう最終段階に入っており、あと2週間もすれば新たな女王が決まる。
 そして自分達の役割も・・・・終わる。
 そうなると外部から招聘された者達は皆・・・・・・・このチャーリーも聖地を去るだろう。 

 ・・・・・・・、っ!

 痛かった。
 何かに刺されたような鋭い痛みが走った。
(何故『この人が聖地を去る』だけで、私は胸が痛いのだろう・・・・・・?)
 これではまるで自分がチャーリーに・・・・・・・・・

 「・・・・・・・・・・・もう逢われへんなるんやな」

 本当にチャーリーはドキッとするようなことを言う。
 まるで心を見透かすような。

 「え、ええ。もう彼女達は『女王候補』ではなくなってしまいますからね」
 「・・・・・・・・・・そうじゃなくてやな。アンタに逢われへんなるって言ってんねん」
 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・え?」
 
 思考がとまった。

 (誰に逢えなくなるって? 私に? え、ちょっと待って・・・・・・・・・・・・)
 チャーリーの言葉が理解できなかった。
 どう答えたら良いか、とかそういうのではなくて。
 「よく・・・・・おっしゃる意味がわからない、のですが・・・・・」
 そう答えるだけで精一杯だった。
 エルンストは思わずチャーリーから視線を外した。
 「そのまんまの意味やねんけどな。・・・・・・・・俺、さっきからずっと空見てたやろ?」
 チャーリーは逃げるように目を逸らしたエルンストを気にする訳でもなく、
自分のペースで話を続けている。
 「でな、キレーな聖地の空見てたら、どっかで見たことある色やってん」
 「・・・・・・・・・・・・」
 「ほんで、ずっとどこで見た色やろうって考えてた。・・・・・・・・・で、やっとわかってん
ああ、この色はアンタの髪の色やったなって」
 「あ、貴方は一体・・・・・・・」
 いつもの何気ない口調で世間話の如く話すので、聞き流してしまいそうになる。
 だけど、本当はとても大切なことを言ってるのではないだろうか、とエルンストは思う。
 さっきから感じる、自分が形にも言葉に出来ず、もどかしい想いを。
 この人なら・・・・・・・・形にしてくれるかもしれない。

 「俺、アンタのこと好きやねん」
 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
 「何でかもいつからも・・・・・・・もうさっぱり思い出せん・・・・。でもな、俺はアンタの事が好きや」
 
 静かで、真剣な声。
 普段の彼らしくない、でもとても彼らしいと思う。
 どう答えようかなんて考える間もなかった。
 答えは最初から決っていたような気がするから・・・・。

 「だから、俺は・・・・・」
 「困ります」
 「え?」
 チャーリーの顔に困惑が広がった。
 エルンストは顔を上げてそんなチャーリーを見つめ返した。
 「『困ります』と申し上げたんですが」
 「・・・・・・・・・・・・そ、うやんな、困るやんな。ゴメンな、もう今のは忘れ・・・・・」
 「ええ、困ります。私は貴方の本当のお名前も知らないんですよ?」
 「・・・・・・・・・・・・・・・・え?」
 今度はチャーリーが驚く番だ。
 エルンストの言葉の意味・・・・・・・・、それを自分の願う通りに受け止めてもいいのかどうか迷う。
 それとも本当に拒絶されているのか?
 とても曖昧でエルンストの顔からは読み取れない。
 「貴方のお名前すら知らないのに、そんな事をおっしゃらないで下さい。それに・・・・・・」
 「それに・・・・?」
 「・・・・・・・・・・私だって試験が終われば違う星に行きますし・・・・・・・・・、
 ・・・・・・・・全く逢えない訳では・・・・・・・・・っ!!・・・・・・・」
 
 立ち上がり身を乗り出したチャーリーが、エルンストの口唇をふさいだ。
 言いかけた言葉だけが残された沈黙の時間。
 エルンストは驚いて瞳を見開いたが、それを拒むことはなかった。
 長い長い、短い時間が過ぎる。
 「貴方は・・・・ここをどこだと思っているんです・・・・・・」
 非難めいた言葉で照れを隠す。何か言わないと恥かしくて気が狂いそうになる。
 「今度逢う時はアンタにはちゃんと名乗る。だから、絶対俺のこと忘れんといてや。
 俺は絶対アンタを見つけ出すから。アンタがある星で商売するで」
 思わず笑いがこぼれる。
 突然笑い出したエルンストに、チャーリーは何かおかしな事でも言ったかと悩み、
また珍しく声を立てて笑う姿に見惚れるという忙しい状態を迎えていた。
 「貴方は何をするにしても商売は忘れないのですね。思わず笑ってしまいましたよ。
 ・・・・・・・そんな強烈な印象を持つ貴方を・・・、忘れる方が難しいでしょうね」
 話しているうちに恥かしくなったのか、遥か彼方を見つめたまま言葉をつむぐエルンスト。
 そんなエルンストを見て、今度はチャーリーの顔に笑みが浮かぶ。
 
 「そうや、絶対に見つけたるからな。・・・・・・・・・待っててや」

 目の前1cm程の所で見るチャーリーの笑顔。
 つられて微笑みに変わるエルンストにもう一度口付ける。

 その口付けは誓い。そして、確認。
 互いが交わした約束への・・・・・・・・・・・・


 ・・・・・・・・・・絶対貴方を忘れないから・・・・・・・・・・・・・・・・・・
    
        ・・・・・・・・・・・・必ず貴方を見つけ出してみせるから・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

FIN


りく様から頂いた創作でございます〜☆きゃ〜!なんかカワイイチャリエル〜!(=^^=)
キリ番を踏んだ訳でもなく、無償で下さったエルアンのオマケとして、チャリエルまで書いてもらっちゃった物です。
りく様のコメントが笑えました。
「エルアンなんかくっついてもいなかったのに、チャリエルは2回もキスしてる」・・・本当だ〜!(笑)
すごくすごく可愛いエルエルに煩悩の嵐は巻き起こる訳ですな・・・。(爆)
本当にありがとうございました〜。

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