極悪日記その63
「番外編05」
ナデガタ回想録〜初陣〜
いやぁ、お頭は強すぎまさぁ。マンモスを倒せるなんてあっしには信じられやせんぜ。あっしも早くそれくらい強くなりたいもんでさぁ。 お頭のためにあっしは………
ん? なんでぇ? あぁ、旦那ですかぃ。
あっしは今修行中ですからそっとしておいてくだせぇ。 え? なになに? またあっしの昔話が聞きたいんですかぃ? しょうがねぇなぁ。
お頭、申し訳ありやせんが少しの間休ませてもらいやすぜ。こいつがどうしてもってうるさいんでさぁ。
ホントに旦那は変わりモンでさぁ。 あっしの昔話なんざ面白くもなんともねぇだろぅ?
まぁいいけどさ。 あ、そこにいる旦那も聞いて行っちゃあどうだい?
ちょいとした暇つぶしぐらいにゃなりやすぜ。
今回はあっしの初陣の話だ。
虎の穴修行の甲斐あってあっしもどうにか初陣を迎えることになったんでさぁ。
もっともお頭達にゃそれほど期待されてなかったと思いやすが。「とりあえず雰囲気を感じてくれ」ってことで稼業に付いていったんでさぁ。
あっしはもう嬉しくて。 これで世間様にも胸を張って「あっしはSDの一員ですぜ」と言えるようになるわけですからねぇ。 喜び勇んで参加したんですが、これがあっしの想像以上に過酷なものでして。
…まぁあっしの修行不足が一番の原因なんですが、それにしてもきつかった。
森に出て獲物を探すわけなんですが、ここでいきなりおかしなことが起こりやした。
お頭たちがスイスイと駆け抜けた坂道をあっしが行くとおかしな生きモンが寄ってきて…ギャ!襲ってきやした!!
異変に気付いたお頭たちに助けていただいて事なきを得やしたが、肝を冷やしやした。
なんでもありゃあ『きら〜ぷらんと』とかいう奴だそうで。なんか出鼻をくじかれちまったなぁ、とあっしは落ち込みやした。
そんなあっしを尻目にお頭たちはズンズンと森を進む。もう付いて行くのが精一杯の速さで、とにかく見失わないようにってそれだけを考えて動いてたんでさぁ。
そしたら今度は、お頭たちにゃあ見向きもしなかった竜があっしめがけて突っ込んで来るじゃぁありやせんか! しかもあっしは崖を飛び降りた直後で瀕死…そんなもん助かるわきゃぁないってモンでさぁ。 あっけなく死んだあっしは村に戻され裸一貫での再スタートを余儀なくされたわけ。
また修行に戻ろうかな? とも思ったんだけど、「回廊に行く」っと兄貴達の声が聞こえたからあっしもそっちに向かったんでさぁ。
竜が来るんじゃねぇかなぁ?って不安になりながらも走ってたら…やっぱり来たね、竜の野郎は。
あっしは叫びやした「ギャー!あっしの右腕がー!!」この声を聞いたお頭が回廊への入り口近くで待っていて下さいやして、竜を倒して頂きなんとか命は助かりやした。 盗賊稼業に来て動物に倒されるのはゴメンでさぁ。
で、あっしの傷が癒えたところで回廊入りするわけ。と、ここでついに! 最初の獲物とご対面!!あっしがドキドキしていると…お頭たちがあっという間にそいつを囲んで、次の瞬間獲物は仰向けに倒れていやした。
一瞬の出来事でした。
あっしは何もできやせんでしたが、ついに獲物を狩る瞬間に立ち会うことができたんでさぁ。
うん、血沸き肉踊るってのはあの状態を言うんでしょうなぁ。
気分が高揚しやして「矢でも鉄砲でも持ってこ〜い」って感じでして、もう竜に食べられて死んだことなんざ忘れちまってる状態。 恐ろしい世界ですなぁ。
その後ですかぃ?…旦那も人が悪いねぇ。
勘違いしちまったあっしが無事に生きて帰れるとでも思ってるんですかぃ?まぁいいやお話しやしょう。
その後、軍属の盗賊討伐隊とやらが来やして、それがもうかなりの大人数でして…あっしらめがけて、我先にって突っ込んでくるんでさぁ。
普段のあっしなら真っ先に逃げ出すところなんですが、そん時ゃぁほら、勘違いしちまってたからさぁ。「あっしがSDを救うんだ!!」って突っ込んでったワケ。
まぁ助かるわきゃぁないよね、そんなもん。
討伐隊とあっしには天と地ほどの実力差があるわけですから。もう一撃であの世行きでさぁ。
天に昇るその途中であっしはいろいろ考えやした。「SDのために何もできなかったなぁ…」とか「故郷のおふくろ!先立つ不幸を許してくれ!!」とかね…ところがあんた、気がつけばあっしは村にいたんでさぁ。
どうやらあっしは地獄の修羅たちに嫌われているようで、この世に戻されたらしいんでさぁ。
とまぁこんな感じであっしの初陣は終わったわけ。で、これじゃあいかんってぇことで修行に戻るわけですが、ここでの経験が思わぬ形であっしの修行生活に害をなすわけでさぁ。それはねぇ………
おっといけねぇ、長話しちまった。あっしの悪い癖でねぇ。
話し出すと止まらなくなっちまうんでさぁ。今あっしはお頭とともに修行中の身。早くもどらねぇと大目玉くらっちまうんでねぇ。この続きはまた次の機会にしてくだせぇ。
信用できないって?なにを言ってるんでさぁ。
あっしは旦那をけっこう気に入ってるんですぜ。盗賊ってのは仲間内の義理と人情を大事にするもんでして、あっしにもその血が流れてるんでさぁ。
こんなあっしの話を聞いてくれる旦那は仲間も同然。 このナデガタ、いつでもお話しますぜ。
そうだ、なんだったら旦那もSDに入ったらどうですかぃ? SDに一生を捧げるってのも、なかなか乙な人生だと思いますがねぇ。
あ、お頭が呼んでまさぁ。 それじゃああっしはこの辺で。 ご縁と命があったらまた会いやしょう。
次回予告「新世界?」