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『好きだ』という言葉も聞いた。キスもした。 それ以上のことだって済ませた。 それなのに、ゼフェルは決してオスカーの私邸に泊まろうとしない。 かといってゼフェルの私邸には狭いシングルベッドしかないから、一晩中くつろぐことはできそうにない。 できるものなら、自分の大きなベッドで朝までゼフェルを抱いて眠りたい。 それが今のオスカーの願いだ。 ゼフェルが嫌がるなら、セックスなどしなくてもいい。 ただ好きな人と朝まで隣で過ごしたいだけだ。 今夜も「遅くなったから泊まっていけ」という言葉をよそに、ゼフェルは帰ろうとしている。 その腕を掴んで引き留めと、困った顔で俯かれてしまった。 「俺の部屋に泊まるのは、そんなに嫌か?」 遠回しな言い方は性に合わない。 単刀直入に聞くと、困った顔は泣きそうな顔になった。 「そんなんじゃねぇよ」 「じゃあ、泊まっていってくれ」 「・・・・・・」 「俺といるのが嫌か?」 「違うっつってんだろ!!!」 弾かれたように顔を上げたゼフェルの表情は、怒りへと塗り替えられている。 少なくとも嫌われたわけではなさそうだと解ったものの、オスカーの知りたい答えはまだ出ていない。 長い沈黙の後、ゼフェルは観念したように口を開いた。 「……そのベッドがヤだ」 「ベッド?ベッドがどうかしたか?」 広くて寝心地のよいベッドなのに、何が気に入らないというのだろう。 「……そこで、何人抱いたんだよ?」 その質問で、オスカーは全てを理解した。 「他のヤツを抱いた場所で寝たくないと、そういうことか?」 可愛らしい嫉妬に笑いを堪えながら聞くと、ゼフェルが唇を尖らせてそっぽを向いた。 「わりぃかよ」 「いや、そんな風に想ってくれていたとは光栄だ」 「別にそーゆーわけじゃ…」 「お前の言いたいことは解った。今度はお前が俺の言い分を聞く番だ」 ゼフェルの言葉を途中で遮って、細い身体を軽々と抱き上げる。 華奢な体は、オスカーの腕に簡単に収まった。 「下ろせ!!帰る!!!」 ベッドへと歩き出したのを察知して暴れても、オスカーには効かない。 がっちりと押さえ込んで、抱いたままベッドに腰を下ろした。 ゼフェルはといえば、ベッドに下りるものかと今度は必死でオスカーの首にしがみついている。 子供をあやすように背中をポンポンと叩いて、オスカーはゼフェルの耳に唇を寄せた。 「安心しろ。ここで誰かと寝たことはない」 ゼフェルの力が緩む。 「…マジで?」 「ああ。私邸にそういう相手を入れたこともない。誰か1人を特別扱いにはできないからな」 『全宇宙の女性がターゲット』と豪語していていた、昔の自分が懐かしい。 薄利多売と言えば聞こえは悪いが、誰1人として、奥深くまで踏み込ませることはなかった。 「……オレは?ここに泊まっても、いーのかよ?」 遠慮がちに自分を見つめるゼフェルに、オスカーは微笑んだ。 「だからお前は『特別』なんだ」 「………じゃあ、泊まってやってもいいぜ」 どんな顔をしたらいいか解らないといった様子のゼフェルに、自然と笑みが零れてしまう。 見た目よりも柔らかい銀髪にキスしながら 「今夜は何をして過ごしたい?」 と囁けば、ゼフェルは耳まで赤くした。 その火照った耳にも口付けて、ベッドにゆっくりと倒してゆく。 「期待通りのことをしてやるぜ、ゼフェル」 期待以上の夜になるのは自分の方だということは隠し、オスカーは余裕ぶった手つきでゼフェルの体をなぞっていった。 |