ブレンド





 煙草はあまり好きじゃない。

 煙いし、喉が痛くなるし、第一、精密機械とは相性が悪い。

 何となく背伸びをしたくて煙草を吸ったことはあるけれど、その1回だけで止めた。

 咽せたのを仲間にバカにされたこともあり、ゼフェルは「もう二度と煙草は吸わない」と決めたのだ。

 だから、煙草を吸う女も嫌いだ。

 付き合うなら絶対、煙草なんか吸わない女だ。

 そう思っていたのに、「恋人」は煙草を吸う。

 しかもそれが男だから、妙にサマになっていたりする。

 煙草を咥える唇とか、煙草を挟む指とか。

 気が付くと、ぼんやり見取れていることがある。

「おい、何を見取れてるんだ?」

 今だってそう。

 唇に煙草を咥えたまま笑うオスカーは、憎らしいほど格好いい。

「別に」

「煙草が苦手なくせに、俺が煙草を吸う時に限って寄ってくるな、お前は」

「寄ってなんかねえ」

「そうか?」

 そう言って、また笑う。

 煙を吐き出す仕草は、自分とは違う「大人の男」だ。

 そう思ったら、急にキスしたくなった。

 オスカーが煙草を吸っているのを見ると、いつもこれだ。

 煙臭いと分かっているのに、キスして、煙草と混じったオスカーの味を確かめたくなってしまう。

「寄ってるわけじゃねえけど…」

 灰皿に煙草を押し付けたのを見計らって、唇を重ねた。

 濃い煙草の味と、先程まで飲んでいたワインの味。

 そして、舌を絡んで深い場所までキスする毎に広がる、オスカーの味。

 これが堪らないと思う。

 ブレンドされたものは全て「大人の男」で、自分を惹きつけて止まない。

 『この男に抱かれたい』と思うのも、自分が誘ってしまうのも、

 いつでも『煙草の後のキス』だ。

「ん…」



 キモチイイ。



 吐息だけで囁いた言葉は、オスカーの唇に吸われて消えた。

 体が浮いて、ベッドに運ばれて。

 オスカーの味はすっかり自分の口内にも馴染んで、まだ繋がってもいないのに奇妙な一体感を感じた。



 ああ、オレもブレンドされてるんだ。



 この男に選ばれて、味わい尽くされる。

 毎夜違うブレンドの仕方で楽しませてくれる。

 最高級の男にブレンドされる、極上品の自分。

 ゼフェルは自分の思いつきに満足しながら、もう一度自分から唇を重ねた。