+  Heat Island 〜終章 +




 オスカーの異動届が受理されて、半年が経った。

 人口の少ない最北の土地に、わざわざ異動するなんて気が知れないと同僚には言われたが、これが自分にとって最良の選択だったとオスカーは思う。

 何よりここにいれば、ゼフェルと同じ土地で過ごすことができる。

 広大な平原にぽつぽつと家が並ぶこの地域では、昔は冬になると背丈を超すほどの雪が積もったらしい。

 ヒートアイランドの進んだ今では、年に2、3回雪が舞う程度で、積もるまでにはいかない。

 それでもオスカーにはかなり堪えるが、ゼフェルは真冬でもシャツ1枚で過ごしている。

 ここには、『外』も『中』もない。

 寒さに強いか弱いか、それだけの違いだ。

 オスカーのように寒さに慣れていない者は防寒具を着け、平気な者は四季を通じてほぼ同じような格好で過ごすことができた。





 北の土地は、冬の日暮れも早い。

 仕事から帰ってくると、もう外は真っ暗だ。

 中古で買った広い一戸建ての玄関に明かりが灯っているのを見ると、冷え切っていた体までもが暖かくなっていくような気がした。

「ただいま」

 玄関を開けて、コートにマフラー、手袋を外す。

 家の中は充分に暖まっている。ゼフェルの気遣いを思って、心までじわりと暖かくなった。

「おかえり、寒かっただろ?」

 そう言うゼフェルはTシャツ1枚だ。

 何やら真剣な顔でパソコンに向かっているから、仕事の最中なのだろう。

「ああ。雪が降りそうなくらいに寒い」

「へー。降ってくんねーかなー。まだこっち来てから1回も降ってねーじゃん?」

「…これ以上寒くなるのは勘弁してほしいな」

「いーじゃん。オレがあっためてやるから」

 椅子の背もたれをギっと軋ませて、ゼフェルが仰け反りながら言った。

 丸出しになった額に軽くキスしてから、オスカーはゼフェルの顎を猫のように撫でた。

「雪が降ってからと言わず、今すぐ暖めて欲しいんだが」

「なーにサカってんだよ?…しょーがねーなー」

 それでも表情は迷惑そうではなく、くしゃっと笑う顔に恥ずかしさが垣間見えて、ますます愛おしさが募った。







 ゼフェルがのぼせないように、ゆっくり、ゆっくりと体中を愛撫する。

 家中のエアコンは切ってしまったから気温は徐々に下がっていって、次第にオスカーの肌が冷えてくる。

 熱を分け合うために、きつく抱き合う。

 ゼフェルに触れれば多少の寒さは我慢できた。

 冷え切った肩を気遣うように、ゼフェルがそこに口付ける。

 無茶苦茶にしてしまいたい衝動を抑え、抜き差しはせずに腰を押しつけて回す。 

 焦らされたと思ったのか、ゼフェルが真っ赤な瞳を潤ませた。

 繋がった箇所から熱が広がって、オスカーを暖めてゆく。





 ゼフェルの潤んだ瞳に、オスカーは毎回見惚れてしまう。

 水分を含んだ真夏の空気に似ていて、懐かしさと愛しさでいっぱいになってしまう。



 オスカーだけを照らし、暖めてくれる存在。







 夏の続きは、ここにある。





   END







6章



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