恋愛ソムリエ  



 果物と女は新鮮な方がいい。



 そんなことを言ったのは誰だったか。

 確かに女は目新しい方がいい。

 抱くなら新鮮な体がいい。

 甘ったるいピロートークは得意だが、馴染みすぎるのも問題だ。

 けれど、こと「恋愛対象の相手」となると話は別だ。

 長く付き合っていきたい相手ならば、新鮮さが失せるのは覚悟しなければならない。

 新鮮さをいかに熟成させていくか。

 それがオスカーの恋愛哲学なのだが、それほどのめり込みたい相手もいなかった。





 ゼフェルに逢うまでは。





 ゼフェルときたら、まるでこちらの予想とは違った反応をする。

 そのくせ、オスカーの欲求を即座に理解しては振り回す。

 オスカーの様子を見ながら、甘えて啼いて強請って無視して。

 自分の出方に合わせて、ゼフェルの態度も変わっていく。

 根本的なものは何も変わらないはずなのに、少しずつ少しずつ、変わっていく何かがある。

 ただの腐れ縁だとか、馴れ合いなどという言葉で片付けられない何か。

 とうに「新鮮」と呼べる短いつきあいではないのに、どう変化していくのかが楽しみな相手。

 まるで年月を経て美味しくなっていくワインのように、想いが醸造されていく。





 互いに味見して、熟成具合を確かめる。

 そのために、舌や指や瞳がある。

 根底にある大好きな味を堪能して、今まで知らなかった深みを味わう。

 それを引き出したのは自分なのだと、互いに自負しながら。 





「ここまで酔ったのは初めてだぜ、ゼフェル」

 隣で猫のように丸まって眠るゼフェルの頬を、そっと撫でながら呟いた。





end







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