「なあ、しねーの?」

「何をだ?」

「だから、その…ヤんねーの?」

 6月4日、午後11時。

 オスカーの私邸でひとしきり酒を飲んで、誕生日を祝ってもらって。

 暖炉の前に敷いてあるお気に入りのラグの上で、何となくいい雰囲気で。

 その先の行為を期待するのは当然だ。

 しかしオスカーは今夜に限って、なかなか仕掛けてこない。

 思わず自分から聞いてしまったことに、ゼフェルは激しく後悔した。

 これではまるで、自分がしたがっているように聞こえてしまう。

「何だ、そんなにしたいのか?」

 案の定、笑いを隠せないといった様子のオスカーに反論しようとしたが、そこでふと言い淀んだ。

 口にしたことを後悔したのはオスカーに「その気」を悟られてしまうからだが、

 実際のところ、「その気」には違いないのだ。

 自分だって男なのだから、欲情する時もある。

 ましてや誕生日だ。ワガママを一つくらい言ってみてもいいだろう。

 そんな考えに至って出たのは、こんな言葉だった。

「そんなにしてーよ。悪いかよ」

 オスカーは一瞬だけ面食らったものの、すぐにいつもの自信たっぷりな表情になった。

「いいや、悪くない。むしろ大歓迎だ」








「次はどうしてほしい?」

 首根っこを掴まれ、うつ伏せに倒された状態で後ろから囁かれる。

 正確にはうつ伏せではなく、腰だけを高く上げた格好だった。

 剥き出しにされた下肢は、溢れる蜜で太股まで濡れている。

「そこばっか、止めろ…!」

 後孔に這うオスカーの舌に仰け反りながら、ゼフェルはようやく口にした。

 丁寧に解され、中までをじっとりと濡らしていく舌に、既に何度もイかされている。

 けれどそれだけでは、まるで達成感がない。

 それを分かっていて意地悪い問掛けをするオスカーに、ゼフェルはまた少しだけ腰を上げた。

「ほら、次はどうしてほしいんだ?言ってみな、今夜はお前の好きなように抱いてやる」

 耳たぶにかかるオスカーの息が熱い。

 ゼフェルはほんの少し躊躇すると、額を床に擦り付けたまま口を開いた。

「…このまま、しろよ…」

「後ろからか?」

「…ん…」

 このままでいい。

 このまま挿れてくれれば、ヨくなれる。

 しかし体の芯に与えられる熱を期待し、受け入れる体勢を取った時。

 ゼフェルの体は、あっけなく仰向けに引っくり返された。

「違うな」

「!」

 足を大きく広げられ、全身に緊張が走った。

 オスカーはそんな緊張を解きほぐすように、太股の内側をそっと撫でている。

「本当はこうやって抱かれたいんだろう?」

「違…っ」

 言葉の途中でオスカーが入り込んできて、喉が引き攣れた。

 焦らされた後孔は、否応無しにオスカーを飲み込んで締め付けてしまう。

「はぁっ…」

「本当はこれが一番悦いんだろう?どうして素直に言わない?」

「んぁっ、喋るなっ…!」

 喋っていても、オスカーの腰の動きは止まらない。

 抜き差しされながら体内に声が響くのが堪らず、ゼフェルはまたトロトロと蜜を零した。

「中に響くか?…それとも、感じるのはこっちか?」

 オスカーの腹に当たっているものを揶揄され、上半身を揺さぶられる。

「んあっ!」

 これだから正面で抱かれるのは嫌なのだ。

 オスカーの腹に当たるものだから、少し動くだけで刺激されてしまうし、どんなに感じているかが隠しようがない。

 感じすぎて涙が出てくるのがやりきれず、ゼフェルは手の甲で瞼を隠した。

「俺に当たってるのも、顔を見られるのも恥ずかしいか?」

 オスカーの大きな手の平が、頭を撫でてくれる。

 先程の問いに頷きながら、だからこの体位は嫌なんだとゼフェルは思っていた。

「恥ずかしいから、悦いんだろう?」

 オスカーが、わざと体を密着させる。

 挟まれて達しそうになる感覚も、頬に触れる唇も、頭を包むように撫でる手も、何もかもが気持ちいい。

 理性などどこかに行ってしまって、みっともなく声を上げるしかできなくなる。

 これだから正面で抱かれるのは嫌なのだ。

 顔を隠すのも忘れ、ゼフェルはオスカーの肩に両腕を回した。







「今日はどうした?珍しいな」

 行為を終えて後始末をしてもらっていると、オスカーがこんなことを言い出した。

「何がだよ?」

「いつものお前なら、おとなしく体を拭かせないだろう」

 確かに、濡れた場所を拭いてもらうのは恥ずかしいし、抵抗がある。

 だからいつもはさっさとバスルームに篭ったりしていたのだが、今夜はいつまでもオスカーの隣にいたかった。

「…たまにはこーゆーのもいーだろ」

「お前にそんなことを言ってもらえるなんてな。毎日誕生日でもいいくらいだ」

「……それ、オレの台詞」

 思わず呟くと、相好を崩したオスカーに抱きすくめられた。









  あなたと一緒なら、毎日が誕生日。

  毎日が幸せ。





  zephel,happy birthday!!